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『ジュエリー・ハーツ・アカデミア』感想

 どうもです。

 今回は、きゃべつそふとより2022年7月29日に発売された『ジュエリー・ハーツ・アカデミア』の感想になります。予約して発売日に買ったのに、もう一ヶ月以上経ってしまった。8月忙しく中々ペース良くできなかったもので(言い訳)。まぁ気を取り直して感想書いていきます。

 主題歌「君とのミチシルベ」はキラキラロックですね。サビ終りとか、地味にギターの主張が激しい箇所があって好きです。
 プレイのキッカケですが、ライターの冬茜トム先生の作品に前々から触れてみたかったのが素直な処です。タイミングよく、せっかく最新作出すとの事だったので、興味半分で買ってみました。

 では感想に移りますが、受け取ったメッセージと、キャラの印象を軽く書けたらなと思います。こっからネタバレ全開なんで自己責任でお願いします。(※率直な感想を読みたい方は 「3.気になったところ」と「4.さいごに」をお読みください)


1.受け取ったメッセージ

 正直に言うと、自信を持ってコレだ!コレが一番心に響いた!って云うメッセージを掴めなかったです。初めて触れるライターさんである事と、自分の読解力不足もあるとは思います。なので、今回は少し乱雑な文章になるかもしれません。ご容赦ください。

 まず、「他者への憎悪」「止まない戦争」「人種、出身、性別、年齢etc…による差別」などが問題としてずっと提示されてはいました。

 これらに対して、演説でのノアちゃんとペガサス組が出した結論が、作品からのメッセージとして一番簡潔にまとまっている様な気がしています。

「同じセリオンの中でも、差別される型がいるそうです」
「外部の私たちにその違いはわかりません。けれど、セリオンの方々の中では大変な違いだというのです」
「細かなズレほど気になるものだと――兄が昔に語っていたのを思い出します」
「ですが、そこに……ヒントがあると思いませんか? 些細な違いに腹を立てている時点で、相手を同種の存在と認めているのです」
(中略)
「なら確かめるべきです。何が違うのかではなく、私たちが本当に共通しているものは何なのか
「私は世界を見て、リビュアを見て、彼女に会って。気づきました」
「私たちをヒトたらしめるのは四肢でも、知能でも、腕力でもありません」
意志こころです」

(中略)
「人間でも。セリオンでも。ヴァンパイアでも。かけがえのない気持ちは、誰にとっても同じもの」
「だから私たちは――たとえ同じ地点に立つことはできなくても。同じ明日を目指すことができます」
(中略)
「もし――意志をもって明日を迎えられないのなら」
「私たちは、ヒトを名乗ることもできません」

ノア―『ジュエリー・ハーツ・アカデミア』

 "何が違うのかではなく、私たちが本当に共通しているものは何なのか"、目を向けるべきはどこなのか、ここが最も大切だなと思いました。ホントは気付いている、無意識下にしまっている共通点。もしくは、違いを頼りに探してみれば、必ずどこかに”意志”の様な共通点があるのではないかと。大なり小なりその違いを恐れずに、歩み寄る姿勢が目指すべき在り方なのだと。言われてみれば当たり前かもしれませんが、だからこそ大切な事です。

 そして、その在り方の前例になろうとしたのがペガサス組。世界で初めての唯一の共同体。ここから新たなる社会の枠組みを作り、世界の在り方を率先して示していくんだと。では、どう示していくのか、ヒントになった言葉は以下の通り。

「そんなの――決まってるや」
「一緒に過ごした日の輝きは……誰が見たって一緒だもん」
ペガサス組として過ごした日常の尊さは、認識の変わった程度で失われるものではないと。

アリアンナ―『ジュエリー・ハーツ・アカデミア』

「確かに前例はないかもしれない。吸血の本能がある以上、本質的には相容れない種族なのかもしれない」
「だけど――それでも――僕らには実現できる。できたんだ。ルビイも僕らを、ペガサス組を信じろ」
「っ……だからって――いつまでも続く保証がどこにあるんだ!」
「そんなものはないよ。だけど、誰かが傷ついて一歩を踏み出さなくちゃいけないんだ」
「そしたらいつか、僕らの在り方が当たり前になって、広がっていくこともあるかもしれない。何だって初めては勇気がいるんだ」
「でも、それが――僕らの願う礎ってやるだから」

