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『AMBITIOUS MISSION』感想

 どうもです。

 今回は、SAGA PLANETSより2022年5月27日に発売された『AMBITIOUS MISSION(アンビシャスミッション)』の感想になります。今年を代表する作品になるんじゃないかと、業界的にも期待されていた様に思います。

 OP曲「breaking light」はサビ後のメロディが好きですね。程よく乗れるパーティーチューンと云った感じで。英詞もあるけど、良い意味で洋楽っぽさは無く。音数のシンプルさにわびさびすら感じる楽曲。
 プレイのキッカケですが、本作のライターである"さかき傘"さんが同じく脚本を手掛けた『金色ラブリッチェ』が人気作である事は知っていて、純粋に興味があったからです。先に『金色ラブリッチェ』をやってみても良かったんですが、折角なら新作やりたいなと。一応体験版やってみて、特に気になる処も無かったので、そのまま購入に至りました。

 では感想に移りますが、受け取ったメッセージと、キャラの印象(+√感想)を攻略順に書けたらなと思います。こっからネタバレ全開なんで自己責任でお願いします。(※率直な感想のみを読みたい方は "6.さいごに" をお読みください)



1.受け取ったメッセージ

"絶対に盗めない、価値がその人にしか解らない、けど、
思わず盗みたくもなる様な、その人を形成し得るものを大切にして欲しい"

 改めて自分の言葉でまとめてみると、こんな感じになりました。作中でも終始一貫していたので、特に捻らず素直に受け取った次第です。これだけだと、抽象度が高すぎるので、もう少し詳しく書いていきます。

 まず、一番大事なポイントはあてな√の言葉だった気がします。

「あなたに出会えたこと。
それがわたくしの手の中にある、一番の宝物ですわ」
「誰にも盗めない、一番の価値ある宝物」

有瀬あてな―『AMBITIOUS MISSION』

 "誰にも盗めない"って処が大事だなと。逆説的に考えて、盗める人がいちゃいけないんです。"盗める人がいる =「価値」を完全に理解できる人が自分自身以外にいる" のはマズイ。自分で決めた「価値」について、本当の意味で理解できるのは自分だけだと。共通の物差しになる様な数字等ではなく、各個人の感情だったり、記憶だったりを、その人だけの「価値」ある宝物として持ち続けて欲しいと願っていた様に思います。

 では、その「価値」ある宝物はどこにあるんだ、って話で、これは何度も述べられていましたが、自分の手の中にある。ただそれが具体的に何なのかは気付いていない、解っていないだけで。そんな風に伝わってきましたし、各√で描かれた物語は、ヒロイン達がその宝物の「価値」に気付き、理解していくまでを描いていました。そもそも「価値」は目に見えないモノであって、もう自分で「価値」を決めて、「価値」ある宝物にするしかない。でもだからこそ、色々積み重ねてきた自分を見つめていく中で、良い意味で自分勝手に、好きな様に「価値」を決めていいんだと受け取れる。

 ただ、ここでその「価値」を誰にも理解されなくてもいい!と振り切りすぎるのはまた違くて。確かに誰にどう思われようと関係ないんだけれども、その一方で「価値」をお互いに認め合う事もまた大事である事も描かれていたと思います。"思わず盗みたくなる様な"って云う部分ですね。「価値」を完全に個としていては、発展していかない。色々と。美術館じゃないけれど、「価値」を外に向けて発信する事で得られるモノもまた沢山ある訳です。周りが刺激を貰うのもそうですが、何より自分自身がその「価値」にちゃんと自信を持って外へ発信できる様になって初めて、自分が「価値」を認める事に繋がるとも思います。その「価値」ある宝物があってこそ、自分足り得ると。虹夢√と弥栄√ではそれが顕著でした。

 以上ですかね。要するに、誰が決めたかも解らない「価値」に振り回される事なく、自分で決めた「価値」ある宝物を持って、自分の人生を歩んで欲しいと。それが個人的には一番伝わってきました。

 あと少し余談ですが、なんで「心の中」ではなく「手の中」なんだろうと初めの方は引っ掛かっていまいた。「心の中」でも意味は然程変わらないですし、寧ろ解り易い?気がしていたので。終えてみて考えた処、「心の中」にしなかったのは、恐らく、忘れそうになった時に宝物の感触を確かめる事を強調したかったのかなと思います。幌子の以下の台詞が一番のヒント。

