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作:元樹伸 第19話 覚悟 救急車が病院に到着し、手嶋さんは治療室に収容された。同乗していた僕は酷い頭痛と耳鳴りに襲われていて、廊下の椅子に座ったまま動けなくなっていた。 「君も少しベッドで休むか?」 当直の若い先生が来て僕を気遣ってくれた。羽織っている白衣には「研修医」と書かれたバッジが付いていた。 「……すみません、大丈夫です」 「これでおでこを冷やすといいよ」 研修医さんは横に座って小さな保冷材をくれた。 「手嶋さんは大丈夫ですか?」 「発見が早
作:元樹伸 第20話 新しいシカク あれから一週間が経ち、映画が完成した。でも試写会に安西さんと手嶋さんの姿はなく、会場には僕と寺山しかなかった。 「まあ、完成してよかったよな」 試写会が終わって席を立つ時、隣にいた寺山がねぎらってくれた。 「ここまでやってこれたのは、みんなのおかげだよ」 「その腕はまだ治らないのか?」 包帯で固定された僕の腕を見て寺山が聞いた。病院の屋上で手嶋さんを助けようとした時に痛めてしまい、医者には全治二週間だと言われていた。