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子ども虐待防止策イベントが福岡で開催 今こそ虐待を本気で考える!
ニュースでは子供の虐待死の悲惨な事件が後をたちません。このコロナ禍でも世界で子供への虐待は増加しています。今もどこかで虐待を受けている子供たちがいます。
厚生労働省の統計では、児童虐待の対応件数が29年連続で過去最多となっています。
親からの愛情を受けられず、痛みや空腹に耐えながら短すぎる生涯を終える子供たちのことを思うと胸が押しつぶされそうになります。
なぜこのような虐待がなくならないのでしょうか。そして、どうすれば虐待をなくせるのでしょうか。
そんな疑問の答えを探しに、先日2020年11月28日土曜日、福岡市中央区ふくふくプラザにて開催された「子ども虐待防止策イベントin福岡2020」を取材してきました。
1.「子ども虐待防止策イベント」とは
ライター・編集者である今一生(こん・いっしょう)さんは、2017年以来、全国各地で子ども虐待に関する講演会を続けてきました。
ここで、今一生さんについてご紹介します。
1990年代半ばから自殺常習者の取材を始める。
1997年、親から虐待された人たちから募集した「日本一醜い親への手紙」を企画編集。「アダルトチルドレンブーム」を牽引した。
1999年、被虐待者とDV妻が経済的かつ合法的に自立できる「完全家出マニュアル」を発表。そこで造語した「プチ家出」が流行期になる。その後家出できない被虐待者を取材し続け、彼らに自傷、自殺未遂の経験が多いことから自殺経験者と向き合い、「生きちゃってるし、死なないし/リストカット&オーバードーズ依存症」を発表。
2017年、100人の虐待サバイバーから公募した「親への手紙」を編集し「日本一醜い親への手紙 そんな親なら捨てちゃえば」を発表。「子を愛さない親はいない」と言う誤った神話の中、理解されずに孤立していた全国の虐待サバイバーの支持を集める。2017年より「虐待予防策講演会」を各地で開催。全国で行われた虐待予防イベントを機に、それまで孤立していた虐待サバイバーの集いが全国各地で発足し、互助の輪が広がる。
2019年からは、虐待当事者の朗読と講演に加え、地元の政治家へも参加を呼びかけ、参加者全員で虐待防止策を議論し、虐待防止に有効な政策を一つでも実現できるように意欲的に活動されています。
このイベント開催目的は、「子ども虐待をなくす仕組みの早期実現」であり「虐待防止のために」というふわっとしたものではないとのことです。
また、一般市民がボランティアスタッフとなり主催しています。
今回福岡で行われたイベントでは、以下のような3部構成となっていました。
①親から虐待された当事者(虐待サバイバー)が、虐待された経験を親への手紙という形で告白
②子ども虐待の現状と今後の防止策について、今一生さんによる解説
③地元政治家・虐待サバイバー・一般市民による、これからの虐待防止策についての議論
昨年、同時期に行われた際には来場者が100名ほど。今回はコロナ対策により、広い部屋を借りて参加者は40名限定にしたそうです。
当日は、事前予約により40名満席、スタッフ9名、地元政治家は6名参加。
コロナ対策として、会場に入る前には検温と手指のアルコール消毒を徹底。
会場では「毒親アートフェス」の作品が展示されていました。
「毒親アートフェス」とは、虐待を生き抜いた当事者たちによるアートの公募展です。
当事者がそれぞれの心の奥に向き合い、魂を映し出すように表現された作品はぐっと胸に迫るものがありました。
〈タイムスケジュール〉
13:30 はじめのあいさつ
13:40 虐待サバイバーの告白
14:00 今一生さんによる虐待の現状と今後の防止策についての解説
15:00 休憩
15:10 これからの虐待防止策についての議論(市民×虐待サバイバー×政治家)
16:10 終わりのあいさつ
2.虐待サバイバーの告白
今一生さんのご挨拶に続いて、虐待サバイバーと呼ばれる虐待当事者男女2名による親への手紙の朗読が始まりました。
まず、一人目の女性は母親に対する思いの告白。
「保育園の頃の光景もはっきりと覚えていて、ひらがなの練習で脅された。嬉しく期待に胸を膨らませるはずの小学校の入学式でも親への憎しみが高まる。中学生になると、自傷行為も頻繁に。
食べるものもなく、インフルエンザになっても看病してもらえない。
学校でもひどい仕打ちに合い、『私に味方はいない』『誰も助けてくれない』との思いが辛く、大人になってもフラッシュバックに苦しんでいる。」
次に男性の父親への手紙でした。
途切れながらも、しっかりと発表されました。
壮絶な体験を人前で発表するのはどれほどの勇気が必要だったのか、計り知れません。
文章に綴るだけでも苦しい作業だったことでしょう。
しかし、きっとこの勇気が虐待サバイバーだけでなくその他の多くの人々の力になると信じています。
3.子ども虐待の現状と今後の予防策
今一生さんが、厚生省などの公的な資料を多く使いながら、虐待の現状と予防策について盛りだくさんの内容をお話しされました。
以下はその中の一部です。
●虐待の件数はこの30年で200倍にも増加している
相談件数を減らせなかった主な理由は3つ
①児童相談所等のハコモノや職員を増やしてきたこと
②虐待通告ダイヤル189の普及ばかりに徹したこと
③親に子供を虐待させない仕組みを作ってこなかったこと
