『素晴らしき日々~不連続存在~ 10TH ANNIVERSARY』感想
どうもです。
今回は、先月の12/25(金)にケロQさんより発売された、『素晴らしき日々~不連続存在~ 10TH ANNIVERSARY』をクリアしたので感想を書いていきます。上記のツイート文面通り、最高だったので感想を書かずにはいられないです、これは。まじで死ぬ前にこの作品に出逢えて良かった。
まず作品紹介がてら、OPムービーと公式サイトは以下の通り。かなり人を選ぶ作品だとは思いますが、ご興味湧いた方は是非プレイして頂きたい。語り継がれるべき名作中の名作であることには変わりないと思っているので。
OP曲の『空気力学少女と少年の詩』ほんと好きで…数年前にこの曲を知ってずっと好きだったから、この作品に触れたキッカケそのものです。曲がいいエロゲを好きになりがちだし、だいたいそれは良ゲー。
前置きはこの辺にして、早速感想書いていきますが、10周年記念なだけあってこの作品への深い考察だったり、引用された文献などを交えた解説なんかだったりは他の方がもう十分にされているので、自分は"感想"どまりというか、それ以上でもそれ以下でもないものになると思います。因みに以下のブログの考察は分かり易くて、参考にしたところもあるので貼っておきます。とっても読みやすかったです。
クリアした(章)順に感想書いていきますが、長くなりそうなんで最後の「11.さいごに」っていう結論の項だけでも読んでいただければ幸いです。ここに一番書きたかった、作品から受け取ったものへの感想を込めてあります。
では以下よりどうぞです。(勿論ネタバレあるので、自己責任で)
1.Down the Rabbit hole Ⅰ & Ⅱ
まず序章の3√ですが、こちらは特に高島さん√が今となっては、ひとつの"答え"だったんだなぁ…。と納得できるのが良き。初回でもタイトル回収があった以上、何かしら強い意味を、メッセージを込めたものだろう、っていうのは思っていたけれど、全部クリアした後、もう一度最後の台詞を聴くと、響き方が全く違うわ。
「ありがとうございます」
「私に生を与えてくれたのは…あなたでした」
「私はずっとあなたの事を愛してました…」
「まったくご迷惑な話ですが…この世界で再び会えた事に感謝しております…」
「一人で行かなければいけない道の途中で、こんな素晴らしい時間を頂けた事…」
「あなたが幻想世界と呼んだ、この世界での生活は、私にとっては至極の記憶です」
「この夢の世界こそ、私の人生で一番の思い出となりました…」
「書き割りのようなチープで…出来損ないの夢の世界…それでも、そこであなたと過ごせた時間は、間違いなく…」
「素晴らしき日々でした」
高島さん、寂しかった以上に相当嬉しかったんだろうな…お別れの涙の意味が分かって良かったです。と、同時に由岐が夢から醒めて本当の幸福を探しに、長い旅に出るということも。向日葵から連想していた"あいつ"のことも。白い世界での"二度目"の意味も。ここに全部詰まってたんだなぁと唸りますね。意味深な雰囲気を出せる、且つ後でちゃんとそれがわかる文章って好き。
彩名の以下の台詞とかも今となっては何となくわかるし。
「…この世界では無い場所…この魂で無い場所で…あの行為は反映されている…」
「一つの魂が…無限の魂の中で見る一つの風景となる…」
そして、始まった由岐視点での第1章ですが、途中から巻き込まれていく感じは本当にハラハラしたというか、普通に怖かった(笑) 自殺写真のメールあたりからかなぁ…確か。とりあえず音楽が怖い…曲名で言うと『不安の立像』と『黒い翼の舞』ね…。認識できないものに対する恐怖を自分もひしひしと感じておりました。瀬名川先生のとこも、携帯電話のとこも、若槻姉妹のとこもホラー要素強すぎて。でも、受け入れられない事実を目の前にしても必死だった由岐を見ているとどこか大丈夫でいられたし、この由岐も変わらず由岐だったなと。チンプンカンプンだった最後の語りも今となっては沁みるものがあります。
世界が一つになりうる理由。
…ボクはたまにこんな事を考えるんだ。
だから…ボクは君を好きでいられたんだ。
それと、鏡と司については今後ほとんど登場が見られなかったのは少し寂しかったですね。2人ともいい性格してたし。ただまぁ物語上こればっかりは仕方ない(笑) 鏡を背負って帰る由岐のシーンも後々また違って映り、響いてくるので結構好きなシーンです。
2.It's my own Invention
この章が一番きつかったかなぁ…過度な描写が精神的に。それに悠木くんは(笑顔見るまで)この時点にはただの怖い奴だし、卓司も覚醒した後は負けず劣らずヤバい奴だし(笑) ただ、恐いだけでなく、その恐怖を持って作品に引きずり込む力は凄かったなと思う。単語一つでも特徴的なものが光っていたんですけど、それ以上に反復…代用…対義…類語etc...言葉遊びにとどまらない文章表現の威力というか、本当に凄かった。そこに加えて音楽や声に合わせることで1つの演出と化すのはノベルゲームでしかできねえわと何度も読み返して浸ってしまったくらいです。病み付き。リルルとの会話や卓司の演説とかも凄かったけど、一個びっくりして鮮明に覚えてるのがこれ。
こんな選択肢であって選択肢じゃない画面初めて見たわ(笑) 追い詰められた脳の思考を捨てた思考状態(何言ってるか自分でもわからんw)を表してるようにも思えて良かったです。
そんな恐怖や見るに堪えないキツさで引きずり込まれる流れは終盤加速していく一方で、卓司視点によって見方が増えてちゃんと面白くなってきたのを覚えています。鏡と司を含めた付き纏う違和感だったり、急に来るノイズや断片化した言葉だったりもこの辺りから強くなってきましたし。すばひび面白い!ってなって気づいたら夢中になってた。
それに、彩名が出てくる度に落ち着きを取り戻せてたのも助かった(笑) 彼女のお蔭で途中、落ち着いて考えたり、状況整理が出来ました。この章に限らず、最後までいいキャラだったな彩名は。彼女の台詞の中でも以下の長い言葉は強く印象に残っています。
「死は誰にも経験出来ない」
「死を体感する事は出来ない」
「死を引き寄せて…それに寄り添って、人は何となく、死を想像できるもの…体感し経験出来るものの様に感じる」
「でもそれは…あくまでも…想像」
「死は誰にもゆるされてはいない」
「死は誰も手に入れることは出来ない」
「人は…誰一人として、経験としての死を迎える事は出来ない」
「死は…誰にも訪れないもの…死は得る事などないもの」
「死を想像しないものは、永遠の相を生きる」
「動物がそうである様に…」
「だが、人は死を想像する」
「死の傍らで生きる」
「だけど…死は傍らにあったとしても、死は人のものではない」
「死を人とものとするのは冒涜…」
「人に許された世界は生のみ…生は死の傍らにあり、死そのものであり、そして人が得るべきもの」
(中略)
「死を想像するのは…痛みを想像することでしかない…」
「それ以外…いかにも高尚な死の恐怖ほど…低俗な恐怖…」
