有機化学実験(5)ー芳香族化合物
前回はセッケンの性質についての実験をまとめました。
有機化学実験の5回目は芳香族化合物についてです。
ベンゼン,ニトロベンゼン,フェノール,クレゾールなどの性質や反応を確認します。
1.目的
芳香族化合物の性質や反応を調べる
2.使用器具・薬品類
試験管,試験管ばさみ,ビーカー,薬さじ,ウォーターバス
濃硝酸,濃硫酸,ベンゼン,フェノール,クレゾール,サリチル酸,メタノール,沸騰石,0.1mol/L塩化鉄(Ⅲ)水溶液,1mol/L塩酸,2mol/L水酸化ナトリウム水溶液,飽和炭酸水素ナトリウム水溶液
3.事前準備
(1)フェノールは常温で固体なので,40℃くらいのウォーターバスに湯煎し,液体にしておく。
(2)クレゾールとフェノールはドラフトで扱う。
(3)ニトロベンゼン用のウォーターバスを約60℃に設定しておく。
4.操作
①ニトロベンゼンの合成
(1)濃硝酸に濃硫酸を冷やしながら少しずつ加える。さらにベンゼンを加えて,時々振りながら,約60℃のウォーターバスにて加熱する。
(2)10分ほど加熱して,反応液を冷水中に注ぎ出すと,ニトロベンゼンが水中に沈む。
②フェノール類の性質
(1)乾いた試験管にフェノール,クレゾール,サリチル酸をそれぞれ取り,純水を加えてよく振り,水への溶解性を調べる。
フェノール,クレゾール,サリチル酸全て,水に溶解しない。
(2)その後,0.1mol/L塩化鉄(Ⅲ)水溶液1滴を加えて,色の変化をみる。
(3)試験管にフェノールを取り,2mol/L水酸化ナトリウム水溶液を加えてよく振り,変化を観察する。
ナトリウムフェノキシドになる。
(4)さらに1mol/L塩酸を振りながら少しずつ加える。しばらく静置した後で,変化を観察する。
アニリンが遊離する。
③サリチル酸メチルの合成
(1)試験管に1gのサリチル酸と1mLのメタノールを取り,濃硫酸1mLと沸騰石を加えて,穏やかに加熱する。
(2)白濁したら加熱をやめ,放冷する。
(3)飽和炭酸水素ナトリウム水溶液10mLをビーカーに取り,冷やした反応物を少しずつ加えかく拌し,油状物質を確認する。
(冷やしすぎると試験管内で固体になるので注意)
十分な量のサリチル酸メチルが合成できると,このように油状物質が沈んでいることが確認できます。
量が少ないと,匂いはするけど,姿は見えないってことになります。
ちなみに,一度純水で洗ってから飽和炭酸水素ナトリウム水溶液に加えたら,無色透明になりました。
5.片付け
廃液は各班で廃液ビーカーにまとめ,ドラフトへ運ぶ。
水道水で一度洗浄した洗浄液も廃液ビーカーに入れる。
6.終わりに
ニトロベンゼンは,黄色くてプニプニしており,毎年大好きな実験です。
サリチル酸メチルの合成は,通常はメタノールを5mL程度加え,冷却管をつけますが,生徒実験での成功率が低かったため,1mLにしました。
生徒実験では冷却管は使用していません。
加熱してから白濁するまで,短時間なので使用する必要がないと判断しました。
この方式に変更してから,飽和炭酸水素ナトリウム水溶液中に沈む油状物質を多くの生徒が観察できるようになりました。
この内容は,私が実施した内容をまとめたものです。
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