変わらない君と、変わっていく君へ(くぴぽ しゅりちゃんの話)
僕の応援しているグループ・くぴぽで活動するレトロりんごオレンジ・しゅりちゃん。
2021年3月のSNSオーディションに締切直前に参加し、見事合格。
スタッフなどのお手伝い期間を経て、2021年7月からくぴぽメンバーとして活動している。
僕は2020年の9月ごろから本格的にくぴぽを追い始めたため、しゅりちゃんがSNSオーディションに現れたのはくぴぽのファンになって半年ぐらいした頃だ。
その頃くぴぽはメンバーが卒業するなどの話もなく(そもそも2020年8月に当時の体制になったばかりだった)、新メンバー入れるのかぁ、とちょっと複雑な気持ちだったことを覚えている。
しかしそんな気持ちも最初だけで、SNSオーディションが進み、そしてメンバーになり、しゅりちゃんのパーソナリティやアティチュードを知ることで彼女をどんどん好きになっていった。
しゅりちゃんは僕の今まで出会ってきたどのアイドルさんよりも、僕の考える“理想のアイドル”像に近い存在だ。
アイドルといえばやはり飛びぬけた容姿や純粋さ、華やかさだろう。
もちろんしゅりちゃんには十分備わっているものだが、それだけではない。
未熟さや人間臭さであったり、陰の部分であったり、そういったウェットな部分が僕の思うアイドル像には不可欠だ。
しゅりちゃんはそういった部分も兼ね備えていた。
まぁネガティブな意味も含むので“兼ね備える”なんて言ってしまうのは失礼なのだが。ごめん。
しゅりちゃんはアイドル未経験者で、そもそも芸能のような表舞台に立つ活動自体をしたことのない、普通の女の子だった。
当時の、まさに百戦錬磨、魑魅魍魎といったような(ひどい)くぴぽメンバーの中に飛び込んでいくにはあまりに未熟で、純粋だったように思う。
以前noteにも書いたのだが、僕はアイドルには“文脈”が大事だと思っている。
歌やダンスのパフォーマンスのクオリティも大事だが、アイドル活動によって色んなものを得たり捨てたりしてできていく物語性が、アイドルには必要な要素なのだ。
歌もダンスも未経験で、前へ前へという性格ではないしゅりちゃんは、一筋縄ではいかないくぴぽのライブパフォーマンスに必死に食らいついていた。
幸い、スタッフとして帯同していた期間がしばらくあったのと、末っ子気質なところもありオタクには馴染んで可愛がられていたから、厳しい目を向けられることもあまりなく(僕の体感なので実際はわかりませんが…)その面ではよかったと思う。
自分のライブパフォーマンスを確立するのがただでさえ大変だっただろうが、しゅりちゃんが加入して1ヶ月ほどはくぴぽとしても怒涛の期間だった。
コロナ禍によるメンバーの卒業公演の延期などがあり、ライブの度にメンバーが入れ替わり体制が変化するという状況、その度に歌割もフォーメーションも変わった。
しかもライブの殆どが遠征であった。(当時しゅりちゃんは三重に住んでおり、そもそも関東・関西どこでライブをしても遠征だったのだが)
アイドルを始めて1ヶ月の子にはあまりに酷な状況だが、しゅりちゃんはそれを見事に乗り切った。
まきちゃんも後に「この子すぐやめるんちゃうかなと思ってた」と失礼なことを言っていたが、はっきり言ってあの状況に放り込まれたらほとんどの子がやめたいと思ってもおかしくない。
しゅりちゃんはそういった当時の大変だった状況やくぴぽの活動に関して「アイドルやるのはじめてやから、そういうものだと思ってた」とよく述懐している。
しゅりちゃんの大きな魅力はそんな飄々としたところと芯の強さだ。
可愛らしい容姿や末っ子気質の人懐っこさもあり、オタクの母性や父性を刺激して好かれるしゅりちゃんだが、それに甘えたり寄りかかったりする印象はなく、いい意味で距離感を保ったドライなスタンスでいるのが興味深いし、個人的にリスペクトしているポイントだ。
アイドルの甘えん坊キャラであれば、ミスや失敗も許されたり、未熟さそのものを武器にすることだってできる。