「自己の消失に対する恐怖などは…あまりに人間的な低俗な恐怖…」
「でもお母さんは言ったハズ…」
「貨幣を低俗としないのなら、それも低俗とは言えない」
「自己消失の恐怖は、貨幣が貨幣として成り立っていることと変わらない不可思議と同じ…」
「先送りにされた価値としての貨幣…先送りにされた恐怖としての死」
「それと同じ様に…死の恐怖は、妄言でありながら…人々が生き続ける限り…付きまとう…」
「まるで耳元で囁く天使の様に…」
「死」についてここまで考えたことは無かったので、新鮮だったし、素直になるほどなと。"先送りにされた恐怖としての死"っていう言い回しとかそれっぽくて好き。「死」についての明確な言及があってこそ、「生」についてのメッセージが後でしっかりついてきましたし、いい言葉だった。
そして、この章の主人公であり、救世主としての定められた運命を受け入れ認識してしまった卓司ですが、葛藤の描きが丁寧だったので、わからんでもないなっていう風に想えたのは良かったのかな。特に不安だからこそ生まれる縋りたくなる気持ちなんかは、特別「死」に対してだけでなく、生まれるものだし。ただ、それも度が過ぎて、それ以外を見れなくなる(見ようとしなくなると)亡者みたいになってしまう。何かを信じることと、信仰に溺れることはやっぱり違う訳で。見えないものが視えて…見えてるものが視えなくなる…都合のいい見方や勘違い、妄想が強くなり変化していく彼の様は色んな意味で痛々しかった。
それでも、彼は誰かの救世主に成り得たことには変わりなかった。if√である"希美香end"の方はそれが強く映る訳ですが、終盤の希実香は唯一の癒しだったな。彼女の屋上で吐露する想いは胸に迫るものがありました。特に以下の台詞から。
「私、全然理解できないんです…生きて償え?相手が死んでるのにですか?」
「相手は死んでるのにですよ?生きてて何をどうやって死者に償いが出来るというのですか?」
「償いって向き合う事ですよね。生きてる人間がどうやって死者と向き合うんですか?そんなの自己満足ですよ。生きてる人間が勝手にそう思ってるだけですよ」
「死者に対する償いは…死者じゃなきゃ出来ない…当たり前の事なんです…」
「昔は…仇討ちは美徳とされてたじゃないですか…当たり前ですよね…殺された者の恨みは、相手を殺すことでしか解決なんてするわけないんです…」
「それは当たり前の事なんです…」
「救世主様が言うところの、嘘吐き達が隠して、みんなにその真実を言わないだけなんです」
「死は死によってしか償われないのです」
「だから…」
「だから…ざくろが死んだ日から…償い方法は一つしかないんです…」
「死です」
「いじめた人間…いいえ、それ以外だって、見て見ぬふりした大勢…そいつら全員の死」
「それだけが、正しい償い方法なんです」
「くすくす可笑しいじゃないですか…生きてる人間…償いって何ですか?」
「心入れ替えた?詫びる?再発を防ぐ?くすくす…罪を問われれば、いじめた人間はそんな事簡単に誓いますよ」
「ずるいからいじめたりするんですもん。いろいろ恐いからいじめたりするんですもん」
「だから、彼女たちは簡単に誓います。もうしません。許してください。こんな事が二度と起こらないようにしますっ」
「くすくす、嘘、嘘、大嘘ですってば…」
「死だけなんですよ。当たり前じゃないですか、死に対するそれ相応の対価は死だけなんです…」
「私も、他の連中も…全部死ななければならなかったんです…」
心抉っていたのは悪意以上の善意という名の悪意であったこと、ここまで強い憎しみと償いの見解を持っていたこと、その上で卓司の計画を理解して付いてきて、ずっと「死」を望み続けていたんだと思うと、中々辛いものがある。しかも、最期の最後で本当に生きて償うの意味をわかった彼女…恋心という未練が残ってしまった彼女…「生」を望むのが最期の瞬間だったのがこちらとしては本当にやり切れない想いだった。遅いよぉ…ていう。
卓司は彼女の想いをここで聞くまで知らなかった、彼女は勝手に助かっていただけ。善意も救いも当人達の見方次第でいくらでも変わり得るとここでも痛感する。ただ、救いがあった事実はそれは紛れもなく救いを望んでいたからこそで、卓司自身もその感情に気づいてしまった…そこを切り取った想いだけはとっても純粋で綺麗なもの。そこに目を向けるつもりがなくても、目が向いていた、向けられていた、ちゃんとその事実はずっとあった訳です。あの頃の卓司にも、そういう存在がいてくれたら…なんてことも少し考えてしまいます…。
一方、本end√の方は悠木くんの最期の笑顔とか意味深すぎて、え?!って感じだったし、鏡への凌辱シーンもマジできつすぎて早送りだったし…。今となっては初回ならではのいい想い出?です(笑)
3.Looking-glass Insects
この章も大分精神的にきつかったですが、高島さん視点である程度覚悟していたのと、卓司が卓司じゃなくて面白すぎたし、希実香がほんといいキャラしてたのでやり切れました。希実香、怒るたびに可愛いかった(笑)
この章では、希実香の手を取れるかどうか…高島さんの意志があるかどうか…正しく歩めるかどうかでend√が変わる訳でしたが、まずは"希実香endⅡ"の方。ハッピーエンドっ!で良かったです(少なくとも高島さん、希実香にとっては)。流されることなく、自分の意志で行動した彼女の姿は本当に頼もしかった。
「だって、希実香言ってたじゃない」
「罪悪感…罪悪感はいじめられる事よりつらいって…希実香を犠牲にしてまで、私助かろうなんて思わない…思えない」
「もし、そんな事で助かってたら、死ぬほど後悔してた」
いやぁ…これだよ。簡単なようで難しい。間宮くんに貰ったものから、高島さんの意志が生まれ、その延長線上に希実香がちゃんといた(ここが分岐よね)。彼女と生きることを選択したと…例えそれがどんなに辛くても…。間宮くんから貰ったものはあくまでキッカケにすぎず、高島さんが変わる過程で自分を虫けらだと自覚した後に、そこから変わりたいと思えるかどうか…それはどうしてか…誰の為なのか…ここら辺の葛藤のようなものが全部合致してこその話なので、その心理描写とかも丁寧に描かれていて良かったなと思います。そして同じように、希実香も救われていくと…。彼女が言っていた言葉の中に以下のようなものがありました。
「人間って面白いものでさぁ…自分でやられてる事って、段々麻痺してきて、これがひどい事なのか普通の事なのか、段々分からなくなってくるんだよ」
「ざくろを巻き込んでから、はじめて自分の状況を理解したんだ…ざくろを見て自分の姿を鏡ではじめて見た感じ?」
これは割と真理というか、自分を客観視することが正しい自己認識において、必要不可欠だよなと思わされるものでした。歩みを間違えない(もしくはあとで間違いだと気付ける)為には必須。ハマればハマるほど見えなくなる時ってたまにあるから怖いよねっていう話。あと、上手く言えないけど、自分を客観視できる人の方が人としてちゃんと出来てる人よな。
