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コンプレッサーは本当に数値通りに動いているのか?という話
〇〇は〇〇なのでコンプのアタックは〇〇msに設定、みたいなTipsはよく見掛けるのだけど。
果たして本当に、〇〇msに設定したら〇〇msで圧縮されるんだろうかね?
実際には耳で聴きながら操作するので、正しく数値通りに〇〇msで圧縮される必要があるかといえばないのだけど。では、AというコンプとBというコンプのアタックを〇〇msに設定した時に、同じような時間軸で圧縮されるんだろうか?
もしTips記事を参考にミキシングする場合、それが機種によって異なるとしたら。参考にしている数値をそのまま使う、ということはできなくなってしまう。
というお話。
以前ミックス本か何かを作った時に、画像を作っていて気がついた。
こいつら数値通りに動いてねえな、ということに。
今回の実験台
今回の木人形、もとい実験台はこちら。
ややナチュラル系に偏ってるけど、それはモデリング系がほとんど入っていないのと、FET系なんかはアタックが早すぎて画像で変化が見えにくいから。
Steinberg Compressor
Waves C1 Compressor
Waves HComp
Sonnox Oxford Dynamics
Fabfilter Pro-C2
DMG Audio Trackcomp
iZotope Ozone
iZotope Neutron
Plugin Alliance elysia alpha compressor
Metric Halo ChannelStrip
今回はこれらを使って、1秒間は-6db、次の1秒間は-12dbで鳴る三角波に対してスレッショルドを-9dbに設定してリダクションしてみる。コンプの設定はアタックタイム20ms、リリースタイム300ms、レシオ2:1でハードニーの状態。
果たして数値通りに動くだろうか……?
といっても今回は耳で音を比較するのは困難なので、DAW上に表示される波形を比較するだけなのだけど。
Steinberg Compressor
![](https://assets.st-note.com/img/1659878452625-4FNtGLA7xD.png?width=1200)
最初の実験対象はCubase付属のコンプ、Steinberg Compressor。
私が使ってるCubaseのバージョンは10。いつの間にかDry/Wetまで付いてたのね。
こちらの画像は、上がオリジナルの音源、下がSteinberg Compressorを通したもの。横軸は100msだ。
既に怪しげな波形になっているね。
![](https://assets.st-note.com/img/1659878788877-xeOoQaJmGR.png?width=1200)
アタックの部分をズームしてみた。横軸が10msだ。
アタックタイムは20msに設定しているけど、圧縮率が指定した値になるには80msくらい掛かっているように見える。50msくらいからなだらかなカーブになっているので、それ以降は無視してもいいのかもしれないけど。
![](https://assets.st-note.com/img/1659878869353-wtEHxlfXQq.png?width=1200)
リリースの方にズームしてみる。こちらは横軸が100ms。
元の音量に戻るまでは、300msどころか800msくらい掛かっているように見える。
Waves C1 Compressor
![](https://assets.st-note.com/img/1659878944489-kJEqxuWkVg.png?width=1200)
続いてWaves C1。
Steinberg Compressorと似たような形になっているけど、並べてみるとSteinberg Compressorよりかなり圧縮されているような……。
アタックやリリースが数値通りじゃないのは知っていたけど、これはちょっと予想してなかった。
まぁ、どこまでリダクションするかを数値で決めることはほとんどないと思うので、そこは目を瞑ろう。
![](https://assets.st-note.com/img/1659879142919-wThKYsu1Aa.png?width=1200)
これも圧縮し切るまでには80msくらい掛かってるかな。
カーブが緩やかになるには60msくらいで、80〜120msの間も緩やかに音量が減衰しているように見える。まぁ、ここはあまり気にしなくていい部分ではあるような気がするけど。
![](https://assets.st-note.com/img/1659879267184-yUDna5mA3s.png?width=1200)
これも300msどころじゃなく時間が掛かってるな。
しかし時間だけを見ると、割とSteinberg Compressorに似ているね。
いや、しかしこのリダクション量……。C1を初めて使った時、やたらと強くコンプが効くような気がしたけど、もしかしてそれって……。
Sonnox Oxford Dynamics
![](https://assets.st-note.com/img/1659879389919-PulgqLj5di.png?width=1200)
H-Compは飛ばして、みんな大好きSonnoxのOxford Dynamics。
ニーを調整したり、先の2つと比較して色々できるのが強み。
ただ、トランジェントの変わり方は先の2つと似てるかな。
![](https://assets.st-note.com/img/1659879519491-NDFAwcaKDD.png?width=1200)
アタック部分を拡大してみる。
こちらは20msとまではいかないけど、5〜60msくらいでほぼ圧縮率はレシオで指定した値になっているような。ただ、見た目の上では、最終的に指定した数値になるには100msくらいは必要らしい。
![](https://assets.st-note.com/img/1659879776009-oIB1h8XrIJ.png?width=1200)
こちらも元の音量に戻るまでには結構時間が掛かっている。900msくらい?
