Netflixによるプリンスのドキュメンタリー
最近、耳に入ってくるプリンスのドキュメンタリーの問題についての感想を吐き出します。
NYタイムズの記事について、KIDさんの記事で確認しました。
9月14日の #WDPDTW読書会では時間が足りないので話題に上がらなかったのですが、プレイリストにもあるように、Michael Dean さんがドキュメンタリーについて動画を配信しています。
そして、John Bream さんが Star Tribune に記事を書いていました。
感想
NYタイムズで読んだジルについてのカットは驚きました。
ジル本人がこれをエデルマン監督に話す決断をしたということは、監督を信用したのだと思います。記事からはこれ以上のことは分かりませんが、もっと背景も含めて、プリンスとの関係を描写する文脈があるのだろうと思います。断片的に伝えられると、プリンスにとってもジルにとってもセンセーショナルなだけになるのが心配になります。
これまで Tudah lさんの本で読んだり、ポッドキャストで聞いたりしたジルの言葉は(他の人の引用でもよくあることですが)、具体的なことが不明なままのことがありました。“She's Always in My Hair”の何に腹を立てたのか、少しは話してくれるけれども、核心は胸にしまってしまうのか、簡単に語れないような感情がもっとあるのか、若干、はぐらかされているような印象を受けました。ときどき、爆弾発言も出てくるジルですが、何をどう話すか、葛藤もあるのではないでしょうか。過去の出来事を言語化して他人と共有すること自体難しいと思いますし。
ジルは当然、プリンスの音楽への敬意を持っている人なので、ファンとして信頼できる人です。ドキュメンタリーでジルは何を伝えたかったのでしょう。真意ができるだけ分かるような形になっていてほしいです。
エデルマン監督が深いところに踏み込んだのか、ジルは監督を信用して話をしたのか。ここまで伝わってしまったのなら、ドキュメンタリーをきちんと見て知りたいです。
9時間のドキュメンタリーを作っていることだけでも、エデルマンは詳細な調査をしていると考えていいと思います。
ジョン・ブリームの記事では、自分がエデルマンのインタビューを受けた時のことが書かれていました。最初は断ったけれど、何度もしっかりとコミュニケーションを重ねて、信用できると考え、インタビューを受けることにしたそうです。実際にインタビューされたときも、しっかり調査をしていることが見てとれたと書かれていました。
長年プリンスを見てきたブリーム氏は、エデルマンの調査力は認めながらも、まだ青いな、とでも言うような書きぶりのところがありました。未発表の映画『The Second Coming』のことをインタビューされたあと、エデルマンは映画の映像をブリーム氏みせて反応を伺っているようだったものの、「今話したとおりだね」というあっさりとした感想に期待はずれの様子だったと書かれていました。
エデルマンは、こんな反応がほしい、こういう感情を描きたいという予想をしているようだけれど、プリンスは予測不可能なんだよ。君には描ききれないものがあるよ。それば私が書くことだ。というのが、ブリーム氏の評価でした。
プリンスを知ろうとするには、結局、音楽が一番だとファンとして感じるのですが、エデルマンは音楽と離れた部分をがっつり知ろうとしていたのかもしれません。
“While My Guitar Gently Weeps”の演奏を復讐とする描き方に、どれほど説得力があるのか、そこはドキュメンタリーを見られるものなら批判的に見てみたいです。演奏そのものに復讐を感じるのは、監督の主観的な脚色なのか、あるいは、ものすごく線が繋がって音楽とも繋がったのか。
それにしても、全体的にこのドキュメンタリーの描き方は、エステート側が差し止めるほど偏っていたのでしょうか……。契約によるかもしれませんが、エステートが作品の内容にそこまで口出しする権利があるのか疑問です。
ファンとしては、9時間でも6時間に縮められたとしても見たいです。後半は Piano And a Microphone ツアーを軸に描かれているらしいので、しんどい内容になるかもしれませんが、見たいです。