1月のトークン発行数60万件、市場の流動性懸念が浮上
仮想通貨市場では、1月に新規トークンの発行が急増したことが明らかになった。CoinGeckoの共同創設者であるボビー・オン氏によると、この月だけで60万件ものトークンが新たに発行されたという。これは、2022年から2023年の月平均5万件と比べて12倍の増加である。
トークン発行の急増要因
トークン発行の急増は2024年第4四半期から始まっており、月間40万件を超えた後、1月には過去最高を記録した。オン氏は、この急増の要因として以下を挙げている。
・トークン発行を容易にするプラットフォームの台頭Solana上で運営される「Pump.fun」や、Tron上の「SunPump」などのスタートアップが、技術的な知識がなくても誰でも簡単にミームコインを作成できる環境を提供している。
・ブロックチェーンネットワークと分散型取引所（DEX）の増加毎月5～10の新規ブロックチェーンが登場し、2024年5月には17の新規チェーンが記録された。また、2024年3月には新たに89のDEXが追加され、市場の分散化が加速している。
「トークン化できるものは、すべてトークン化される」と述べており、ミームや注意を引くコンテンツが即座にトークン化される流れが続いていると指摘されています。
過剰なトークン発行がもたらす課題
市場アナリストは、トークンの急増が流動性の分散を引き起こし、市場全体に悪影響を及ぼす可能性があると警告している。オン氏も、「トークンが多すぎると、トレーダーの関心や流動性が分散し、過去のようなアルトコインの大幅上昇が見られなくなる」と懸念を示している。
現在の成長率が続けば、CoinGeckoは今後5年以内に発行済みトークンが10億件に達する可能性があると予測している。この状況は、市場の持続可能性や、取引量や価格発見能力に影響を与える可能性がある。
トークン過剰供給のリスク
仮想通貨市場が急速に拡大する一方で、以下のようなリスクも顕在化している。
1.流動性の希薄化と詐欺の増加
Pump.funやSunPumpのようなプラットフォームによって、誰でも簡単にミームコインを発行できるようになった。しかし、それにより市場は希薄化し、詐欺や価値のないコインが氾濫するリスクが高まっている。投資家が資金を多くのトークンに分散させることで、本来有望なプロジェクトへの関心が薄れる可能性もある。
2.実用性のないトークンの台頭
現在、多くのトークンが実際のユースケースを持たず、単なる話題性によって価格が上昇している。この傾向は、政治家や有名人にも広がっており、ドナルド・トランプ前大統領は、大統領就任直前に自身のミームコイン「Official Trump（TRUMP）」を発行した。
3.詐欺的なプロジェクトの増加
過去にも、多くの投資家が詐欺プロジェクトに巻き込まれてきた。例えば、インフルエンサーのハリー・ウェルチ（通称Hawk Tuah Girl）は、自身の発行した「HAWK」コインが急落し、投資家から訴訟を起こされた。また、2024年にはラッパーの50 Cent（カーティス・ジャクソン3世）が、ハッカーによって自身のウェブサイトとXアカウントを乗っ取られ、偽の仮想通貨「GUNIT」を宣伝される被害を受けた。投資家が購入した後、価格が0.00016ドルまで暴落した。
4.市場の不安定化と規制の強化
ミームコインブームにより、市場は短期的な投機トレーダーに支配され、持続的な成長が難しくなっている。また、Solanaはミームコインの急増によりネットワークの混雑が深刻化し、取引手数料の上昇や処理速度の低下を招いた。
さらに、詐欺や不正行為の増加を受け、各国政府が仮想通貨規制を強化する可能性が高まっている。今後、規制が強化されれば、健全なプロジェクトの運営にも影響を及ぼすことが懸念される。
まとめ
トークン発行の急増は、仮想通貨市場に新たな活気をもたらす一方で、流動性の希薄化、詐欺の横行、市場の不安定化といった課題を引き起こしている。市場の健全な成長のためには、技術革新と同時に、適切な規制や投資家保護策の整備が求められるだろう。
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