ソーマ・ルビイ―『ジュエリー・ハーツ・アカデミア』

 ”自分達の過ごす日常そのもので示していく”、誰が見ても色褪せない輝きになると、そしてそれが永遠であると信じて。前例がないからこそ、今に重きを置き、一歩ずつの積み重ねを大切にした答えだった思います。
 何でもそうですが、そんなの叶いっこないと決めつける方が簡単で。やってみないと解らないし、叶わないと判断するのはやってみてからでも遅くはない事が殆どです。"何だって初めては勇気がいる"についても、中盤辺りでしっかり描かれていたと思います。前例のない未知なる世界に対する恐怖だったり、詭弁…綺麗事…理想だと外野から後ろ指を指されたりしても、これらを乗り越える勇気が必要だと。凝り固まった先入観や偏見をどうにかするには間違いなく必要になってきますね。
 また、集団の先頭に立って、何かを示していく時、前例がある事ばかりではないのがやっぱり当然で。そんな時に、この"勇気"、砕けた言い方をすれば"チャレンジ精神"はやっぱり大事だよなとは思わされました。前例がなくてもやっていかなきゃならない。そうなれば間違いが生じる事も当然ある。それでも示し続ければならない、先頭に立っているのだから。もしかしたらいつか間違い得る事も念頭には置きながら、それでも今できる事を少しずつ、少しずつ、続けていかなければならない。ここで、明日への歩みと止めない強い気持ちこそが、意志なのだと。

 以上、本作で描かれたと思われるテーマ及びメッセージは、私達の現実世界での"人類"にとっても普遍的で、向き合うには非常に難しい壮大なモノだったと思います。なので、これに一つの結論を示してみせた事は間違いなく評価したいなと思います。ただ、その一方で、プレイヤーである"個人"として受け取れるモノ、自分の考え方や価値観にほんの僅かでも響くモノがあったかと問われると個人的には殆ど無かった…が申し訳ないけど正直な処です。でも、先述した通り、"チャレンジ精神"など、改めての"気付き"みたいなのはきちんと得られたのかなと思います。そんな感じで、受け取ったメッセージとしては以上になります。



2.キャラの印象

 いつもの感想記事だったら、ヒロインの√ごとに掘り下げた感想を書くんですが、本作そこまで書けそうになかったので(理由は次の章で)、各キャラ軽く書いていこうと思います。

・アリアンナ
 圧倒的メインヒロインムーヴをかましてくれたし、委員長らしい感じもあって可愛らしかったです。頑固に、ガムシャラに、自分自身ができる精一杯で常に行動してる様な娘でした。若干の危なっかしさも周りを惹き付ける魅力の一つだった様に思います。

・ベルカ
 女剣士ちゃん、佇まいも言動も生き方も美しかったです。そんな女性らしいカッコよさが光ったからこそ、乙女っぽい処(か弱い女の子な処)がもっと視えるとギャップが更なる魅力に繋がったのになぁとは想います。いざという時は守ってあげたくなる系の。

・メア
 アリアンナよりも物語上では大事な役回りを担ったヒロインでした。このケモミミビジュアルで数々の恐怖を乗り越えてきた、ってだけで魅力的。どちらかと云うと、キャラ変する前のダウナーな感じ方が好きでした。ゆるふわ衣装も可愛いんだけれども。

・ルビイ
 あの涙のシーンで懐柔されてしまったのも全然悪くはないんだけども、彼女に肩入れしたくなる想いの方が強かったので少し消化不良…。理にかなってはいるけど、一度破られた約束を再び聞いてあげるの心優しいなぁと。彼女の想い通りに行くif√見たかった感はあります。

・ヴェオ
 一匹狼を体現したかの様で全然そうじゃないキャラ。面白味には欠けるけど、人一倍人情に厚いのは彼だった様に思います。先生もノアも護りたかったなぁ…ずっと強くあってください。

・マークス
 流石王子。徐々にいらない余計なプライドが削がれていって、カッコいい男になりました。兄である以上妹想いで、そこから発展して、仲間想い、国想いな処が良かったです。

・シャーロット先生
 もっと想い入れができちゃってたら、彼女のシーンは泣いてたかも。実は面倒見いい!超強い!ギャップがちゃんとあって良かったです。

・キャロちゃん
 ありがとうロリババア枠(ですよね?)、二丁拳銃はロマン。ギャップが堪らん!って感じはそこまでしなかったけど、クソデカ三つ編みが◎

・カーラ
 
嫌いじゃない。いそうでいない?探せばいるかも!な口悪いお嬢様キャラ。太くはないけど、一本筋が通ってて感情剝き出しな処が良かったです。

・ノア
 
将来もまだまだ沢山あって、どうしてこんな可愛い子が…残念でならないです。誰とでも分け隔てなく接してくれる素敵な子でした。

・ソーマ
 
想いのベクトルが自分自身に向いてるのか、アリアンナなのか、ルビイなのか、マスターなのか。一番大事にしている核は何なのか、ちょっと掴みづらい子でした。全く感情移入できず…。

・ギメル
 あなたが一番好きです。途中で気づいて、今回の物語をギメルを主人公とした視点で見るともう激アツでしかない。非道を働いた処は無視できないけど、ルビイに続いて人間らしい感情移入を促してくれて良かったです。

 

 キャラについては以上です。こう書いてみると、やっぱ浅い感じになると云うか、"意志"が設定寄りに、物語を進める為のギミック寄りになってしまったのが残念でした。彼・彼女達が人間ではなくファンタジーであれど、もっとなんか何てことない日常シーンから他のまた日常シーンの想像を掻き立ててくれる様な、人間味を感じられる要素が欲しかったなと切に思います。



