3_2ハラスメント相談窓口はどう設置すれば良いの?
職場でのハラスメントは、従業員の健康、幸福、および生産性に深刻な影響を及ぼします。これに効果的に対処するため、企業はハラスメント相談窓口の設置を行う必要があります。現在は、ハラスメント防止法により中小事業主であっても設置が義務付けされています。
相談窓口は、従業員が安心して悩みや問題を報告できる場を提供することであり、単純に部署や担当者を設置すれば対策は十分に取れている訳ではありません。
以下に、相談窓口の設置方法、設置までのフロー、および設置時に注意すべき点について説明します。
1.ハラスメント相談窓口の設置方法
ハラスメント相談窓口の設置は、担当部署、担当者を設け、従業員に周知することが必要です。そのためのポイントは以下の通りです。
➀目的の明確化
相談窓口を何のために設置するのか、目的を明確に定義しましょう。目的が曖昧な相談窓口では、従業員も安心して相談することができません。ハラスメントの予防、発生時の迅速な対応、職場環境の改善など、何のための相談窓口なのか具体的に定め、従業員に周知することで、利用しやすい環境を構築します。
➁体制の構築
どの部署が担当するのか、だれが担当するのか、相談窓口の運営体制を決定し、周知しましょう。社内に相談窓口を設置することはもちろんですが、外部にも相談窓口を設けることも有効です。社内相談窓口では、迅速に相談対応ができ、ハラスメントの原因に素早い対応ができます。社外相談窓口では、社内では話しにくい内容を相談できることに加え、定期的なハラスメント研修など、知識のアップデートにも活用できます。
③運用方針の策定
相談受付のプロセス、相談内容の取り扱い方法、秘密保持の方針、報告された問題の対応フローを定めましょう。事前にどのようなフローで相談が行われるのか、従業員に周知する必要があります。従業員が相談フローを理解していなければ、話した内容がどのように扱われるか分からず、相談しにくい環境となります。
④担当者の選定と教育
相談窓口の担当者は、職場環境に併せた人材を選定することが大切です。職場によって、女性担当者が良い場合、男性担当者が良い場合、混合が良い場合など、様々です。また年齢層も重要なため、単純な役職や人望などで決めるのではなく、職場環境にあった人材を選ぶことが求められます。
また相談窓口の担当者は、ハラスメントに関する知識、相談対応スキル、秘密保持の重要性について深い理解が求められます。定期的な教育、研修を行い担当者のスキルアップを図ることが大切です。
2.ハラスメント相談窓口設置後の対応について
相談窓口設置後は、定期的な体制の見直しを行い、従業員にとって利用しやすい環境を用意し続けることが大切です。そのためのポイントは以下の通りです。
➀アンケート等のフィードバックの実施
相談窓口の設置後、定期的に社内アンケート等を実施し、従業員からのフィードバックを受け取ることが大切です。相談窓口は利用されないことが理想ではなく、ちょっとしたことでも相談できる環境が求められます。フィードバックに応じて運用方針を調整していくことが求められます。また相談窓口の利用状況を定期的にモニタリングし、その効果を評価します。必要に応じて改善策を実施しましょう。
➁定期的な周知活動
ハラスメント相談窓口の存在と利用方法を従業員に広く周知します。これは、メール、社内掲示板、各会議などを利用します。新入社員や中途社員に存在を知らない人に対してだけでなく、知っている従業員に対しても定期的に周知することが大切です。企業としてハラスメント防止を重視していることを周知することができ、安心安全な職場環境を構築することができます。
③自社にあった相談窓口の範囲拡充
ハラスメントの中でもパワハラが起きやすい企業、モラハラが起きやすい企業など、企業によって様々です。それぞれにあった相談窓口体制に変えていくことが大切です。またハラスメントだけでなく、ヘルスケアなど相談範囲を広げ、従業員が利用しやすい環境に変えていくこともできます。自社にあった運営に整えていくことで、ハラスメントに加え、職場環境の改善にもつなげていくことが可能です。
3.ハラスメント相談窓口の設置時に注意すべき点
ハラスメント相談窓口の設置は義務だけでなく、職場環境改善に有効に働きます。しかし、一歩間違えれば、逆に職場環境を悪化させてしまう可能性もあります。そうならない様に、ハラスメント相談窓口を設置するにあたって、特に注意したい点を以下にあげます。
➀秘密保持の徹底
相談内容は厳格に秘密にすることを保証し、相談者のプライバシーを守ります。これは、ハラスメント被害者だけでなく実行者においても同様です。ハラスメント行為には、時に身体的特徴や個人の秘密など、個人情報に関わる内容も含まれるため、厳密に管理し外部に漏れないように徹底することが求められます。
➁相談のしやすさ(アクセシビリティ)
全ての従業員が容易にアクセスできるようにすることが、ハラスメント相談窓口には求められます。これは、オンライン、電話、対面など、相談者が利用しやすい相談窓口を設けることです。本社ではない各支部の方や、テレワーク従事者など場所を問わずに、相談ができる体制を構築することが必要です。
③公平性の確保
全ての相談に対して公平かつ中立的な立場で対応します。ハラスメント相談窓口は、常に冷静に物事を捉え、適切な対処を取ることが求められます。
実際に中立性を保てなかったこととして、ハラスメント相談窓口の担当者が、ハラスメント実施者と強い関係性がある場合に、擁護してしまった事例もあります。この場合、ハラスメントへの対策が遅れ、より大きな問題に発展する恐れがあるため、公平性の確保は必ずなされなければなりません。
また、相談窓口の担当者は、ハラスメントに関する最新の知識とスキルを常に更新する必要があります。正しい知識と公平さで、安心安全な窓口を構築することが求められます。
結論
ハラスメント相談窓口の設置は、職場でのハラスメント問題に効果的に対応し、健全な職場環境を促進するための重要なステップです。このプロセスは、従業員の安全と幸福を保護することに加え、企業の倫理的な姿勢と責任を示すことにも寄与します。適切に設計され、運用される相談窓口は、従業員からの信頼を得ることができ、組織全体のモラルと生産性の向上に繋がります。
社内窓口だけでなく、社外窓口など幅広い視点で、対策を取ることが大切です。
文責:善福大(ぜんぷく・ひろし) 中小企業診断士、奈良コンサルティング代表
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?