アタックの方もそうなのだけど、Sonnox Oxford Dynamicsは、全体的に変化のカーブが緩やかな印象。
初めて触った時に使いやすいと感じたのは、そういった部分も関係しているかもしれない。
Fabfilter Pro-C2
![](https://assets.st-note.com/img/1659880079729-tzpGkOq4uC.png?width=1200)
続いて私がメインで使用しているFabfilter Pro-C2を見てみる。
君は数値通りに動いてくれていると期待してたけど……、どうやらそうではないらしい。
ちなみにモードは一番普通のやつを選択。
![](https://assets.st-note.com/img/1659880140630-xn4hkCBYvX.png?width=1200)
アタックは……やや早いかな?50msくらいでほぼ圧縮しきっている感じ。
緩やかなカーブも80〜90msくらいで止まっているような。
![](https://assets.st-note.com/img/1659880209799-9I7zUHYLM1.png?width=1200)
リリースの方も、数値通りとは言えないけど、先の3つと比べると明らかに早い。500msくらいで元の音量に戻っているようだ。
こちらも使いやすい万能タイプのコンプだけど、意外と挙動はタイトなのね。
DMG Audio Trackcomp
![](https://assets.st-note.com/img/1659880352787-FnYAcNNUE8.png?width=1200)
ナチュラル系なのでついでに撮ってみた、DMG Audio Trackcomp。
最近あまり出番がなくなってきたけど、これのSSL Gモードをバスコンプに使うことがたまにある。
こちらもモードは一番普通っぽいやつを選択。
![](https://assets.st-note.com/img/1659880421566-ZkHUdORkVp.png?width=1200)
他と比べても明らかにアタックが早いね。3〜40msくらいで圧縮しきってる。
数値通りと言えるかは疑問だけど、カーブの形状を見るとかなり近いように思う。
![](https://assets.st-note.com/img/1659880499059-BnZM0AAz5B.png?width=1200)
リリースの方もかなり早め。300msに設定したけど、4〜500msくらいで元の音量に戻っているらしい。
だからといって優れたコンプかというと、そうとは限らないのだけど。
でも正確さという意味ではかなり優秀なコンプのようだ。
iZotope Ozone Compressor
![](https://assets.st-note.com/img/1659880617511-3jSGXXZxEd.png?width=1200)
みんな大好きマスタリング用プラグイン、Ozoneのコンプも試してみるよ。
ちなみにバージョンは7。結構古いけど、でも動くのと、特に不満がないのでまだアップデートしてない。追加機能に惹かれないかというと、そうでもないのだけど……。
![](https://assets.st-note.com/img/1659880748286-a2Duwz54Vm.png?width=1200)
40msくらいで圧縮が完了しているので、こちらもアタックはかなり早いようだ。
指定した20msくらいからは緩やかなカーブになってるね。
![](https://assets.st-note.com/img/1659880860372-1yu429pw72.png?width=1200)
リリースはちょい長め。といってもDMG Trackcompと比較しての話で、最初の3つに比べるとちょっと早いくらい。
iZotope Neutron Compressor
![](https://assets.st-note.com/img/1659880928009-iAUl81WgzK.png?width=1200)
Ozoneを試したらNeutronも試してみよう……って、なんだこのカーブ。
ちなみに私が持っているのは初代Neutronか2かな、結構古いと思う。
![](https://assets.st-note.com/img/1659880985150-wUJQ1CjMW4.png?width=1200)
最初の5msくらいはスルーしてるのかな。そのあと20msくらいで圧縮は終わっているので、アタックは早いのかもしれない。
そのあと音量が元に戻っているのは……どういうことなんだろう、私にはよくわからない。
![](https://assets.st-note.com/img/1659881144918-N89AmB8BeP.png?width=1200)
200msくらいで音量は元に戻って(戻りきっているかはわからない)、そのあとまた圧縮されて……これは何とコメントしたらいいのか。
Neutronは……その、なんだかよくわからない。私の知っているコンプレッサーとはちょっと違うのかもしれない。
今のバージョンも同じ掛かり方をするかどうかはわからないけど。
Waves HComp