このif√で見れた希美香はかなり波がある子で危なっかしい感じだったけど、それでも冷静でいる、乗れてる時は強い子だった。冷静さを欠いて乗れてないときはてんでダメだけど…というか間宮くんと相性悪いだけ(笑) 怒るたびに可愛いかったのであれでもう良いんだけどね。お小遣い貯めて買ったとか聞いてもないのに言っちゃう辺りも何か健気で可愛いわよ。
そんな希実香を揶揄う間宮くんと、それを見守る高島さん…。本当に最後までこの3人は微笑ましく、いい関係でした。間宮くんが公園まで助けに来てくれたシーンはスカッとして結構好きなシーン。高島さんと希実香の掛け合いも。ここで、高島さんの気持ちが固まった気がしています。私が希実香が側にいてあげないというか、一緒に歩いていきたいのは間宮くんも大事だけど、それ以上に希実香とだって。
たぶんその感覚は…私が生まれて最初に歩いた…その一歩目と同じ感覚なのだろう…。
私の最初の一歩は…たぶんこんな気持ちだった…。
私だけじゃない…たぶん世界で最初の人間だって…最初に陸にあがった動物だって…、
最初の一歩に不安を感じた。
そうに違いない。
だってそれは最初の一歩…、
違う風景のはじまりだから…、
けど、その一歩もやがて…、
日常になる。
恐ろしげな明日への一歩だったそれは…、
ありふれた風景。
日常になる。
当たり前の…ごく普通の事になってしまう。
ただ、このif√の場合は当たり前だけど、皆守や羽咲は救われない(本√のハッピーエンドには繋がらない)んだなっていうのに今となっては気づける。でも、彩名がそのことについてちゃんと言及し、高島さんへの意志確認と、背中を押してくれてて…これがむっちゃ良かった。彩名の笑顔も良いんですわ。
「すべては望んだ通りに…創造主であった間宮卓司は、破壊者であった間宮卓司と共に死に…調和者であった間宮卓司だけが残った…」
「すべては彼が望んだ通り…」
「さぁ…あなたは先に進みなさい…それこそが約束された地、素晴らしき日々のはじまり…」
(中略)
「くすくす…そう…でもその答えはあなたのものじゃない…」
「あなたは素晴らしき日々を手に入れて、そしてそれ以外のものを失った…」
「だから、あなたはその質問を得る事は出来ない…それとも」
「今をすべて捨ててみる?」
「そして違う魂の行方を見てみたい?」
「今なんて捨てません。私はちゃんと今ここで生きる事を誓ったんだから!」
「うん…」
彩名さんはうっすらと笑うと、空を見つめる。
一方、本end√の方は高島さんへの虐め描写は本当にきつくて…個人的にはエロいどころじゃなかった…。どんどん心が擦り減っていく彼女…叫ぶ声が聞こえる度に苦しくなった。中でも狂ってしまう直前の以下の言葉はえぐい効いた…。
「虫けらは虫けららしくさ…人間に怯えて暮らせば良かったんだよね」
「きゃははははははは…それが道理、それが真理、それが神様の御心っっ」
「ふざけるな!」
「ふざけないでよ…」
「私…人間でいたいよ…私死にたくなんてない…」
「なんで…誰にも迷惑かけないからさ…もう恋なんてしないからさ…だからこれ以上ひどい事しないで…」
「もう十分だよ…分かったよ…私がなんなのか…だからもうゆるして…」
「私…死にたくなんてないんだよ…」
彩名が何度も止めてくれたんだけどねぇ…もうダメだった。卓司と同じ…決まった答えありきの見方に。アタマリバースとか、スパイラルマタイとかの話題もいよいよやべーぞって感じで…。しかも、彼女の場合は"間宮くんを救う"が一番強くあった点が卓司より悪質だった気がします…。彼女の好きな気持ちや、一緒にいた時間を否定したいわけでは無くて、ただ単純に世界に対する視野が狭くなりすぎたのと、それに気づいてあげられる人がいなかったことがもう残念というか、もう完全に詰んでて…。屋上での「ちゃんと見なさい!」はまじブーメラン…。彩名が高島さんに会うたびに悲しそうな表情をしていたのがわかります。自殺(死)に対する恐怖が完全に無くなってしまった高島さんの最期はあまりに生きている人とは思えなかったですね…。
4.Jabberwocky
こっから怒涛の伏線回収というか、視点…ノイズ音の正体…人格ギミックが判明してもう脳汁ブシャーって感じでした。薄っすら予想はしていたものの、それでも違和感が拭えてスッキリした爽快感と、そういうことか!という納得感でもう面白くて仕方なかったですね。夢中度合で言うと、この章がピークだった気がする。多重人格…解離性同一性障害が実在するものだというのも知っていたので、それをギミックの基本として上手くファンタジックに、ロマンチックに、昇華していたのに感心してしまったし。
あとは由岐が今を楽しみながらも、ずっと皆守と羽咲の将来を心底心配している感じがとても寂しかったです。自分の事は後回しで。羽咲を守れるのは私ではなく、皆守しかいないよねっていう。ずっと自分ではダメだったから…だから皆守が出てきてくれた時はすっごく嬉しかったろうなぁ…って思います。何より成長してる訳で…現にあの頃のように揶揄ってたましたし(笑) ただそれは羽咲も同じで。皆守が何と言おうと、誰にもこれ以上消えて欲しくない…と思う姿はただただ愛おしかった。
3人の帰り道での以下の会話がとても印象的に残っています。
「うん…人が人であるために必要な事…自分が自分であるために必要な事」
「それが…記憶の連続性か…」
「そうだね…まさにそう、自分が自分たらしめているのって記憶だよ…」
「記憶が失われるって自分では無くなる事だよ…まさに…」
(中略)
「私はさ…会う事出来なくても、あんたにはずっとずっと存在してもらいたい…」
「何言ってる、完全に切り離されれば、そんな思いだって無くなるだろう」
「たしかに、その時は無くなってかもしれないけど…でも今はそう思う」
"記憶の連続性"っていうフレーズ何となく好きなんですけど、この話は中々効いてくるものでした。例えば、前の章で記憶を失った卓司や高島さんの姿は確かにそれまでの彼、彼女とは言い難いものだった。そして、これからの由岐と皆守にとっての"記憶の連続性"を考えたときに、お互いがお互いを想いすぎている事で変にすれ違いが起きてしまっていて、それに気づくまでの過程が丁寧でむっちゃ良かったです。特に新しい由岐を実際に目の前にして、記憶が無いことに悲しくなる皆守の姿はかなり応えた…。抑えきれない感情がわかるので辛い…というか今だからわかるけど二度目の別れみたいなもんだもんな…。辛いに決まってるわ…。ただ、それで悲しみに暮れている場合じゃないと…羽咲も由岐も俺が守るんだと…。運命に恐がっている自分を認識して初めてその運命に勝つんだと決めた彼よ…。本当に手に汗握る展開でした。
そして運命に勝つために、夢の中で由岐に鍛えられるシーン。これは由岐にとっては懐かしいものだったんですね…。過去を懐かしみながらも、未来へ行く彼を押す彼女の心境を考えると相当複雑な気持ちだったろうなぁ…って気がします。寂しくもあり、嬉しくもあるというか…。ただ、彼女は懸命に彼に託しました。
明晰夢は、ほぼ悪夢から生まれる。
悪夢とは、人が作り出す不安が具現化したもの。
