宇宙好き文系が贈るインターステラーの魅力
映画好きが選ぶ最高の映画
二つの好きな映画
私は映画が好きだ。ミーハー一族のように映画の半券をストーリーに載せたいがために見るようなものではなく、しっかりとした鑑賞。
さながら美術館で、わかりもしないのに顎に手を添えて悩みながら絵画を見るような。私の中で映画と言うのはそれほどまでにのめり込むことの出来る芸術作品である。
Filmarksでちゃんと考えて星を付け、星5を付けた作品には、それなりの長文レビューを書くと言ったレベルの映画好きと言えば、気持ち悪いと思われるレベルで映画が好きと言うのが伝わるだろう。
その中で私が好きな映画は何?と尋ねられた時に答える映画が二つある。
一つは『バックトゥザフューチャー』、二つ目は何を隠そう『インターステラー』である。
また別のところでバックトゥザフューチャーの魅力について話そうと思うが、取り敢えずはこの二つをシーンごとに使い分けて好きな映画としている。
バックトゥザフューチャーを好きな映画と上げる時は、相手がちゃんとした映画好きじゃない時。
簡単に言えば、心の中で「ファッション映画好きだろお前?」ってなった時はバックトゥザフューチャーと答えている。
自分の好きな映画にそんな扱いをするのも心が引けるが、逆にそれがバックトゥザフューチャーの凄いところで、ファッション映画好きや、バックトゥザフューチャーを見たことない人でも、バックトゥザフューチャーが面白いということは知っている。
映画の話において、片方が知らない映画について語る不毛さと言ったらない。何の映画が好きかという話題になった時は、それこそ互いに知らない映画を上げ、「今度見てみるね」という「行けたら行く」と同じくらい信用のない言葉でその話題は終わりを告げる。
でもたまに本当に見て、感想などをラインで送ってきてくれる人は大切にしようと思う。
少し話がそれたが、そういう本当の映画好きじゃない人に好きだと言うにはバックトゥザフューチャーほど最適な映画はない。
しかし稀に年間百本見ていますみたいな本当の映画好きに当たる時がある。その時私は絶対にインターステラーと答える。
恐らく本当の映画好きはインターステラーの面白さではなく、凄さを知っているのだ。
映画評論家ではないので、映画評論家からしたら私も似非なのだろうが、長年映画好きを語ってきた私にとってインターステラーという映画はある種の基準になっていると思う。
インターステラーは面白いではなく、凄い。
それをわかっている人は、絶対に真の映画好きである。
最高の映画の概要
これから見る人も、もう見た人も、一応おさらいとして私が今どんな映画について話しているのか紹介しようと思う。
インターステラーはあのクリストファーノーランが描く2014年公開のSF映画だ。
上映時間は169分と長めであるのだが、その長さを感じさせない面白さがこの映画にはある。
あらすじは変に考えた私の文より、うまくまとめられたwikiを引用する方がよく伝わると思うので、それを引用させてもらう。
近未来。巨大砂嵐が日常的に発生する異常気象により地球規模で植物・農作物の大量枯死が発生し、人類は滅亡の危機に晒されていた。元宇宙飛行士クーパーは――かつての仕事仲間のブランド教授と再会し――別の銀河に人類の新天地を求めるプロジェクトのために――最後の探査船レインジャーに搭乗し地球を後にする。
このあらすじでわかるようにこのインターステラーは人類が新たに住むことが出来る新天地を探しに、宇宙を冒険する話――ではない。
ではないというのは嘘になるが、インターステラーはワクワクドキドキ冒険旅行ではないのだ。
何より主人公の肩には人類存亡が懸っている。それどころか主人公は人類のために、行かないでと泣く娘を地球に置いて、宇宙に旅立っていくのだ。
日本人でわかりやすく言うならば宇宙戦艦ヤマトであろうか。
「さらば地球よ、愛する人よ――誰かがこれをやらねばならぬ、期待の人たちが俺達ならば」
まさに主人公の心にはこれがあるからこそ、娘に「必ず帰って来る」とだけ告げ、旅立っていく。
しかし宇宙戦艦ヤマトでは触れられなかった宇宙の時間というものがこのインターステラーには大きく影響を及ぼす。
時間は相対的であるという事実
象と鼠は同じ時間を体感している
こんな話を聞いたことがある人はいるだろうか。私もどんな本で読んだかはもう思い出せないのだが、地球に存在するあらゆる動物は同じ時間を体感しているという。
象の寿命は70~80年で、鼠の寿命は2年ほどだと言われている。数値にして最大78年の開きがあるものの彼らが感じている時間の長さというのは同じだと言うのだ。
それこそ考えてみれば70年も2年も人間が考えた一年365日という周期の中での話だ。結局のところ一生という言葉があるように、象にある生きる時間は70年ではなくただの一生である。
何を言いたいかと言うと時間は相対的であるということだ。