![](https://assets.st-note.com/img/1659881263941-AK9fO05FZX.png?width=1200)
今回のテーマで使えそうなモデリング系っぽいコンプを色々探して、何とか見つけてきたのがHComp。見た目の通りの掛かり方をするコンプだけど、Dry/Wetツマミがあったりして意外と面白い。
![](https://assets.st-note.com/img/1659881373030-NXUDTSa7SO.png?width=1200)
見た目に反して以外とアタックは遅め。圧縮しきるまでに70msくらい掛かっていて、しかもカーブが緩やか。
この掛かり方もアナログっぽいと感じる理由のひとつなんだろうか。
![](https://assets.st-note.com/img/1659881479328-VtVqmHg2vf.png?width=1200)
リリースの方は目を疑ったのだけど、改めて設定を見てみても数値上は間違っていない。
でもこれ、300msじゃなくて30msだよね。
まぁ、数値を信じてこの音になったら、それはそれでアナログっぽいと感じるのかもしれないけど……。
Plugin Alliance elysia alpha compressor
![](https://assets.st-note.com/img/1659881638248-fdiuubOinb.png?width=1200)
一応モデリング系ってことでPAのelysiaも試してみた。
マスタリング用っぽい感じなので面白い掛かり方はしないかもしれない、とは思っていたけど、波形をみる限りHCompのような面白い掛かり方ではなさそうだ。
……ただ、こいつはスレッショルドの数字が明らかに他と違う。違いすぎて比較にならなかったので、この子だけスレッショルドを-5dbくらいに設定してる。
まぁアナログだとバランス/アンバランスとか色々絡んでくるので、モデリング系は数字を気にしてはいけないのかもしれない。知らんけど。
このコンプを使って、デジタルコンプ系と同じ感覚でリダクションするとオーバーコンプになりがちかも。ナチュラル系っぽい見た目なのにやたらと強く掛かると思ってたのは、そういうことなのか。
![](https://assets.st-note.com/img/1659881948979-L76W9KEDsA.png?width=1200)
アタックは意外と早いね。バスコンプ系だからもっと遅いかと思ってた。
2〜30msくらいでほぼ圧縮が完了してる。
![](https://assets.st-note.com/img/1659882009840-vNUpUF4Psh.png?width=1200)
リリースもめっちゃ早い。300msで指定したのだけど、200msくらいで音量が戻りきっているような。かなりタイトなコンプなのね。
Metric Halo ChannelStrip
![](https://assets.st-note.com/img/1659882107169-gfANy9wqaR.png?width=1200)
最後に、Metric Halo ChannelStripのコンプ部分だけをオンにしたもの。
ドラム用コンプとしてめっちゃ人気のやつで、私も好きなのでこの機会に反応の仕方を見てみることに。
![](https://assets.st-note.com/img/1659882167230-YF4ypbJexs.png?width=1200)
これまた独特な掛かり方で、最初の25msくらいはコンプが反応していない。その後のカーブも比較的緩やかで、圧縮しきるには60msくらい掛かっているようだ。
ドラムの音作りで使いやすいっていうのはそういうことか。これだと確かにアタックはしっかり残るよなぁ。
![](https://assets.st-note.com/img/1659882254122-U8aImVMMlN.png?width=1200)
アタックは遅いのに、リリースは早め。これもドラムでよくある掛け方に一致してる。やたらドラム向きと言われるのは、この独特な掛かり方がかなり影響しているんじゃないだろうか?
まとめ
あくまで視覚上の変化ではあるけど、こんな感じで色々と比較してみると、各コンプの特徴がわかって面白い。
数値にシビアなのはDMGのTrackcompだけど、正しいからといって使いやすいとも限らないのがまた面白い。
指定した数値と実際にリダクションする時間軸での動きの違いだけでなく、アタックの減衰やリリースの戻るカーブによっても感じ方はかなり変わってきそう。
こういう色々な違いがあるので、やっぱり最終的にプラグインは耳で聴きながら判断するしかないのだろう。
指定した数値から期待する音の変化と、実際のリダクションの動きが近いほど使いやすいコンプと感じるだろうし、良いコンプだと感じるのかも。
でもその自分の趣向さえ掴めれば、どんなコンプでもある程度は扱えるようになる、かもしれない。
FET系やOpto系も今回のように試してみると、それぞれの特徴を把握できてミキシングや音作りに活かせるんじゃないかな。
それはそれとして、この曲のBMPは○○だから、アタックタイムは○○msにしよう……みたいな計算をする意味はなさそうだ。