だから、人はその悪夢に恐怖する。
いや、正しくは、悪夢の中に出てくる、恐怖の対象を恐れる。
夢であるから恐れる必要は無い。
にも関わらず、恐怖から自由ではない。
それは夢が夢であると自覚できないから…、
夢が夢であると自覚する。
それだけでは明晰夢とはならない。
明晰夢は、自らの心の奥底にある具現化から逃れない事。
恐怖を克服する事こそが重要なのだ。
恐怖に打ち勝てば…、
夢で恐怖する事さえなければ…、
強く思った方が現実に傾くにすぎない。彼女が出来なかったことを、彼なら出来ると信じてたからこそ託し、それによって皆守は恐怖に打ち勝つ。彼の死…恐怖に対する回答はこの時点でかなり興味深かったけど、"呪われた生"と"祝福された生"について最後の章でしっかり判明した時、わかりやすくなってて良かったです。生きるとは呪いであり、祝福…。
「死は怖いさ…でも死は誰にも訪れない…それは事実だが、そうわかっていても恐い…」
「死の恐怖は…自らが祝福されている事と…呪われていると思う事から始まる…」
「もし、祝福も、呪いもなければ人は死を恐怖しないだろう…それは動物がそうである様に…」
「祝福が人を苦しめ、呪いが人を苦しめる」
「そして祝福が人を救い、呪いが人を救う」
この回答時点で皆守はあの頃の記憶を取り戻しつつあるんじゃないかなぁって気がしました。由岐を通して。それもあって、ラストのやられてしまった後の羽咲とのやり取りはよく分からないのに、泣けてきしまった。折角思い出せてきたのに…もうちょっとだったのに…と。エンドロールでの余韻もその悲しさでいっぱいでした。
5.Which Dreamed It
直接的にはギミックに関与していない羽咲視点によって、ここでは伏線回収というか、前提となる認識を覆してきた展開に驚きと混乱を隠せなかった。加えて、1章や2章での恐怖シーンの裏側なんかもあって…"拒否の認識は必ず恐怖という形で認識される"…なるほどなと。まじあの時はビビってゴメンね、羽咲ちゃん…。由岐からも認識されなくなってしまった彼女の辛さをこの時になって痛感しました。
あとは事件の外側にいる人間である、ジャーナリストの木村さんと共に真相を追っていくからこそ、視えてくるものでもありました。彼によって明かされた多重人格の元となった事件…「間宮卓司は既にいなくて…生きている方は皆守…。」という真実。これはね…ずるいですわ。こっから皆守が出てきてもこれまでの卓司の声で皆守になったのも。現状、体は皆守だけど人格は卓司…だからこそ、本当の人格である皆守が出てきた時の感動度合がこれまで以上にあったと思います。
それもあって、羽咲ちゃんに感情移入できる部分は大きかった。だから、屋上でのシーンは4章より泣けてしまった。だって、彼女にはただ一人の兄の姿しか映っていない…。この世界にまだ生きている"間宮皆守"という兄の姿が。身体がどうとか、人格がどうとかではなく、彼女にとってはあの頃から変わらないとも兄さんの声で…とも兄さんの姿で…とも兄さんの笑顔が消えていく…。もうこれ以上は家族を失いたくない彼女にとって、一番避けたかった最悪の結末が起きてしまった…。
そのまま終盤…羽咲のぬいぐるみを新しい由岐が背負ってあの頃の話をするシーン。ここもね…1章の認識が覆えってあの時は泣けなかったのに、泣けてしまうというね…。羽咲の声はもう誰にも届いていないけれど、あの頃の話をしてくれている以上、この人の中にまだ皆守はいるんだと希望を捨てきれていないから余計に辛かった。すぐ側にいるのに伝わらない辛さ。
そんなこんなで、彩名に導かれ、皆守を救うため手を伸ばして…エンドロール。これまでで一番続きが気になる終わり方でした。しかし、今になっても、彼女の立場はあまり不憫というか…それ故に頑張ってる姿がもう見るに堪えないというか…。妹として甘えたいとか頼りたいとかっていう一面はやっぱり消えなくて、そんな中この幼さで自責の念に駆られて自分がしっかりしないとっていう気持ちを持ち合わせていってしまうのがもう…一刻でも早く救われて欲しい…幸せになって欲しいと思ったキャラでした。それから、変わらない兄妹愛の優しさが強く映った章だったので、優しさについて熱く語ってくれた木村さんの名台詞を以下にメモ。"人の優しさを支えるのは意地"が好き。
「優しさってさ、一過性…たとえば瞬間に見せるものなんて優しさでも何でもないんだよ。それは同情って言うんだよ」
「瞬間にみせるものは…同情?」
「そう、一過性の優しさなんて、辛さも苦しさも…あとリスクだって無い」
「その場だけじゃなくて…長い目で見ても、自らに不利益になりうる事…そうなったとしても突き通せるもの…それこそが優しさだ」
(中略)
「誰にも感謝されず…ただ良かれと思う事だけをやる」
「それを支えるのは単なる意地だ」
「人の優しさを支えるのは意地だよ」
「それを突き通そうとする意志だ…」
6.JabberwockyⅡ
最後の最後で過去編持ってきやがったな、この野郎!っていう喜びでいっぱいでした(笑) しかも前半の雰囲気は明るい日常だから、こんな時がずっと続けばいいのに…とか想ってしまうほど楽しかった。
由岐の皆守への揶揄いがどれも面白くて、"バカーっ"っていう由岐姉がほんと好き。まじでお姉さんに揶揄われたい人生だった…。そんで中でもお気に入りは海まで遊びに行ったところ。由岐と羽咲ちゃんの体操シーンが好きです。元ネタは『終ノ空』なんかな、「つーい、つーい、出ってくーる、次の空~」を真剣にやる羽咲ちゃんの声と動きが可愛いかった…。その後の砂遊びのシーンでは5章での"ヒーローは救世主より強い"が回収されてちょい感動ものでした。しかも、その言葉が本当にそのままになって、もう一度回収されるの最高だったなぁ…。
「覚えておけ…卓司が救世主なら俺はヒーローだ」
「お前を守るためにどんなピンチな時でも立ち上がる」
「逆に、ピンチの時は演出だと思ってくれよ」
「演出?」
「ああ、そうだ、演出だ。ピンチをチャンスに変えてこそ、ヒーローだからな」
「ピンチをチャンスに変えてこそ…ヒーロー…」
「そうだ、俺はお前のヒーローだ。世界がどうなろうと、俺はお前だけをまもってやるぜ!ブイ!」
「と、とも兄さん…かっこいい…」
「そうだ、とも兄さんはカッコいいんだよ」
「分かった。羽咲、とも兄さんを信じるよ。とも兄さんはどんなピンチの時でも、羽咲を守るために復活するんだね」
「ああ、だいたいは演出上の問題だからさ」
「その方が、エンディングは感動的だろ?」
「うん、そうだねっ」
「だからな、どんなつらい事があっても大丈夫だ。最後に笑うのはお前だ」
「だって、お前にはヒーローがついてるんだからなっ」
明るい微笑ましい日常は、父、浩夫さんの死辺りで終わり、1年後には母と卓司が遂に登場…。こっからは怒涛の展開でしたが、同時に残しておきたくなる言葉、メッセージが沢山出てきて文章に浸ってばかり…。ということで、どんどん書き残していきます。まず、3人で坂道を登るシーンでの由岐の言葉。
「まぁ、そういうのってあるよね…自分では変わってないはずなのに…変わってる事って…」
