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有機化学実験(6)ーアニリン
前回は芳香族化合物の実験についてまとめました。
有機化学実験の6回目は,アニリンについてです。
アニリンの性質の確認や,ジアゾ化やカップリングについても確認します。
1.目的
アニリンの性質を調べる。アゾ染料を合成する。
2.薬品・器具
アニリン,さらし粉水溶液,2mol/L塩酸,2-ナフトール,1mol/L硫酸,2mol/L水酸化ナトリウム水溶液,10%亜硝酸ナトリウム水溶液,0.1mol/L二クロム酸カリウム水溶液,氷
試験管,木綿布,ガラス棒,ビーカー,駒込ピペット,プラ容器,割り箸,ピペット置き
3.事前準備
(1)2-ナフトールをすりつぶして粉末状にしておく。(溶けやすくなる)
すり潰す前がこちら。
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すりつぶしたのがこちら。
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4.操作①アニリンの性質
(1)試験管にアニリンと純水を取り,よく振り,水への溶解性を確認する。
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水には溶けない。
(2)2mol/L塩酸を加えて変化を確認する。その後,2mol/Lm水酸化ナトリウム水溶液を少しずつ加えてよく振り,観察する。
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(3)試験管にアニリンと純水を取り,さらし粉水溶液を加えてよく振る。
アニリンにさらし粉水溶液を加えると、赤紫色に呈色する。 pic.twitter.com/c6PkJEvifj
— FClBrIAt(ふふっと塩ぶる私はアスタチン) (@IAtVnCrMnNi) November 18, 2020
操作② アゾ染料の合成
(1)ビーカーに2mol/L水酸化ナトリウム水溶液と,2-ナフトールを入れてよく溶かす。溶けたら,木綿布1枚を浸す。
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(2)別のビーカーにアニリンを取り,2mol/L塩酸を加えてよく溶かす。(ビーカーAとする)
(3)ビーカーAの溶液を他のビーカー(ビーカーBとする)と半分に分ける。ビーカーBに木綿布を浸す。
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(4)ビーカーAを氷水で冷やしながら,10%亜硝酸ナトリウム水溶液を駒込ピペットで数滴ずつ加えて,ガラス棒でよく混ぜる。(ジアゾ化)
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淡黄色の塩化ベンゼンジアゾニウム水溶液が生成する。
塩化ベンゼンジアゾニウムは不安定な物質で,5℃以上になると分解するので,氷水で冷却しながら行う。
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(5)浸しておいた木綿布をプラ容器に取り,ビーカーAの溶液を注ぐ。
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注いだ瞬間に,赤橙色の鮮やかな色に変化する。
オレンジⅡが生成した。(アゾカップリング反応)
(6)3分ほど浸したら,木綿布を水洗いする。
操作③ アニリンブラックの合成
(1)プラ容器に,0.1mol/L二クロム酸カリウム水溶液を注ぎ,1mol/L硫酸を加える。
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(2)ビーカーBに浸しておいた木綿布を浸して,しばらく待つ。
アニリンブラック。#アニリン #アニリンブラック pic.twitter.com/nnkmUfHDfh
— FClBrIAt(ふふっと塩ぶる私はアスタチン) (@IAtVnCrMnNi) October 12, 2021
(3)5分ほど浸したら,木綿布を水洗いする。
5.片付け
(1)廃液は班ごとに廃液ビーカーにまとめてから,ドラフトへ運ぶ。
(2)プラ容器は溶液ごと回収。
(3)木綿布は洗浄後,キッチンペーパーで水気をとる。
乾いたら,ハサミで切って,プリントに貼る。
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6.終わりに
綺麗な色に染まるので,歓声が上がります。
今回は2-ナフトールを使用しましたが,1-ナフトールを用いると赤っぽい色に染まります。
氷水で冷却してジアゾ化する時に,黄色っぽく濁った沈殿が生成することがあります。
他の方の実践を調べたところ,十分に冷却できていないことが原因とありました。
中には,氷水で冷やしつつ,ビーカーの中にも氷を入れて冷却するという例もありました。
自分でも追実験を行い,原因を検討しましたが,温度よりも塩酸の量が関係しているように思いました。
塩酸の量が少なかった場合は,冷却しても濁って沈殿が生成しました。
とりあえず,濁っていても,なんとか赤橙色に染まりますので,生徒実験としてはセーフだと思います。
最初はビーカーとピンセットを使用していましたが,色が付着して洗浄が大変だったため,割り箸と薬包皿に変更しました。
片付けの負担がものすごく軽くなりました。
実験手順にはありませんが,アニリンが時間が経過すると色が変化していく様子を,毎年見せています。
1番古いアニリンは何年前のものかはわかりません。
転勤してきたときに,「これは絶対捨てないように」と言われました。
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この内容は,私が実施した実験をまとめたものです。