「記憶を無くさないで! 手放さないで!」
「いまのあなたの手にあるものはなくさないで!」

有瀬幌子―『AMBITIOUS MISSION』

 この√では"記憶"としているので、それを例にとると、やっぱ記憶は忘れてしまう可能性が無きにしも非ずで。また、"感情"で云えば、それもまたその時々のモノで、忘れやすい。でも、何度も何度も想い起こして、その感触を確かめる事で、確かさを増していくモノです。なので、そうやって絶対に手放さないで欲しい想いがこの「手の中」に込められていたのかなと、そんな考えで今は落ち着いています。

 受け取ったメッセージは以上になります。何か少しでも感じ取って頂けたり、考えのヒントになっていたりしたら幸いです。



2.本郷ほんごう 虹夢にじむ

 "数字"が必要。みたいな気はないのに、"数字"がどうしても絡んでくる世界に身を置いていた彼女。もっと簡単に表現して伝えて、何なら曖昧なモノは曖昧なままで良かったのに。でも、「価値」を評価したり、交換したりする時に、"数字"が絶対に必要になる場面もあって、逆に”数字”に救われる場面だってあったなと思い当たる節が彼女の中にもあった訳で。なので、その棲み分けをしていく物語だった様に思います。"数字"に支配されない部分…場面…瞬間…etcに自分だけの「価値」を決めて。そして、その"数字"に絶対に振り回されないモノをストレートに押し出せばそりゃ強いし、数値化されたモノと同じ様に、寧ろそれ以上に認めてくれる人がちゃんといるからと。
 正直、もう最っ初からこの答えは誰が見ても視えていたと思います。でも、彼女みたいな性格だと特定の何か、誰かに解きほぐして貰う必要があったのでしょう。正直者で裏表がない性格で、誰からも好かれる娘で。そんな向けられる好意に対して違和感を覚えたり、向き合ったりしてしまう様になったのは、ある意味そんな性格だからこそでもあったと思いますね。何事もそうだけど、柔軟さが大事。


3.石川いしかわ 弥栄やえ

 敢えて雑に言ってしまえば、蜜子さんとすれ違っていた話。でも、そこをちゃんと描いてくれたと思います。代々受け継がれてきた、石川五右衛門と、この街を護らなければならない。その使命感の裏には、蜜子さんへの感謝の気持ちが間違いなくあって。一方、蜜子さんは(弥栄が大事だから)継いで欲しくないので強く指導する所為で、彼女が徐々に塞ぎ込みがちになって、責任を強く感じる様になってしまったのはよく伝わってきました。
 それで覆われてしまっていたのは、もっと純粋な蜜子さんへの"憧れ"の気持ち。石川五右衛門になりたいのは、決して使命感などだけではなく、"憧れ"の気持ちからだと云うのを、ちゃんと蜜子さんに伝えるまでの成長物語だった様にも思います。彼女にとって「価値」ある宝物は、優しく包み込んでくれた蜜子さんとの出逢い。であるならば、自信を持ってその時抱いた"憧れ"を大切にしていいんだよと。
 彼女は割と何でもそつなくこなせるけれど、表立って自分を魅せない娘でした。面倒見はいいし、我慢強く、人に頼られると嫌とは言えない。"憧れ"の危険な側面ではあると思うけど、無意識に"憧れ"と比べる所為で自己評価も低くなっていたのかなと。けど内に秘めてるモノは強かっただけに脆くはなくて。どうにか想いに応えたいと奮闘する姿が好きでした。


4.有瀬ありせ かぐや

 大好きな姉・あてなの為に出来うる全ての事をしてきた彼女。ようやく『アレクレピオス』を手に入れる道筋も視えて、そんな状況に"運命"すらも感じてしまったと。もう"運命"に縋るしかない、ここまで来たら何を言われても突き進む!って云う気持ちも解るなぁと思いながら見守っていました。ずっと抱えていた責任や後悔から解放されるだろうし。
 でも、論点はそこではなく、それ以前でした。そもそもかぐやの考える"運命"は少しマズイよと。なので、"運命"とは何であるか、その見方・考え方を変えていく物語だったのかなと。「価値」を見直してみる的な。"引き寄せの法則"や童話『かぐや姫』の話がチラっと出てきましたが、"運命"を引き寄せたのは彼女の想いや行動であり、つまりは、例えどんな結果であろうと、それ以上に軌跡の方が大切であると。そんな風に受け取りました。
 この√はかぐやの気持ちは勿論、あてなの気持ちも解るので、歯痒いと云うか、良い意味でもどかしくなりましたね。かぐやはしっかり者に視えて、少し放っておけない感じもある娘で。こーゆー娘にありがちな全部背負おうとする姿勢とか特に。頑張り屋さんで一途で、ずっと頭の片隅にあてなの存在がある辺りは良かったです。また、凄い仲間想いで不器用なりにも伝えようとする姿はやっぱ人が寄ってくるなと。