「登れないと思い続けてた…遠く霞む坂道とかさ…知らないうちに日常で使う坂道になっている」
「時がすぎて、変わるのは景色なのか自分なのか…自分自身じゃ良く分からないよね…」
今作品で3本指に入るくらいには好きですね、"登れないと思い続けてた…遠く霞む坂道とかさ…知らないうちに日常で使う坂道になっている"は、変化を変化として捉えすぎないというか、ごく当たり前の自然現象として受け入れている、そんな気張らくても勝手に変わるものだよっていう風にも思えて好きです。
そして、このまま丘の上での、由岐と皆守の会話も最高に良かったです。かなり長いんですけど、そう感じさせない引き込まれる会話でした。
「神は我々と共に歩む…だから、死後、自分が歩いた道を見ると…必ず寄り添う足跡がもう一つ見つかる…」
「人生は、寄り添う力で支えられている…」
「でもさ…一番つらい時、悲しい時に、足跡は一つになってるんだってさ…」
「一番つらい時に…そばにいないのかよ…でも、それが神様ってヤツだよな」
「違うよ…」
「その時…神は、立ち止まって動けない人の足そのものになってくれるんだってさ…」
「自分の足そのもの?」
「そう…立ち止まっていると思えた道も…かならず先に進んでいる…」
「まるで、羽咲ちゃんが登れないと思った、あの坂道みたいに…」
「人は先に進む…その歩みを止める事はない」
「たった一つの思いを心に刻み込まれて」
「たった一つの思いを刻み込まれる?」
「そう、命令にした刻印…すべての人…いや、すべての生命がその刻印に命じられて生きている」
「すべての生命を命じる刻印…」
「そうね…その刻印には、ただこう刻まれている」
「幸福に生きよ!」
「猫よ。犬よ。シマウマよ。虎さんよ。セミさんよ。そして人よ」
「等しく、幸福に生きよ!」
「なんだそれ…」
「幸福を願わない生き物はいない…全ての生き物が自らの幸福を願う…」
「そう命じられているから…」
「それって命令なのか?」
「さぁね…ただ、実際そうでしょ?」
「人もまた…いいや、人は動物なんかと比べ物にならないぐらい幸福に生きようとし」
「そして絶望する」
「なんでそうなるの?」
「幸福は、それを望まなければ絶望なんて無い」
「あれだよ、動物が絶望しないと同じだな」
「でも、動物も幸福に生きようとするだろ?」
「そうだよ」
「なら、なんで動物は絶望しないんだよ」
「そんなの当たり前じゃん。動物は幸福に生きてるからだよ」
「なんだよそれ…幸福じゃない動物だっているだろ」
「いないよ。動物はいつだって幸福なんだよ」
「死ぬその瞬間まで、すべての生き物は等しく永遠に幸福だ」
「なんでだよ」
「なんでだろうね」
「わからないのかよ」
「あはは、そんな事ないよ答えは簡単だよ」
「死を知らない…」
「動物は永遠の相を生きている…」
「だから、幸福に生きようとする動物は、いつだって幸福なんだよ…」
「動物って死を知らないのか?」
「当たり前じゃない?」
「なんで?」
「だってさ、本当は誰も死なんて知らないんだからさ」
「誰も?」
「そう、誰も死なんて知らない…死を体験した人なんかいないんだからさ…」
「死は想像…いつまで経っても行き着くことの出来ない…」
「人は死を知らず…にも関わらず人は死を知り、そしてそれが故に幸福の中で溺れることを覚えた…」
「絶望とは…幸福の中で溺れる事が出来る人だけに与えられた特権だな」
「特権って…どう考えても悪いもんじゃん」
「そうだね…でも、だからこそ人は、言葉を手に入れた…」
「空を美しいと感じた…」
「良き世界になれと祈る様になった…」
「言葉と美しさと祈り…」
「三つの力と共に…素晴らしい日々を手にした」
「人よ、幸福たれ!」
「幸福に溺れる事なく…この世界に絶望する事なく…」
「ただ幸福に生きよ、みたいな」
「ただ幸福に生きよ…か」
「神様なんて世界にいない」
「それどころか、この世界に生まれるのは呪いに似たものだって…」
「だってさ、死んじゃうんだからさ」
「どんな幸せな時間も終わる」
「どんな楽しい時間も終わる」
「どんなに人を愛しても…どんなに世界を愛しても…」
「それは終わる」
「死という名の終止符を打たれて…」
「だから、この世界に生まれ落ちることは呪いに似たものだと思ってた…」
「だって、幸福は終わりを告げてしまうのだから…」
「それが原因なのかさ…何度か同じような夢見てたんだよ…」
(中略)
「何故、生まれた赤ん坊の泣き声を止めてはいけないか…」
「何故、人は自分以外の死を悼むのか…」
「そして、その悼みは…決して過ちではなく…」
「正しき祈りなんだってさ…」
「世界を愛する事…」
「世界のすべてが愛で満ちている事…」
「それは祈り…」
「自分が見上げたこの夜空が…祝福されている事…」
「それは祈り…」
「世界は祝福で満ちている…」
「だから人は永遠の相に生きる事が出来る…」
「出来るんだ…」
「幸福に生きよ」この作品一番のメッセージだったと思います。ここで由岐が語ってくれた数々で、改めて生きることについて考えたというか、当たり前のことに対して、当たり前で済まさず、向き合ったことで納得感が増したというか。死(絶望)を生(希望)と同等に扱い、生まれたからには死から逃れらないという揺るぎない世界の在り方を肯定することで、生を肯定する。この理論がむっちゃ沁みたんです。だとすれば、祈らずにはいられだろう。ってところまで。何で自分は生きてるんだろう…俺の人生って何なんだろう…って考えたことがやっぱり何度かあって、だからだと思うんですけど、“生への感謝“だったり、”人生を救う“だったりと、生まれたことに対して肯定してくれる、そういうメッセージをくれる作品は好きになってしまうんですよね。勿論、それが無根拠では全く響かなくて…ちゃんとその作品の物語が根拠になってるからこそです。少し早いかもけど、すばひびはこの時点でもう物語の完成度高いなと感じていたので、すんなり言葉が入ってきてくれましたし、ずっと強く映っていた由岐が言ってくれたことも大きかったです。ありがとう。
この言葉に沁みている時に琴美と卓司が乱入し、急展開…。本当に木村さんが調べた通りが繰り広げられていたけど、個人的には琴美と卓司が思っていたより人としての感情をちゃんと持ち合わせていたのが印象的でした。特に卓司がナイフを抜くときの「だ、ダメっ…」っていう琴美さんのとことか。ただ、この愛がどうして同じように羽咲や皆守に向けられていないんだ…っていう想いは消えません。
そして、皆守の回想?は終わり、現在に引き戻されて始まる由岐との会話。こっから本当に好き。ここまで感動的な展開になるとは…。由岐が徐々に涙声になっていくのがむっちゃ涙腺に来た。過去編でのあの最期からそのままの流れでっていうのもあるから余計に。
