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中公新書

思い込みは怖い。私は事実なんてなにも見ていない。

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中公新書の歴史系の本のなかには、かなりピンポイントなワンテーマで攻めるものがある。具体的には『観応の擾乱』とか、『刀伊の入寇』とか。『刀伊の入寇』はそれで一冊書けるのかよ!?と驚きのあまり買ってしまった。まだ読んではない。こうした"ピンポイントなワンテーマ"路線は2016年の『応仁の乱』のヒットを受けて増えたように思える(実際のところはよくわからないが)。

ところで、中公新書の"ピンポイントなワンテーマ"本は日本史だけでなく、中国史にもある。中国史の場合は王朝ごとにいくつか刊行されている、気がする。

そこで思った。「中公新書読むだけで中国史勉強できるのでは……?」いろいろ思うところもあり中国史を勉強しようかと思っていたのだが、実際のところはどうなのだろか。とりあえず中公のサイトで確認した結果が以下のとおりだ。

夏(先史・考古)
さすがに夏王朝はやりづらいかと思い広く先史・考古も対象としたが、そこだけを扱った本は見当たらない。講談社学術文庫にならあった


あった。2015年刊行。


あった。2016年刊行。

春秋・戦国
ずばり春秋・戦国を銘打った本は見つからない。『諸子百家』(2009年)のほか『詩経』(1970年)や『荘子』(1964年)など、戦国時代の文化・思想にまつわる本なら昔から出ているらしい。


ずばり「秦」という本はない。"秦"で探すと『古代中国の24時間』が引っかかる(サブタイトルに「秦漢帝国」と入っているためか)。


あった。2019年刊行。ちなみに王莽の新は……?と淡い期待を抱いて確認してもさすがになかったが、この本の一部で触れられているっぽい。

三国
『三国志』ならあった。2011年刊行。


見当たらない。

五胡十六国・南北朝
南北朝ならあった。2021年刊行。


あった。2023年刊行。


あった。2023年刊行。ちなみに武周単体の本も探したがさすがになかった。

五代十国
見当たらない。


見当たらない。

遼(契丹)
見当たらない。

西夏
見当たらない。

金(女真)
見当たらない。

元(モンゴル)
ずばり元orモンゴルは見当たらない。『元朝秘史』なら最近出ていた(2024年刊行)。


見当たらない。


見当たらない。『西太后』(2005年刊行)などはあるが。

民国以降
さすがにずばり「中華民国」というタイトルの本はなかったが、満州国を扱った『キメラ』(2004年刊行)ならある。日本との戦争の絡みもあって、中国近代を扱った本自体は出ている感じ。

……といった結果で、中国の王朝・時代区分で出ていたのは殷、周、漢、三国、南北朝、隋、唐だけだった。あれ、もっと出ていたような気がしたのだけれど……。

それにしても、日本人の中国史への興味は本当に古代に偏重しているのだなと実感する。殷周や隋唐はあっても(刊行時期的にそれぞれセットで作られたのだろうか?)宋元や明清はないのか。やはり外国史で本を作るの需要的に難しいのだろうか。

刊行年を見ると『殷』、『周』、『三国志』は『応仁の乱』のヒットとは無関係に企画・刊行されているっぽい。『応仁の乱』のおかげで中国史の本も出しやすくなったのかと勘違いしていたけれど、別にそういうわけでもなさそうだ。印象は怖い。むしろ高水準の本を作る矜持が綿々と続いていて、たまに世間がそれに反応して『応仁の乱』のようなヒット作が生まれると理解したほうがよいのかもしれない。

ところで、中公のサイトで「中国」をキーワード検索したのだが、『韓非子』なんかは出てこなかった。なのでこのリストも実は不完全かも。それにしても『荘子』は引っかかるのに、『韓非子』はなぜ……。


今週の曲:山下洋輔トリオ "ミナのセカンド・テーマ"

彼らの映像をillicit tsuboiがツイートしていたのをたまたま目にして、聞いてみた。なにが起きているのかわからないが、リズムに反応して手足がじたばたしてしまう。確認したらちょうど買ったばかりだった大谷能生の本にも取り上げられていた。

ピアノ独奏によるイントロの途中で、ズバラサン!という感じで叩かれる最初のブラシのワンフレーズあたりから、すでに客席から(歌舞伎でいう)ジワが来ている感触が録音からも伝わってくる。クラリネットによるフレーズを静かに挟んで、セーノでいきなり最高速で突っ走るドラムとピアノとのチェイスが3分ほど続き、「ヤァーっ!」という気合一閃でブレイクしてブラシに移行する場面など、出来過ぎといっていいほどのダイナミクスである。

『20世紀ジャズ名盤100』168~169ページ

歌舞伎のジワがなにかは知らないが、ピアノソロからドラムが雪崩れ込む前奏は本当に一気に持っていかれる。感動した。山下洋輔の名前は聞いたことあっても、曲や演奏がどんなものか全然知らなかった。これからも名曲・名演にたくさん出会えると前向きに考えておこう。


週一で、多分金曜の夜にでもなにか書いて、一曲なにか付け加えます。内容はないよう。飽きたらやめる。終わるまでは終わらないよ。

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