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ガクヅケ船引亮佑インタビュー 【2】

 本文に入る前に……当初10月予定としていた当記事の公開がここまでずれ込んでしまったこと、謹んでお詫び申し上げます。ひとえに私の怠慢によるところです。

 コンビでのネタライブ出演休止を開始してからは初となる取材。ガクヅケとしての平常運転から外れて久しい船引の身を案じていたのだが、彼のどこか泰然とした話しぶりは相変わらずで、安心できるものでした。
 休業中の相方に対して過度な干渉はせず、自分自身の活動や生活をマイペースに遂行し、しかしガクヅケとして復帰するビジョンはあたりまえに見据え続けている。そんな船引のしたたかさ、ひたむきさを感じていただければ。

(2023年9月収録。インタビュー・執筆: れみどり)


ーー コロナやインフルの患者数が増えてきているタイミングでの店内取材になってしまって、申し訳ないです(*飲食時を除きマスク着用で取材)。

ガクヅケ船引亮佑(以下、船引) 急に流行りましたね。木田もノドがガラガラみたいなポストしてましたよね。「ノドはガラガラだけどライブは出ます」って(笑)。誰とも会話しない利尻での生活から帰ってきて、急に会話するようになったからノド嗄れたって言ってたけど、勝手に決めんなや(*注1)。普通に風邪の確率も高いやろ。いや体調が悪くなること自体はしゃあないんやけど、そうやとしてもライブに関わる方々を不安にさせるだけのポストすんなよ。

注1: 船引の相方である木田は2023年8月5日-9月7日の約1ヶ月間、利尻島の旅館で住み込みアルバイトをしていた。その体験記はnoteの記事として公開されている。
ちなみに、note記事をめぐる騒動が起きたのはこの取材の数週間後である。

ーー あはは(笑)。相変わらずだって言うと失礼になりそうですが、木田さんが根っこからコテンパンにされたわけではないとわかってホッとしました。なんでも大変な暮らしだったみたいじゃないですか?せっかくの休業期間なのに、さらなるダメージを食らってしまっては、たまったものじゃないですから。


休業期間の活動でまた大喜利を楽しめるようになってきて

ーー まずは、前回の取材以降のお笑い活動について振り返りましょうか。
 ガクヅケとしてのトピックでいうと、コンビでのインタビューと船引さんのエッセイが掲載されたOWARAI NYLONが発売されましたね。

ーー ガクヅケファンの読者としての感想になってしまうんですが、コンビ休業が決まる前後の船引さんの声が載っているのはなんだかレアで面白いなと。でも別に休業のことを載せるのが目的でガクヅケにオファーがあったのではなく、偶然だったんですよね?

船引 はい。インタビュー後に休業が決まっても掲載を許してくれたうえ、僕のエッセイで事後説明させてくれたってのはね……OWARAI NYLONは良い雑誌ですね(笑)。

ーー 母体のあるメディアでこれをやるってのがもう、英断だと、いち読者としては感激でした。エッセイのほうはいつ頃のオファーだったんですか?

船引 休業発表して割とすぐにオファーがあったような。もしかしたら事務所とNYLONさんとの間で休業に伴うやりとりがあったのかもしれませんけど、すぐにこういった依頼を下さったことが嬉しかったです。

ーー 取材対象のことを気にかけてるんだなって感じますよね。

船引 ちょうど僕も木田へのアンサーみたいな文章は書いてなかったんで……この話が来るまではそもそも書こうとも思ってなかったですけど。自分で何でもかんでも発信せんほうが好転するのかもしれんし……。

ーー 最近休業されるコンビの芸人さんも増えてきましたが、待つ立場の方々はどう振る舞っていいものやらって困惑しつつ活動を模索されているように見えますね。いわゆる会社員の復職支援みたいな、ある程度まで確立された復帰までの施策があるわけでもないですから……相方の立場からできることのうち何がベストなのかは皆わからないんだろうなというのは、想像に難くありませんが。参考にできそうなケースがまださほど多くは上がってない。
 また、コンビ休業の場合に限らず復職などの支援をする立場に置かれた皆さんに言えることですが、この立場の方々の抱く心労というのは時間が経つごとに見落とされていきがちでして……大丈夫そうですか?今のところは穏やかにやれていますか?

船引 まあ、波はありますけど……大丈夫ではありますね。コンビ休業期間の活動で良かったこともありましたし。

ーー 「良かったこと」とは?