「ここでお別れなんだから…」でダメだった…。CG綺麗すぎだし、『夜の向日葵』もこんな泣ける曲に化けるなんて…。ここで砂遊びでの羽咲との会話を回収してくるのもズルいよ。そんで「さぁ…行けよ…ヒーロー」で5章のラストに繋がるというね…こんなの最高すぎんだろ。手に汗握りながらの展開の中、羽咲ちゃんの言葉で追い泣きだし…。皆守の「くそくらえだ!」もよかった…。ここの落ちていくシーン、完全に脳内イメージできるくらい状況説明凝ってたのも本当によかった。自分で想像できるからこそ、興奮度は無限大になる、ノベルゲームが好きな理由の一つです。
そして、end√ですが3つあったので、次の章から分けて書いていきます。
7.素晴らしき日々end
琴美さんの側にいて、母と似た様な境遇を経験したことがある羽咲ちゃんだからこそ知っているもの、感じ取れていたもの…それが語られ、その内容は琴美さんの横顔が違って見えるほどに愛で満ちたものでした。
「私はいじめられたりしなかったけど、家でも学校でも、本当に空気みたいな存在だったから…お母さんの気持ち分からないでもないんだよ…」
「自分なんて必要の無い人間…有っても無くてもどちらでも良い様な人間…もし、そんな風に考えていたら」
「そんな自分を、世界ではじめて見つけてくれる人がいたら…」
「その人のために何だってすると思うよ…」
「必要とされなかった自分…そんな自分を愛してくれた人のためだったら、どんな事だってする…」
「だって私がそうだもの…」
勿論、彼女がしてきたことは許される事ではなくて、その事実は覆らない。ただそれと同じ様に、彼女が家族を愛していた事実も覆らない。こんな風に言われたら、もう責めたくても責めきれない…馬鹿すぎるよホント…。彼女なりに幸福を追い求めた結果がこれだった…木村さんが言うところの(優しさを支える)意地の表れた結果がこれだった。ならば、そんな答えでも完全否定することはできなくて。加えて、そこに複雑に絡み合ったあらゆる要素がある。それぞれが求めた幸福がある。だから、彼女一人だけを責めることは出来ないよねっていう事実も重くのしかかる。
人は、何かの問題に安易な原因を作る。
でも、悲劇の原因は一つの事実によってなど決定しない。
正しい選択の積み重ねが時に大きな悲劇だって生む。
そう言った意味でも、
"地獄への道は善意で敷き詰められている"のだろう。
難しいよね…人って。実際、現実問題でもそう思うことの方が殆ど。けれど、その複雑さに幻滅したり、煩わしさに手を焼いたりしても「幸福に生きよ」という呪いであり、祝福である、このメッセージは単純に変わることなく平等に在り続ける。由岐に代わって、もう一度…。今度は皆守のモノローグで語られました。
俺は世界一気むずかしい、天才の言葉を反芻していた。
それは単純だし、誰もが知っている答えでありながら、到達する事はやっかいきわまりない…。
何故ならば…この言葉には、必ず神がいるからだ。
”神を信じるとは、生の意義に関する問いを理解することである”
”神を信じるとは、世界の事実によって問題が片付く訳ではないことをみてとることである”
”神を信じるとは、生が意義を持つことを見てとることである”
その神は奇跡も起こさず。
世界を一週間で作る事も無い。
基本何もせずに…、
それでも無責任に…、
我々に”幸福に生きよ”といつでも耳元で囁くだけだ。
そして、すべての調和を誰のためでも無く作り上げるだけの存在だ。
それが神と呼ばれるものの正体だ…。
神は、嘘も不正も、まがい物も卑しさも、汚さも…それらすべてのものの存在を許している。
どんな不条理が俺たちの人生に降り掛かろうと、それでも神は我々に言うであろう。
”幸福に生きよ”
ラスト…木村さんと皆守の会話は凄くて理解は完全には追いつかないけれど、引き込まれるものは依然としてあった。まぁ自分が知らない言葉、言い回しが出てくる度に興味が湧いてしまうだけなんですけど(笑) そんな中で、"私の存在意義"…"人生って何だろう"…ってことについてしっかり語ってくれました。ありがてえ。
「俺は別に世界に俺一人だなんて感じちゃいない」
「間違いなく、目の前にあんたはいるし、もっと言えば、あんたらにとっては存在してなかった水上由岐やら若槻鏡やら司やらだって存在していた」
「でもさ…それでも、俺の世界は、俺の世界の限界でしかない」
「俺は、俺の世界の限界しか知らない…知る事が出来ない…」
「だから…俺は俺でしかない…」
「一つの肉体を何人もで共有してた俺が言うのもなんだけど…いや、だからこそ、俺は俺でしかありえないと思える…」
「俺は、この腕でも、この脚でも、この心臓でも、この肉体でも、脳でもない」
「当然、俺はこの道でも、この河でも、この空でもない」
「俺は…俺だ…」
「そして…俺の世界が世界であり…それに外側なんてありはしない」
「だから、意味なんていらない…」
「俺の世界に付け加えなければならない言葉なんてない…」
「世界はジグソーパズルの一片なんかじゃないんだからな…」
「だって…俺達の世界はこんなに広い…永遠の広がりを見せている…時も空間も…すべてが…」
「時も…空間も?」
「ぼくたちの頭ん中ってどのくらい?」
「ぼくたちの頭はこの空よりも広い…」
「ほら、二つを並べてごらん…ぼくたちの頭は空をやすやすと容れてしまう…」
「そして…あなたまでをも…」
「ぼくたちの頭は海よりも深い…」
「ほら、二つの青と青を重ねてごらん…」
「ぼくたちの頭は海を吸い取ってしまう…」
「スポンジが、バケツの水をすくうように…」
「ぼくたちの頭はちょうど神様と同じ重さ」
「ほら、二つを正確に測ってごらん…」
「ちがうとすれば、それは…」
「言葉と音の違いほど…」
(中略)
「人生の意味なんて…問う必要はない」
「人生が不可解であると戸惑う必要はない」
「この世界も、この宇宙も、この空、この河、この道…そのすべての不可解さに戸惑う必要なんてない…」
「人が生きるという事は、それ自体をものみ込んでしまう広さだから…」
「それは神と同じ大きさ…」
「神と同じ重さ…」
「それは美しい旋律と美しい言葉…」
"人が生きるという事は、それ自体をものみ込んでしまう広さだから"…ここが一番好きです。言われてみればそうかもしれないと思えるのが良かった。生きている中で"比較"っていう概念は拭いきれず、それは世界の広大さにまでなるなんてこともあるけれど、彼の言う通り、それは寧ろ逆で。世界は自分が知り得る世界なのだから…外側なんてないのだから…広大なのは常に生きてる自分。だから大丈夫だよと、生きる意味なんてそもそも考える必要ないんだよと。そうとはわかってはいても難しいこの答えに説得力を持たせたことがこの作品の素晴らしいとこ。あの時の由岐のように背中を"そっと"押してくれるようなメッセージでした。エミリ・ディキンソンの詩もこのラストでやっとしっくりきて、なるほどなと。皆守の語りによって締めくくられたラスト…劇伴『空気力学少女と少年の詩 -Piano Ver.-』も相まって素晴らしい余韻でした。初回で解禁されるだけあって、メッセージ性が最も強く出たend√。
8.向日葵の坂道end