しかし、しゅりちゃんは初期からそういう部分にはしっかりと線を引き、未熟であることや“できない”ことを自分のキャラ付けとして使うことはなかった。
そんな安易な選択をしなかったしゅりちゃんには本当の芯の強さがあると思うし、同時に、公に「できない」「無理」と言いたくない頑固さや、そうやって気を張っているがゆえに無理をしてしまうときもある、というのが僕がこれまで見てきたしゅりちゃんのイメージである。
そんなしゅりちゃんはライブやイベントを重ねるたびに、ダンスパフォーマンスはレベルアップし、ボイストレーニングを欠かさず歌唱の幅を広げてきた。
バンもんの汐りんやSAKA-SAMAのここねん、USABENIちゃんなど、自身がファンだった存在をロールモデルと公言し、理想としているアイドル像が明確であるというのもしゅりちゃんの成長を助けているのかもしれない。
しゅりちゃんのダンスの良さは、「アイドルらしさ」に尽きる。
アイドルになる以前に本格的なダンスレッスンなどを受けていないのが逆に奏功しているのか、真っ白な状態から「アイドルとしてのダンス」を前述したロールモデル達を参考に構築しているので、所作の一つ一つが可愛らしさやコケティッシュさに溢れていて、どの瞬間をとって見ても「女の子が憧れるアイドル」そのものなのだ。
それはしゅりちゃんが昭和のアイドル好きというのも関係しているかもしれない。
加入当初の未熟さは今はもう微塵も感じられないが、それでいて“洗練されすぎない”パフォーマンスやポージングは昭和アイドル的な甘酸っぱいフレッシュさを感じる。
そのバランス感覚が絶妙なのだ。
実際しゅりちゃんのそういったアイドルしぐさが好きという女性ファンも多い。
しゅりちゃんの歌は、経験を積み重ねて作られてきた幅の広さが武器だ。
加入当初は発声もまだ発展途上だったし(未経験なのだから当たり前だ)、声質的にもわかりやすく抜けてくるタイプではないので、どう個性を発揮するべきか苦戦している様子だった。
それがライブやボイストレーニングを重ねるごとに発声やマイクのりがよくなり、太く安定したクリアな歌声へと成長してきた。
しゅりちゃんの歌声にはいい意味でのフラットさがあり、2023年初頭からは楽曲に合わせて歌唱を変化させるテクニカルさも加わった。アルバム「WATER」の「走馬灯」でのダウナーで低体温な歌には本当にびっくりしたし、ライブの「しゃぼん玉ホリデー」では高音のハモりをしゅりちゃんが担当しており、ライブでの注目ポイントだ。
またしゅりちゃんが歌う「あたしが星座になる前に」「PEOPLE‼」の落ちサビはその一瞬でフロアの空気を掌握する力があり、しゅりちゃんの表現力はくぴぽの世界観を形作るまでになっていると感じる。
何者でもなかった女の子がアイドルを志し、勇気をもってアイドルの世界に飛び込み、たくさんのステージを経て成長していく…しゅりちゃんの物語は、まさにアイドルそのものだ。
2024年11月現在、しゅりちゃんのアイドルとしてのキャリアは3年半近くなり、それはイコールくぴぽの在籍期間なのだが、実は現時点でしゅりちゃんの在籍期間は歴代くぴぽのメンバーの中で最長となっている。(歴代2位はひめちゃんの3年3か月)
ということは、くぴぽというグループを語る上でしゅりちゃんの存在は本当に欠かせないものであるし、この3年、くぴぽを守り、作り上げてきた柱はしゅりちゃんであると言える。
活動初期から荒波に揉まれ、卒業していくメンバーを見送り、新メンバーを迎え入れ、決して平穏無事ではないアイドル人生を歩んできたしゅりちゃんだが、本人は飄々としてその苦労を表には見せない。
三重の実家から東京に移住して一人暮らしを始めるという大きな出来事があっても、変わらず東西のライブに出演し週1回はツイキャスをしている。
しゅりちゃんには変わっていく強さと、変わらない尊さがある。
きっとそれはしゅりちゃんのアイドルとしての矜持なのだろう。
しゅりちゃんは僕が出会った中で最高の“アイドル”だ。
これからも変わらないで変わり続けてね。
つづく。