5.有瀬ありせ あてな

 グランド√なだけあって、これまでの各√を踏襲しつつ、メッセージ性を念押しした物語だったなと。お話も無事着地しましたし。与吉との"数字"に関するいざこざは、虹夢√。あてなの怪盗への"憧れ"は、弥栄√。そして、怪盗になりたい、いつかまたかぐやと一緒に歩きたい、と"運命"を引き寄せたあてなの軌跡は、かぐや√。どれもちゃんと通ずるモノがありました。特に「夜空のお散歩は、一緒にできそうですわね」ってあてなに言われて、とびきりの笑顔を見せたかぐやが印象に残っています。
 また、この√では"記憶"が強調されていました。時間遡行の際に、御影がその"記憶"を頼りに自分自身を取り戻していく事からも、"記憶"こそ、その人を形成するものであり、誰にも決して盗めない「価値」ある宝物であると。あてなと御影の関係については、あの日の出逢いから、もう叶うべくして叶ったなと思えたのも良かったですね。
 あてなは雰囲気も中身もふわふわしてるお姉さんでした。包容力もあり、お嬢様っぽい感じもあるんだけども、それとは裏腹に慌てふためく時が結構あったのがツボだったのかなと。大人びた感じが強いのに、子供っぽいと云うか。それだけ怪盗への憧れが強く強く続いていたのは伝わってきて微笑ましい限りでした。あと、ミネルバの衣装が地味に好きでした。


6.さいごに

 まとめになります。

 率直に言うと、可もなく不可もなく云う作品でした。申し訳ないけど、強烈に刺さった点も無ければ、ダメすぎる点も無い。物語は一貫したメッセージ性を持たせつつ、コンパクトにまとめあげたなと思います。ただ、少しメッセージ性が先行しすぎて、物語の説得力(強度)に欠ける感じはあった。仮想通貨周りの設定云々も気になったけど、そんな事よりも、キャラに奥行きが欲しかった。この子だったら、こう行動する・こう考えるよな。みたいな部分をもっと感じさせてくれると嬉しい。なので、それを最も感じた弥栄が個人的には気に入っています。結末までの導線も一番綺麗だった様に思います。各√見所がそれぞれ異なっているのは良かったです。ただ、虹夢√とか特になんですが、ちょっとライターが透けて見えすぎたかなと…。あとは、怪盗らしいエンターテイナー性が期待していた程は無かった。ただ、シャルがその分イイ働きをしてくれたなと思います(笑)

 ライターは"さかき傘"さん。自分は本作で初めて触れましたが、もしかしたら合わないかも…と少し不安?になっています。何かって云うと物語の描き方。説明が難しくて申し訳ないんですが、キャラクターである当人達は気付いている(解っている)んだけども、それをこちらのプレイヤーにはギリギリまで伏せる。その描き方にさり気なさが無いと云いますか。不自然に感じる。加えて、それを何度も小出しにする匂わせがくどいのが特に合わないなと…。先が気になる!って働きをさせる為に必要なんだけど、個人的にはもっと只純粋に目の前のキャラの掛け合いに夢中にさせてくれる様な描き方が好み。まぁコレばっかりは相性なので、これが本作だけなら良いんですが、それこそ『金色ラブリッチェ』とかプレイしてみて、本当に合うか合わないか確かめる必要がある気がしています。でも、文章自体は読みやすい文体で、ダレる事も無かったので、その辺りは良かったのかなと。

 イラストは、これぞエロゲ!って感じで(伝われ)、可愛いかったと思います。有末つかささん、ほんたにかなえさん、とらのすけさん、原画メイン3名どの方も表情が良かったなと。システムとしても、キャラが話している最中に表情がコロコロと変わっていくのはとても良かったです。

 音楽は計8名も参加されていて豪華だったなと。水月陵さんの音楽が好きなので、流れた瞬間に「あ、コレ絶対水月さんだ」ってなってました(笑) 「アナタの欠片」「私の手の中にあるもの」「夜の逢瀬」「Aster」が特に気に入っています(違ってたらクソ恥ずかしい奴…)。

 とゆーことで、感想は以上になります。
『金色ラブリッチェ』で"キャラゲーの皮をかぶったシナリオゲー"みたいなのを耳にしていたので、本作もそれを楽しみにしていました。結果としては、強烈に胸に来るモノが無かったのだけ残念ではありますが、最後まで楽しかったは楽しかったですし、プレイした事に後悔は全く無いです。"さかき傘"さんの他作品はもうちょっと様子見てからプレイしようと思います。因みにサガプラさんの作品は既に2本積んであるので、プレイ予定。改めて制作に関わった皆様、ありがとうございました。

 ではまた!



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