沢衣村で皆守と羽咲と、由岐と3人で…またあの頃のように過ごせるend√。ご都合主義な一面は拭えないけれど、ユーザー目線でキャラの幸せな日々を望むならこれしかないだろう。って感じなのでもうむっちゃ嬉しかった。皆守を取り合う最後のCG大好きです。劇伴『同じ空どこにも無い』も優しき壮大さが好き。見えるものは見える…それでいいんじゃ…。
この幸福な時間は、明日にでも無くなってしまうかもしれない…。
けど、それはすべてに当てはまる事だ…。
目の前の由岐の姿がいつか消えてしまう…という不安は、すべての存在に当てはまってしまう。
だから、もう考えない。
どこまでも続く坂道…。
遠く霞む坂道…。
まるで…そんな世界を俺たちは歩いている…。
その坂道の先を気にしても仕方がない。
俺たちはその道を楽しみながら歩いた。
この最後のモノローグがこれまた沁みました。内容的には「幸福に生きよ」の延長線だけど、こっちの方はより進んだ…既に幸福に至った状態から今の歩みを止めるなっていうニュアンスが強くなってる気がします…。終りを考える必要はない…その先を気にしても仕方がないと。何故なら、過去も今もきっと未来も変わらずに在るこの世界で我々は生きているのだから。
考えてみれば不思議なものだ…、
我々はこの地上で有限なもの…小さなもの…変わりゆくもの…そういったものに囲まれて暮らして、
それをありふれた日常として生きている。
けど、その真上には、人が決して到達出来ない…人がその限界を知る事すら出来ない…無限が広がっているんだ。
ありふれた風景の上に…あたりまえのように広がる無限。
我々はそんな世界で…生きている。
ありふれた風景の上に…あたりまえのように広がる無限。我々はそんな世界で…生きている。
「神秘とは…世界がいかにあるかではなく、世界があるというそのことである…」
「限界づけられた全体として世界を感じること、これが神秘なのだ……かい?」
3人が8年ぶりに見る風景は…記憶通りの美しさを感じた一面と、新しく違って見えて美しさを感じた一面両方あった。今この瞬間も変わらないものと、時が過ぎて変わるもの…。でも、"美しい"と神秘を感じる点は同じで、そう感じられるのは"世界が変わらずに在る"からにほかならない。時が経てば…無限の前では全てありふれた景色…ありふれた世界…ずっと変わらない風景となる。自分が生きる日常でもそういう風に感じられる時ってたまにあるな、と思わずにはいられなかった。ふとした時に感じられるのって、幸せな事なんだなって思います。ちゃんと生きてるっていうか。3人で丘への坂を登るのではなく下っていくのも、まるであの頃の…いつもの日常に戻っていくように想えてよかったです。下り坂だもの、そこへの歩みは止まらない。
9.終ノ空Ⅱend
彩名さんによる水上由岐と終ノ空についての考察endって感じでした。
「説明ならいくらでもつけられる…この世界に注釈を…それは人が望んだ数だけ増やす事が可能」
「あくまでも注釈…増やしてみた説明の一種」
このように彩名も言ってた通り、この考察って正直お任せで勝手に考えるだけでもいいものなのに、ちゃんと言及してくれるのありがたすぎる(答えではなくヒントなのも良かった)。彩名さんは結局、最後の最後までよくわからんかったけど、それが魅力そのもので好きでした。彼女みたいな不確定的要素満載の存在がむっちゃ確かそうな事を話してる時点で面白いんだよな。ということで、折角ですし彼女の仮定を改めてまとめてみます。
仮定1:間宮皆守が作り出した人格の一つ(由岐が存在する事こそ、間宮皆守の肉体が存在する理由だから)
仮定2:由岐の存在は解離性同一障害によって引き起こされたもので無い(過去実在した人物であり、その魂が間宮皆守に宿った)
仮定3:由岐が見ている夢であるならば…目の前にいる彩名は夢の産物
仮定4:由岐は彩名が見ている幻覚であり作り出した幻…つまり存在していない(彩名の脳活動の一部が他人格として認識している)
仮定5:高島さんの自殺に巻き込まれた由岐の夢から覚めていない
仮定6:”幽霊部屋……終ノ空”の記憶は誤った記憶であり、記憶混乱がみせた夢である(高島さんとの激突事実は存在しない)
仮定7:すべての存在は一つの魂によって作り出された
向日葵の坂道で幽霊として存在していた由岐が皆守に見えてた辺りからも、まだ妥当なのは仮定2な気がするけど、気に入ったのは仮定7。「魂」というあるかも分からん概念を大きく持ちだし想像の拡張幅が拡いのと、彩名の理論に納得できる節もあったから。ただ"すべての存在"って部分で納得できてるのと同じくらい、納得しきれないとこを生んでるのも否定できない。
「世界はたった一つの魂の輪廻によって作り上げられた世界…」
「逆に、生物の数だけある方が不自然…生物はその時々で数が違う…数の上下が起こるたびに、世界に魂は溢れたり、不足したりしてしまう…」
「だったら…魂の数は一つこそ…輪廻にはふさわしい…」
「たった一つの魂がすべての生命に宿れば問題ない…」
(中略)
「すべては"私"…醜いあの娘も…きれいなあの子も…」
「いじめられているあの惨めな少年も…いじめている少年も…」
「惨めなあれも、汚いあれも、美しいあれも、誇らしいあれも、すべてが"私"…」
「世界は"私"だけで出来ている…だから、私はあなたを理解する」
「あなたの痛みを理解する…あなたの悲しみを理解する…あなたの喜びを理解する…」
「世界は無数の"私"があるだけ…」
「魂」がやっぱり確かなものではないので、想像の域は勿論出ないんだけれど、それでも「魂」を「意識」みたいなものだと思うと、集合的無意識とか宇宙原意識(臨死体験etc...)とかあるから納得できなくもない。そしてそれらはどれも「想い」で通ずるとこがあり、だとすれば「想い」が時間や空間を難なく越えて、物体を離れ、誰かや何かに伝わっていくのはそこまで不思議に思わないというか、そういうものに無性に駆られてしまう時がある。まぁ、何が言いたいかと言うと、仮定7みたいなのが一番考えるだけで楽しいよねっていう。ハッキリとした答えがない…好きなように想えるのが一番好きです。
10.Knockin' on heaven's door end
向日葵の坂道endのアフター編。これがもう最高だった…。むっちゃ幸せいっぱいでニヤニヤできたのと、エンディングの余韻よ…至高…。
電車内でのやり取り(論争)は興味深い話がもう溢れてくる、溢れてくる。"痛み"について…終ノ空Ⅱendでの考察の延長線にも思える話もあったし。少し聞いたことある話もあったので、普通に面白かった。そういう話を単なる文字だけでなく、由岐と皆守が話してくれるからいいんだよなぁ…これが。好きな人の声で聞けるから夢中になれる訳。そんな感じでずっと聴いていたいくらい夢中な話の中でも、由岐の以下の台詞が一番唸りました。
「そもそも、1が何なのかさえ良く分からないのにもかかわらず、我々が使う1の由来すら分からずに、我々はそれを使って、ありとあらゆる事を”分かった”と考える」
当たり前のことに対して、言われてみれば…っていう考えでちゃんと向き合うのってやっぱ面白い。