船引 大喜利ライブへの出演が活動の大半を占めているんですが、最近は片手間に大喜利をしないでいられているみたいな実感があります。

ーー 以前から大喜利ライブにもそれなりの頻度で出演されていましたが、ガクヅケの主たる活動はコントのネタ作りとネタライブへの出演でしたものね。まずコントがあって、大喜利「も」やるみたいな。

船引 そうですね。コンビ活動中の大喜利を思い起こすと、不調ではあったんかな?って。「大喜る人たち」がくれるギャラに申し訳なさを感じるぐらいの活躍しかできてないなって(笑)、反省をしながら出ていたところがあって。

ーー 「大喜る人たちトーナメント」の準決勝後に録られていたRadiotalk収録回などで、そういった申し訳なさを感じにくいぐらいの働きができた、手応えがあったといった発言をされていたのは印象的でした。コンビ活動中の船引さんの大喜利も、観客である私は楽しめていたのですが、ご自身としてはそこまで出来ていた感じでもなかったんだとの驚きもあり。

船引 呼ばれたからフラッと行って、みたいになっていて。まあ大喜利は別に準備とかもせえへんけど……ネット大喜利から数えたら長いことやってるのに、こんなにできんかったっけ自分?って思うところもあったから、最近は。でも休業期間の活動でまた大喜利を楽しめるようになってきて。……そう思わないとやってられないというのはあるんですけど(笑)。

ーー この期間の大喜利ライブを何本か拝見しているのですが、構成要素としてバトルがなかったり比重が軽かったりなライブでは、特にリラックスして大喜利をやっていた印象がありました。「深夜大喜利」など……(*注2)。

注2: ここで話題に上がっているのは2023年8月26日に代々木A Talk Club WOOFERにて開催された公演。船引は11月18日に行われる同公演にも出演予定。

船引 楽しかったすね、「深夜大喜利」(笑)。

ーー あれだけ場を掻き回せたらそうでしょうね(笑)。
 一方で、大喜る人たちトーナメントの準決勝のようなバチバチにバトルな場でも、ご自身らしい回答を提示しつつ活躍されていて(*注3)。

注3: ここで話題に上がっているのは2023年8月23日から10月20日にかけて行われた「大喜る人たちトーナメント2023」。この取材から数日後、決勝戦へと進出した船引は、座・高円寺2にて健闘をみせた。その様子はDVDでも観ることができるようになる予定。

船引 様々な趣向のライブや、あと大喜利部とか(**)。それぞれでの大喜利の経験が良いように影響し合っているんだろうなって感じますね。大喜利に限れば今はめっちゃ良い状況かもしれない。

** 大喜利部の活動についての内容をはじめとした大喜利についての話題は、2023年10月22日に開催された「添削大喜利ワークショップ」の告知記事にも収録しておりますため、こちらも併せてお楽しみください。


「ネタ」は作れるけれど、「コンビのネタ」は、ひとりでは

ーー 第1回のインタビューを録ったのは、コンビ休業を発表したあと、休業日までの活動をされていた時期だったじゃないですか。実際休業がスタートしてみての体感はどうですか?
 ……どうって聞かれても難しいですよね。この期間にも大喜利部の活動やnoteの船引小説の更新をコンスタントに行っている。ガクヅケとしての活動の有無によらず、アイデアは常に湧いてくるし世に出せる形にまで仕上げられる能力もあることを示せている。それなのにコントだけは発表できないって状態が続いているわけで。力が有り余っているのではないか?と推測するわけなのですが……。

船引 うーん……休業生活のルーチンはできてきてます。毎日昼前に起きて生配信して、15時か16時かで寝て、夕方過ぎたぐらいから「日付が変わる前に小説を書かな!」で頭が支配されて。書き切れば自由だみたいに(笑)。それで小説書いて生配信して寝る。そんな毎日。暑くて散歩できないのは辛かったですけど。
 ……今、あんまり生活にストレスがないんですよね。「いつまでに新ネタ4本作らな!準備せな!材料や衣装買わな!」みたいなのが頭にある状態のほうが、圧倒的にストレスが大きい。ずっと頭にあったそれらが無くなったんで。むしろすごく健康には良いような気がしてる。

ーー 前のインタビューでもお話しされてましたが、活動中は毎月の新ネタライブに向けての準備を軸に、生活が組み上がっている感じでしたよね。いざそこから外れてみれば、案外健康に過ごせているという。