3.気になったところ

 正直に言えばマイナスポイントですね。細かい処以外で大きく2つあったので、総括に行く前にここで書いておこうかと思います。

①戦闘シーンが飽きてくる
 
ズバリそのままですね。どうしても一辺倒で、食傷気味になってしまいました。と云うのも、CGも音楽もエフェクトもSEも毎度ほぼ同じ。コレが本当に良くなかった。相手も違うし、戦闘への流れも違うだろ!って意見が飛んできそうですが、外面が変わらないのが何よりキツかった。折角盛り上がったと思ったら、戦闘シーンで段々ダレてくる。これが何回かあった。戦略的戦闘が繰り広げられる訳ではないし、新鮮味に欠けるので高揚感とか刺激が足りなくて、結局それらが"飽き"として変換されてしまった気がします。あくまでプレイ感として。なので、もう一つ二つ差分があると嬉しかったです。もしくは、そもそもの戦闘尺を削ってくださると、テンポよく進められたのかなと思います。CGそのもの、音楽そのものには文句無いです。そのバリエーションが全体の尺に対して見合ってない、もっとあったら嬉しかった。と受け取った頂けると幸いです。


②ヒロインとの関係性が深まらない
 
ペガサス組全体で動く事が殆どでそれ自体は悪くはないんですが、それならそれでヒロインと2人きりになれる分岐等がもっとあると嬉しかったなと思いました。おまけのエピソード解放に向けて、ヒロインと恋愛っぽい話が一応ありましたが、本当に惚れてる?って云う取って付けた様なやり取りで正直なんだかなぁ…(無くてもよくないか)と思ってしまう内容。
 強いて言えば、突出して描けていたのはルビイぐらい(それでも足りない気はしたけど)。Hシーンを別添えにする事自体は百歩譲って許せるんすが、メインの物語内でヒロインとの関係性が深まったなと納得できる話をもっと組み込んでくださると嬉しかったです。純粋にヒロインの深い部分が知りたかったなぁと。別添えで描かれるパターンは、元々その子に対して気持ちがあれば楽しめるんですが、そもそも本編で気持ちが乗らないと一度感情動線が切れるので機能してくれなくて…。解放させるのも作業ゲーと化していて、余計に気持ちが乗りませんでした(結局解放してない)。
 因みに、冬茜トム先生のシナリオ重視な描き方は何となく受け取れました。一方で自分が物語の前に、キャラ重視で感情移入しながら物語を楽しむ人間なので、単純に相性の問題な気もします。



4.さいごに

 まとめになります。

 尺も十分にあり、シナリオ勝負!感が強く出た仕上がりはとても良かったです。粗はあれど誰にも真似できない芸当をしている気がします。あとは、そこに加えてヒロインとの関係性も上手く並行して描いてくれたら嬉しかった、度々ですがこれに尽きるかなと。if√を描けるのが、"ノベルゲームの強み"だとも想っているので。エロが無くてもそれはできるはずですし。あとは「3.気になったところ」で先述した通りです。

 ライターは"冬茜トム"先生。文章は読み易かったですし、どちらかと云えば文学的なんだけども、論理的な構成で、先入観を利用した叙述トリック等も面白かったです。全員吸血鬼でした!がやっぱりピークで面白くて。その後は波が合りつつ、終盤はクライマックスを重ねていく展開美で凄かった。けど同時に終わる終わる詐欺も凄くて…余韻と云う余韻が悉く潰えていってしまう。余韻に浸りたいタイプの人間なのでここは合わなかったかもです。また、3.気になったところにも記述しましたが、感情移入しながら物語を楽しむ人間としては、日常、心理描写がもっとあると好みでした。

 イラストは、メインで"しらたま"先生。神絵師として以前から存じ上げていたので、色々見れて良かったです。顔の大きさとか、身体のフォルムとか、全てが絶妙なバランスで成り立っているなぁと改めて。ほんの1㎜でもズレたら崩れるだろう、っていう繊細さが詰まってます。一枚選ぶなら最後の卒業式のCGが好きです。集合イラストってやっぱ無条件で良い。各々のキャラ性や関係性が自然と浮かび上がるので。

 音楽は、"藤井稿太郎"先生。優雅な世界観に合ったクラシック曲から、主に戦闘シーンに使われたカッコいいロック曲まで幅広く手掛けられていて、器用だなと。ピアノオンリーの曲がより光った印象でした。良い曲が揃ってはいるんですが、物語の尺に対して曲数が少ないかもと感じたので、あと10曲ほどあると尚嬉しかったです。「With Yours」「Everlasting Shine」「Rebellion Tears」「ヘリオドールの光跡」が特に気に入っています。

 とゆーことで、感想は以上になります。
何かネガティブな感想を強めに書いてしまった感がありますが、面白かったと言えば面白かったです。本当に。だから余計に、相性的にダメだった点含めて悔しさとか残念な気持ちが湧いてくるのかもしれないです。"冬茜トム"先生の他作品はもうちょっと様子見てからプレイすると思います。改めて制作に関わった皆様、ありがとうございました。

 ではまた!

 


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