オフィスに着いてからも由岐はずっと皆守に付きっぱなし。ほんと、あの頃より構って欲しさが可愛く映ってて…。いや、根本のやり取りはあの頃と変わってないんだけれど、皆守が追い付いて先に行ってしまうんじゃないか…ていう由岐の心配とは名ばかりの"寂しさ"が手に取るようにわかるというか。サバサバした感がなくなって、何なら粘着質になって…でもそこで皆守はあの頃の様に嫌がらないし、とゆーか由岐が期待する様な振る舞いをしないからこそ余計に構って欲しそうに映る…。仕方がないのだけれど、由岐は皆守と同じ様にちゃんと成長した訳ではないのがね…。良くも悪くも"あの頃のまま"が胸に焼き付きような会話劇でした。
ということで、そりゃ怒ってもしゃーない流れからの皆守の告白。羽咲に対してもそうだった様に、恥ずかしさと怒りが混じった様になるのホント変わってないのな。それが良かったわ。そして、ここの由岐も今迄で一番可愛かったです。最後の最後でまともなHシーンも拝めて感謝。ピロートークも完璧よ、いつだってピロートーク大好き。
そして、いよいよクライマックス…。2人の手のCGがさ…しわが付くとこでさ…もう我慢の限界でじわ…って泣けてしまった。だって、こんなロマンチックで素敵な、幸せすぎて堪らない話があっていいのかと…。そしてそれは全会一致で全肯定…いいに決まってる。それを一番この作品は語って伝えてくれていたから。
「俺が死ぬその時、この世界からいなくなるその瞬間まで、一緒にいてくれ」
「死が二人を別つまでって言うけどさ。俺達の場合、その時こそ、本当に出会う事が出来るんだからさ」
「その先を、俺と一緒に歩いてほしい…」
「皆守が許してくれるのなら、私はずっとあんたの側にいる。最後のその時までずっと、ずっといるからさ」
(中略)
「俺が弱くなった時に、お前に寄り添って生きていきたい」
「俺の足腰が弱くなった時に、杖の代わりに俺を支えて欲しい」
「そして、俺が立てなくなった時、手しか動けなくなった時ーー」
「うん、その時はさーー。ちゃんと、その手を握っているよ」
「皆守のそばにずっと立って、空気の様にただずっと寄り添って…」
「言葉は少なめにするよ」
「ずっと、ずっと、皆守のそばに取り憑くよ、その最後の瞬間まで」
「私は、あんたの最後の言葉をちゃんと聞いて、そして言ってあげる」
「死んだ私に、こんな法外な幸せを現世で与えてくれてありがとう。そして、あの世ではふたたびお願いします」
「私とその先を歩いてください」
「あなたの死後、その先を今度はちゃんと私があなたを導くから…」
「その時はさ。皆守の姿はあの頃に戻っているのかな?」
「あの頃?」
「うん、あの頃。私が生きてて、皆守や羽咲ちゃんがいたあの頃…」
「沢衣村か…」
「うん、あの頃の姿に戻っているのかなぁ」
「どうかな。今の姿じゃないのか?」
「そんな事ないよ…。だってさ。皆守にとっては私はお姉さんなんだから」
「そっか…」
俺が歳を取って、由岐はずっと若いままで…。
いつか、遠い先で、俺が死んだ時に…。
ずっと、長い時間待っていた人がいてくれる。
そんな幸福な人生があって良いんだろうか。
「いいんだよ…」
「私達の人生の最後…私達のすべてが終わった時に…こう言ってやるんだ」
「私達の生は幸福に包まれていた。だから、私達はこの先も歩いて行ける…ってね」
別つ時に初めて出会うって何よ…ほんと良すぎる…。こういう感動は創作物語の特権。これだから止められないんだよな…物語に触れるのを。ゆっくり…ゆっくりと世界の先を語り、同時に"あの頃"を強く想うところが最高にエモでした。あの頃の生活は6章でも書いたけど、自分も大好きだったので、共感しかなくて…。ずっと語られてきた、この作品の一番のメッセージだと思う「幸福に生きよ」に対する一番好きな答えが最後の由岐の言葉"私達の生は幸福に包まれていた。だから、私達はこの先も歩いて行ける…ってね"に詰まってました。ここまで"幸福に生きる"素晴らしさを見せられたら、幸福に生きるしかない。幸福に生きてみようと思える。本当に最高の感動をありがとうございました。
11.さいごに
名言を残しておきたいが為に作品からの引用も多く、かなりの長文になってしまいましたが。ようやく一番書きたかった、まとめになります。
改めて本当に素晴らしい作品でした。「幸福に生きよ」というメッセージに圧倒的な物語の完成度で説得力を持たせてくれたこと。この点が本当に素晴らしかったです。
色んな作品がある中で、物語よりもその物語作品に込められたメッセージだけが先行してイマイチ響いてこないなっていう作品もやっぱ少なくはなくって。伝えたいことは分かるんだけど、勿体無いなぁ…っていう想いをしたことが僕自身も何回かあるんです(ありません?そういうの)。だけど、この作品はそれが一切なかった。
最初は良く分からないからスタートするからこそ、わかった時に沁み込んでいく具合もひとしおで。有名な哲学者、詩人などの言葉を引用し、それを物語が進むにつれて大好きになれる由岐や皆守が話してくれるからこそ聞き惚れてしまうし、物語のお蔭でその言葉が理解できるようになっているのもほんと良かった。有名な人の名言とかって、それだけだと理解できないというか、誰だか知らん奴の言葉なんていくら凄いと言われても、自分の中に入ってこない。バックボーンまで分かる、その言葉を言う人がどんな人なのか分かる、そうしてようやく彼、彼女が言うなら…。ってなるじゃないですか。この作品が極限まで仕上げてくれたこと、高め上げてくれたことはここにあると思っています。
「幸福に生きよ」っていうメッセージは"そんなの当たり前"で片付けられても仕方がない側面を持っている。だからこそ、物語が少しでも破綻していたらちゃんと伝わってこなかった。正直、辛いシーンで目を背けたくなった時もありました、でもそういうのもあったからこそ、それを乗り越えたからこそ噛みしめられる幸せがある。この作品に生きる、彼らに救われて欲しい、幸せになって欲しいという感情が湧き上がってくるからこそ、幸せを望む理由に迷わないで済む。あらゆる視点で物語を読み解いていくからこそ、このメッセージに辿り着いたときにそれが最重要なものだと自信を以って認識できる。こういった感じでもう本当に褒めるとこしかないくらいには、完成度が高かった。
物語を綴る文章意外にも、ノベルゲームである特徴を活かした言葉の断片化や急に挟まるノイズ音、没入感が強い故に付き纏う違和感など、演出面も凝っていました。グラフィック面も綺麗で好きなCGあったし、音楽面でも恐怖を煽るものから、感動的なものまで、ずっと物語を彩ってくれていました。
ということで、綺麗に書きまとめられているかは正直自信はあまりないんですけど、感謝の気持ちと、この作品が大好きだという想いを察して頂ければ幸いです。改めて制作に関わった皆さん、ありがとうございました。そして、10周年おめでとうございます。お蔭でずっと自分の中に残しておきたい、大好きな作品がまた1つ増えました。まじで生きている内にこの作品に触れられて良かった、と心の底から思います。ふとした時にはこの作品のから貰ったものを想い出すと思う。本当に…ありがとうございました。
ではまた!