船引 ゲーム配信もできるし(笑)。でも生配信の中でプレイすることで、ただゲームやっているだけよりはなんか罪悪感がないというか。

ーー Radiotalkが音声のみの配信サービスなので意識的にやってらしてるのかもしれないですけど、ゲームやりながらよくあんなに喋れますよね。

船引 喋りというか文句というか……ゲーム配信のリスナーさんたちが言うところによると、僕は単純にイラチらしいですけどね(笑)。まあでも溜め込むよりはええやろと。それで離れた人もいるかもしれんけど(笑)。

ーー どうなんでしょう?船引さんの人間らしさがこれ以上なく出ている配信ではありますから、かえって親しみやすく受け止められるのかも。
 配信でいうと、一度だけ「ガクヅケの新ネタを作る」というテイの企画をやってましたよね。こちら私も拝聴していたんですが……その……楽しそうに配信されていたし、楽しく聞ける回ではあったんですが、なんとなく感じたのはネタ作りの感触が得られていそうではなかったなって。推測にすぎませんが。

船引 この配信でのアイデアを本当に使うのかってことですか?

ーー なんというか、アイデアを配信内で完結させてしまいそうなテンションだったというか。

船引 まあ……「ネタ作り」という観点で見ると、あんまり意味がなかった(笑)。やっぱ普段と作り方がちゃうし。

ーー 普段のネタ作りには木田さんが……アイデアを膨らませることができて、できたネタを一緒に披露する相方がいる。ひとりが0から100まで考えているコンビだったならまた変わってくるのかもしれませんが、「ガクヅケのネタ作り」を配信の企画として、船引さんだけでやるのは難しいんだなと。

船引 うん……「ネタ」は作れるけれど、「コンビのネタ」は、ひとりでは。

ーー そもそも現在は木田さんの側にそれができる余裕というか元気がないから、休業というかたちを取っているんでしたし。もともと知っていたこととはいえ、逆説的にも今はガクヅケの新ネタを作るって時期ではないんだな、と理解できたような感じがしました。

船引 実際、今年に入ってからの新ネタはずっと、ほぼ僕ひとりで作っていたので。木田からはネタの案も出せる状態にないって聞かされていて……けっこうキツかったですね。そういう状態だっていうのはわかっていても。

ーー こういう活動は発想できるだけの気力がないと続けられないのだとは船引さんも理解されている。でもそれまでの作り方をとれない状態で新ネタを作り続けていると船引さんまで消耗してきてしまう……。この状態の活動がいつまで続くのか、終わりが見えないことへのストレスも、木田さんにも船引さんにもそれぞれ生じてくる。


ーーコンビ休業が始まってからは、連絡など取ってますか?

船引 全くないですね(*注4)。

注4: 10月末、船引と木田は休業後初めて直接会って話をしたそう。Radiotalkにもその日に録られたトークが残っている。

ーー まあ、様子はX(*旧Twitter)でもわかるし。

船引 充分すぎるほどに(笑)。普段も業務的な連絡しかしてなかったので。コンビを組んでから1-2年ぐらいかけて、徐々にそういう風になっていって。

ーー もともとが友達同士でも、そうなっていくものなんですね。お笑いの相方って「友達」でも「同僚」でもない、不思議な立ち位置だなと側から見ていて思います。

船引 あと僕たちの場合はこれまでずっとRadiotalkや自主ラジオとか、ガクヅケとしてふたりで会話をする場をとってきたことも影響してるかもしれません(*注5)。活動していく上での不満ごとなんかもそこで初めて打ち明けて、ガクヅケとして提供するコンテンツの中で話せてしまえば、それで良い。

注5: ガクヅケは過去には「ガクヅケハウスラジオ」休業直前までは「ベビーベビーストロングハグラジオ」(以下、ベビハグ)というラジオ番組をYouTubeで展開していた。
ベビハグの休業前ラスト回はささいな食い違いから口論となるふたりの、休業直前のギリギリさがあらわれた記録となっている。

ーー そういうラジオみたいな活動は、休業中にはやらないのでしょうか?