人間の寿命で考えると象は70年で人間の感覚70年分の時間を感じているし、鼠は2年で70年分の時間を感じている。
ということは鼠は人間で言うと1年で35歳分歳をとるということだろう。これがいわゆる時間は相対的であるということ。
ここでアインシュタインの相対性理論について紹介する。
光速に近づくほど時間が遅くなる
SFとかでワープ航行から帰ってきたらウラシマ状態になっていたみたいな話をよく聞くだろう。
有名なところだと猿の惑星などがある。これが特殊相対性理論というものだ。
最初にも書いているが私はただの文系映画好きだから、本当はもっと色々違うんだというツッコミはよしてほしい。
ただ受け手にわかりやすくするためにいろいろ省いているし、何より人に説明できるほど私は相対性理論を理解していない。
しかしここでは光に近づけば近づくほど時間は遅くなり、重い重力の場所に近づけば近づくほど時間が遅くなる。この二つを覚えていてくれればいい。
時間が遅くなる原理とかを理系的に知りたい人は是非勝手に調べたらいいと思う。
相対的な時間に引き裂かれる親子
インターステラーではこの地球では絶対的でありながら、宇宙に出ると相対的なものへと変化する時間に、登場人物たちが翻弄される。
タイムマシンは未来に行けるけど、過去には行けないなんて話は聞いたことあるだろうか。
筒井康隆原作、細田守監督の映画『時をかける少女』では、ある登場人物がこんなことを言っている。
「時間てのは不可逆なのね――時は戻らない」
「戻ったのは真琴あなた自身」
時をかける少女の世界線や時間軸についてはまた改めて考察したいが、タイムトラベルにおいてはこの時間は不可逆と言う問題が絶望的な壁として立ちはだかっている。
逆に言えば、光の速度に近づくことが出来れば、地球の未来に行くことは可能であるということだ。
これがどれだけ恐怖かわかるだろうか。
もし重力の重い星に降りて、数時間いたら、地球では何十年も時が進んでいた。
インターステラーはこの時間と言う越えられない壁が強大な敵として現れている。
それをどう乗り越えていくのか、受け入れていくのかというところが見どころの一つであり、何より私は宇宙冒険よりも注目すべき点であると思っている。
ブラックホールを計算で導き出した天才
不可視の天体
ブラックホールという名前を知らない人はあまりいないだろう。
しかしブラックホールがどういうものか知っている人は意外と少ないかもしれない。
光すらも呑み込む穴?
違う。ブラックホールも一つの星だ。
自分の重力に耐え切れなくなった天体が、重力崩壊を起こし、時空すらも歪め縮まらせていくと、光すらも脱出できなくなり、その空間は暗黒になる。
これがブラックホールの成り立ちである。だからブラックホールは本来観測することの出来ない天体なのだ。
人間は光の反射によって像を視認している。だから見るという行為には光というものが不可欠だ。しかしそれすらも呑み込んでしまうブラックホールは人間の目には確認することが出来ない。
だからブラックホールは長らく理論上の天体で、その実発見すらもされていなかった。しかしそれが2019年に写真に収められた。
それがこの写真だ。
撮影方法などについては自分で調べたらいいと思うが、この写真がどれだけ凄いものかわかるだろうか。
不可能と言われていた撮影をしてしまった。
ではなんでこんな話をしたのか、見出しのタイトルである。
改めよう。インターステラーの公開日は2014年。その物語における科学的な検証を務めたのはキップ・ソーンというアメリカの理論物理学者だ。彼がどれだけ凄いかということを簡単に言うとすれば2017年にノーベル物理学賞を受賞している。
それほどまでに素晴らしい学者が科学コンサルタントとしてこの映画に協力し、この物語に重要となる「ブラックホールを映像化する」ことに尽力した。
そしてインターステラーで描かれた計算によって導かれしブラックホールがこれだ。
どうだろう、似ていると思わないだろうか。
もう一度言うがインターステラーが公開されたのが2014年、ブラックホールが撮影されたのが2019年。
この五年の開きと言うのは、まさに時間は不可逆であるからこそ、絶対に埋めることの出来ない開きである。だからインターステラー、ひいてはキップ・ソーンがどれだけ凄い学者であるかは、ここまで読んでくれた人こそわかっているだろう。
まとめ
この宇宙という膨大な空間にロマンを馳せる人は沢山いるだろう。
それ以外にもただSF映画が好きだとか、ヒューマンドラマが好きでもいいかもしれない。
何より私が最初に小ばかにしたミーハー映画好きでもいい。
この記事を最後まで読むことの出来た我慢強いあなたにこそ、このインターステラー是非見て欲しい。
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