●児童相談所、児童福祉士の深刻な不足問題
頼みの綱の一時保護所も定員オーバーになっており、新たに受けいれられない。
●養護施設や里親家庭でも虐待が増加している
●子供本人が虐待だとわかっていない
●親権の制度にも問題があるため、親権者バンクから子供が選ぶなど親権者の制度の改革が必要
●公では性的虐待が1%と言われているが、実際はもっと多いと思われる(虐待当事者から親への手紙を募集したところ応募者の30%は性被害を受けているという実態)
●被虐待児童が親から離れたあとも生活していけるように経済的自立のための支援が必要
●はじめに身障者が社会に対して声を上げてバリアフリーを広め、次にLG BTが立ち上がりLGBTパートナーシップ条例にもつながった。今度は児童虐待について社会にはたらきかけて第3の波を起こそうという取り組み
4.これからの虐待防止策についての議論
一般市民と虐待サバイバー、そして地元政治家の皆さんで虐待防止について意見交換が行われました。
これは虐待サバイバーの求める新しい虐待防止策を政治家に直接提案するためです。
今一生さんがまとめた、「虐待サバイバー当事者からヒアリングした『新しい虐待防止策』2020年度」のレジュメを中心に行われました。
参加された地元の政治家は、以下の6名。
・奥村直樹氏(北九州市議・国民民主党)
・金子むつみ氏(久留米市議・日本共産党)
・石田まなみ氏(福津市議・社民党)
・井上まい氏(福岡市議・福岡市民クラブ)
・森あやこ氏(福岡市議・緑と市民ネットワークの会)
・堀本わかこ氏(福岡市議・福岡令和会)
(議論の一部)
●現行法では、被虐待児を保護した人が親権者から誘拐罪(未成年略取)で訴えられ警察に逮捕されかねないため、一時的に被虐待児を自宅で預かる民間擁護者制度の提案。
●自分を虐待した親の介護、看護、扶養の義務を、無条件に破棄できるようにすることによって、被虐待児の精神的重圧を取り除き、親としても老後を心配することで子供を虐待しにくくなるとの観点から提案。
●被虐待児が親から逃れるための資金つくりや、お金がなくても助けを求められる方法を教える仕組み作りの提案。
5.イベントを終えて
<今一生さんのお話>
パソコンのトラブルがあり皆さんに申し訳ないなと思いましたが、話すべき事は全て話せたと思います。
今回イベントは初めてというのスタッフが多かったのですが、のがみさんがよく頑張ってくれました。
虐待防止策は自治体から全国へと広まっていくのが理想です。
このイベントを始めて政治家の方々が関心を持ってくれて、議会に提案するにあたり問い合わせをしてくれるようになり良かったと思います。
今後は問題の解決にどこまでできるのかが課題です。
<イベント主催:パワチル福岡代表・のがみけいこさんのお話>
YouTubeで今一生さんを知り、福岡でもぜひこういったイベントをしたいと思い即座に手をあげました。
すべて一から始める初めてのイベントでした。
当事者の気持ちとして「大人は助けてくれないから言っても無駄」「非難されるから言えない」などがあります。
その中で私たちに必要な事はまず「無関心の壁を壊すこと」だと思います。
<私の感想>
発端は、ある日のTwitter。
今一生さんよりイベントの紹介と「ぜひ取材してください」との投稿があり、正直驚きました。私は以前より子供の虐待に関して何か役に立ちたいと考えていたからです。
取材の依頼を受けてイベントの過去の資料などを見てみましたが、まず感じたのは「これは本気でされてるんだな」ということでした。莫大な時間・情熱・エネルギーを注いでやっておられることに心を動かされました。
後を絶たない幼い子供の虐待死のニュースに心を痛め、また私自身は暴力を受けたことこそありませんが、幼い頃から親の言動に深く傷つきながら育ちました。それは大人になっても深く心理的な影響を及ぼしています。
このようなイベントに参加して記事にすることで、少しでも多くの人に虐待のことを知ってもらえればと使命感のようなものを感じたのです。
ライター業を始めたばかりで取材も未経験の私ですが、当たって砕けろの精神で取り組んでみました。
私はこのイベントで初めて虐待当事者の体験談を聞き、児童虐待の実態を詳しく知りました。
当事者本人が語る体験談は、魂の声が聞こえてくるかのように胸にダイレクトに響いてきました。
想像を絶する状況の中、弱い立場でもがきながらも生きていて本当に良かったと思います。
他の人ではできない、生の声で体験を世の中に訴えて社会を変えていくきっかけとなる大切な役割があるのです。
そして、その心の奥からの叫びを受け止めて、少しでも子ども虐待を減らすように働きかけていこうと思いました。
もう一つ印象的だったのは、のがみさんを始めスタッフの方のあたたかさです。
他の人のことを自分のことのように思いやれるあたたかい輪が広がることで、居心地の良い場所も広がり、誰もが生き生きと過ごせるようになるのではないでしょうか。
課題は山積していますが、多くの人が関心を持って声をあげて取り組めば社会を変えていけるはずです。
今も苦しんでいる虐待児童や虐待サバイバーの現状と未来について少しでもいいので、どうかあなたも考えてみてください。
そして、できれば小さな一歩を踏み出していただけることを祈っています。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。