船引 どうなんでしょう……うーん、でもベビハグだってYouTubeチャンネルでやっているとはいえ仕事ではあるし、やらないんじゃないんですかね。

ーー まあ、そうですよね。ただ雑談するのとは同じ感覚ではなく「ラジオとして話す」っていう気持ちの切り替えがあるのでしょうし。

船引 僕としてもやらなくても良いと思うし。休業中にまで無理には。
 僕とゲストでベビハグを続行するって話も一瞬あがった記憶があるけど、それも多分やらないですね。同じ事務所で似た境遇になってる演芸おんせん矢巻の「湯〜湯〜ワイド」がそれやってるし(笑)。

ーー (笑)。矢巻さんと船引さんだとキャラクターが違いますし、真似しているかのようには見えないと思いますがね。以前ベビハグで牛女のしらすさんと船引さんが出演されていた回、あの回とても良かったですよ(*ベビハグ第2回)。

船引 木田が体調不良で急遽代打をお願いした回ですね。その次は僕が体調を崩して、木田と牛女佐野さんがラジオ録って(*ベビハグ第3回)。
 まあ、ゲストを招くというのも、僕は別にやらなくても良いかなとは思ってます。誰かに「やりますか?」って話を持ってこられたらやるかもしれないけれど、自分からやることはないかな。他の芸人のYouTubeにゲスト出演するとかも、呼ばれたら出ます。こないだのカナメストーンさんとのコラボみたいなやつ。

ーー 「呼ばれたら出る」というのはしっかり書いといておきましょうか、アピールとして(笑)。


ーー 夏の終わり頃に、色々な芸人さんの単独公演を観ておられましたよね。現地に足を運んで。活動中も同じライブに出ている人たちのネタを観ることはあったかもしれませんが、連続して「ライブを一本観る」体験をするっていうのは、芸人になられてからはあまり無かったのではないか……と推測しているんですが。

船引 そうですね。休業していて時間あるから、せっかくやし……って部分はあります。あと「芸人さんは招待します!」って言ってくれているライブには積極的に観にいくようにしてる。

ーー 船引さんもガクヅケとしての単独を今年行いましたが、そういった立場の芸人さんとして他の芸人さんの単独を観に行く場合、どういった観点を持つものなのでしょうか?「自分が芸人である」という前提条件が公演やネタを観る目に影響するのか、そうでもないのか……。

船引 気の持ちようとしてはフラットです。観客としての目と芸人としての目、どっちも持った状態で観ているとは思います。

ーー フラットというのは平静であるというよりは、その公演を観に行く者としての初期状態である「楽しむために行く」みたいな状態ですか?

船引 そうですね。

ーー なるほど。単独公演って、それぞれが面白いものをつくる上で大切にしているポイントが如実に現れるものじゃないですか。そのポイントが、船引さんが単独公演をつくる際に大切にするポイントとは違っているかもしれない、というか別々にお笑い活動をしている以上、違っていて当然だと思っていて。ただその当事者である船引さんは、自分たちとお笑いのやり方が違うタイプの公演って、楽しく観られるものなのでしょうか。

船引 ……「この人はこれがやりたいんやろなー」とか、観ながら思うことはあります。でもそこで「いやいや僕は」と頭の中で異議を唱えることはないというか。

ーー 「その人のやりたいこと」として、受け入れて観られる。良いお客さん。

船引 (笑)。めっちゃ良い暇つぶしになるんですよ、他人が一生懸命作った単独を観るって。それぞれ面白いし。ズンズンポイポイさんの単独、たぶん映像が公演時間の半分以上占めてましたもん(*注6)。

注6: ズンズンポイポイ初単独ライブ「未来の子供たちへ」。2023年8月19日に杉並区立勤労福祉会館ホールにて開催。

ーー 私も配信で拝見しました。配信では幕間映像を1本カットしてたはずなんですが、それでも半分くらいは映像になっていたと思います(笑)。キャリアの長さも影響しているのかもしれませんが「初単独」がまったく重荷になっている感じがしなかった。

船引 「映像が半分以上になっている」をタブーだと考えない、気にしてない姿勢。別にそういう構成でも「単独ライブ」としたって良いんだよなって。面白かったですね。
 あと8月22日の彼女の単独も興味深いところがありました(*注7)。谷口つばさや春とヒコーキのぐんぴぃもどっかで感想言ってたと思うんですけど……1本「どこでできんねん」ってネタがあって。

注7: 8月22日の彼女第1回単独ライブ「さいごのデートコース」。2023年9月1日に新宿バティオスにて開催。

ーー そのメンツがそれを言うって、相当なことなのでは……。

船引 たぶん僕は初めて8月22日の彼女のネタを観たんですけど、ここでも単独って何やっても良いんやなって思えました。


ーー ご覧になられたライブやコンテンツで印象に残っているもの、他にもありますか?

船引 ヤングさん主催の「阿佐ヶ谷で殴り合おう」というライブを配信で見ました(*注8)。面白そうやなと思っていたら、配信見たい芸人さんは連絡くださいって呼びかけてたんで。
 すごく面白かったです。6組くらいがネタバトルするんですけど。1対1で戦って、勝ったほうが次の組と戦う。

注8: 2023年9月7日に阿佐ヶ谷アートスペースプロットにて開催。配信期間は終了しているが、ヤング嶋仲による開催後記が残されている。

ーー あ、ヤングさんが全組と戦うんじゃなくて。

船引 ヤングさんも含めた全組で出場順抽選して、1番手と2番手が戦って、勝ったら3番手と……最終的に勝ち抜いた組がウイニングネタをもう1本。だから最高6本くらいネタが必要になるんで、そのぶん準備してくるんですよね。漫才の組もコントの組も。

ーー うわ……ちょっとした単独公演をやるくらいの準備。

船引 でも負けてしまったらその後はネタができない。だから出番が来てすぐに負けたら1本しかやらないで終わっちゃう、6本分の準備はしてるのに(笑)。
 めっちゃ緊張感あるし、出演者たちもライブ中にそう言ってて。ヤングさんが……そうは見えなかったんですけど、ガチガチに緊張した、今までいちばん緊張したみたいに言ってましたね。もちろんネタも面白かったんですけど、「なんなんやろこのライブ!?」って面白さもありましたね。

ーー ガクヅケが普段出るネタライブでも、なかなかそこまでのガチバトルな雰囲気にはならないですよね。

船引 はい。観て良かった。映像をいただくやりとりの中でヤングの寺田さんから「ガクヅケもまたオファーするわ」って言われたんで、もしかすると……。

ーー そのライブにガクヅケも呼ばれるかもしれない。

船引 (笑)。準備めっちゃめんどくさいですけどね、でも出たい。「出たい」と「めんどくさい」が両立するライブ。

ーー 阿佐ヶ谷アートスペースプロットにたくさんモノ運び込んで、ヘタ打ったら1ネタで帰る(笑)。

船引 ふふふ(笑)。

ーー でも、そういうライブを観て思うことって「出たい」なんですね。

船引 まあ、そうっすね。たまにはそういうしんどいライブにも出たい。

ーー ガクヅケっていろいろなネタライブに呼ばれる存在ですよね。広い層に向けたライブにも異種格闘技的なライブにも呼ばれるし、以前にもヤングさんから呼ばれてましたけど、先輩芸人からも指名される。ガクヅケにしかできないことがあるからヒキが強いのかなと推測しているのですが。オファーをなんでも受けてるってわけじゃなくて、選んだうえでこの状態なんですよね。

船引 はい……忙しいとしんどいので(笑)。2日連続ライブ続くの嫌やなとか、いや2日はまだ我慢できるけど3日連続はもうありえへんとか。ふたりともそこは共通してる。……僕のほうがしんどいですけど、準備があるんで(笑)。
 あと同じネタをやりたくない。飽きっぽいし、みんなこのネタ知ってるんやろなってなっちゃうんですよね、実際はそんなことないんですけど。それが気になると全力でできなくもなってくるから。「このネタ、グレイモヤに残しておきたいな」とかも考えますね(*注9)。

注9: ライブ制作団体ザクセスが不定期に開催する、OP・ EDや企画のないネタライブ。東京のライブシーンで勢いのあるメンツが集められ、気合の入ったネタをひたすらに繰り広げていくストイックさが受けているのか、公演自体の人気が非常に高い。出演順も都度組み替えられているが、休業前までのガクヅケはトリ前に固定配置されていた。

ーー やはりグレイモヤは特別なんですね。観る人も多ければ感想をポストする人も多いし。そこで1本でかいのを打っておきたいみたいな?

船引 そうですね。なるべくみんなが観たことないネタをやりたい。


何も考えてないんで、いい意味で。僕ら(笑)

ーー 出たいライブについての話も出てきたので。
 休業中・休業後にやってみたいお笑いの活動、それぞれあるのかなとは思うんですけど。まず休業中にやってみたいことを伺いましょうか。

船引 大喜利でいうと……あれやりたいです。AUNとか開催してるWLUCKの、真空ジェシカやママタルトがやっていた、ひたすら回答していくやつ……。

ーー 「百喜利」ですか?

船引 それです。今もやってるんですかね?百喜利だったり、配信系のコンテンツでも大喜利をやってみたい気持ちがあります。

ーー ストイックなやつ。

船引 別にストイックに限ることはないですけどね(笑)。最初のほうで言った「深夜大喜利」も楽しかったし。
「大喜利ライブにどうですか?」ってアピールは小出しにしてる感じです、この1-2ヶ月。休業中も別に、僕も木田も活動はしていくので。それを伝えきれていないのか、伝えきれた上でこのくらいの呼ばれ具合なのかはわからないんですけど、僕はもっともっと大喜利ライブがあったほうが嬉しいです。

ーー 「コンビとしてのネタライブ出演」を休止しているだけで、大喜利ライブになら個々だけじゃなくコンビでの出演も大丈夫なのですよね。別に仲が悪くて休業しているわけではないのだから。

船引 はい、なんならAUNのようにコンビで大喜利するライブでも。呼ばれたらぜひ。

ーー 大喜利のように瞬発力が活かされるような場なら、今の木田さんもパフォーマンスを発揮しやすいかもしれませんね。

船引 木田の大喜利だって面白いし。

ーー 面白いのはnoteやトークばかりじゃないんだぞと。

船引 まあ僕はピンネタをしたくないくらいで(笑)、まあまあ準備のいるものとかでも出ます。先日出た「芸人さんが絵本の読み聞かせ普通に読むはずない」も、色々やりましたし(*注10)。あれで使ったもの作ってたとき、楽しかった……。

注10: ギャバホイが主催する企画ライブ「芸人さんが絵本の読み聞かせ普通に読むはずない」。ここで話題に上がっているのは2023年9月16日に高円寺北区民集会所の第1・2集会室にて開催された第8回公演。

ーー 拝見しましたよ!たしかにピンネタではないのだけれど、船引さんらしい発想を存分に反映させた「読み聞かせ」で、そうくるかと意表を突かれました(笑)。他の芸人さんたちの取り組みも、切り込む角度がそれぞれ違っていてそれぞれおかしくて。絵本を題材にこんなにも多様なお笑いができるのかと、興味深かったです。
「こういうルール・コンセプトの中で面白いことをしてください」って企画であれば、ライブなり番組なり出られるものもあるかもしれない……って感じですか?

船引 ……なかなか思い描くのが難しいかもしれませんけど、ガクヅケ船引をひとり呼んで何をさせるかって(***)。そう考えると大喜利ライブには出しやすいのかも(笑)。

*** ということだったので、ちょっとした企画ライブを考えてみました。2023年11月25日に開催予定です。

ーー 休業明けについては……まあまだわからないとは思うんですけど。なんとなくでも。

船引 木田次第でというところにはなりますね。時期だけは来年の2-3月頃と、一応決めましたけど。その時期から木田がネタ案出しをできるようになっていくのか、それともその2月とか3月とかには新ネタライブをやっていきますとなるのかは、当然ですけどわからない。

ーー 休業を明ける判断も、木田さんがネタに創造力を向けられる状態になったところを起点にするような方針で考えていますか?

船引 うーん、復帰一発目がどっかのネタライブで、休業前に作ったネタでも良いとは思うんですけどね。そうするか新ネタライブで復帰するかっていうのも、何も話し合ってない。……でも、もしさっき言った時期あたりに復帰のきっかけになりそうなライブをオファーしてもらったら、もちろん木田次第ではありますけど「じゃあそこからスタートしようか」ってなるかもしれない。
 ……何も考えてないんで、いい意味で。僕ら(笑)。


ガクヅケ
船引亮佑と木田からなる、マセキ芸能社所属のお笑いコンビ。2014年結成。都内の劇場を中心に現れては、「面白さ」への純粋な探究心を感じさせるネタで観客を魅了している。コンビとして発表するネタはコントに限定しているが、大喜利プレイヤーとしての活躍など、両者ともにライブの場において幅広く活躍できるポテンシャルを持つ。
2023年8月から2024年春頃まで、木田の体調を鑑みコンビでのネタライブ出演を原則休止としている。
HP: https://www.maseki.co.jp/talent/gakuduke

船引亮佑
兵庫県姫路市出身。生来の几帳面さ・生真面目さから、ガクヅケでは「面倒なこと」を担当しがち。
X(旧Twitter): https://x.com/shi__sho



 noteマガジン「連続型確率変数」では、ガクヅケ船引さんへのインタビュー連載を行っています。
 過去の連載はこちらから。

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連続型確率変数 編集部
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