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君がアイドルでよかった。(僕とウノチャンと #うの誕2024 の話)

アイドルオタクっていうのは、もっと気楽なものだと思ってた。

数年前の僕は「推しが今日も可愛い」とか、「あの曲のここのパートが」とか「運営わかってねーよなぁ」とか、なんかそんなことを言いながら、なんとなくアイドルを他人事として楽しんでエンタメとして消費していく、そんな感じだった。他の趣味と同じように。

今の自分は、まぁそういう面も多分にあるが、どう考えても過去の自分とは違う、決して軽くはないものが、心の中にある。

先に言っておくが、これはネガティブな話ではない。

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2024年10月20日日曜日、くぴぽのうのちゃん(以下ウノチャン)の生誕ライブ「うの誕2024ワンマン」があった。
ウノチャンがくぴぽに加入してこれで4回目となる生誕ライブだ。

僕は1回目から参加していて、2回目の生誕ライブから、こうしてイベント後にnoteの記事を書いている。

ウノチャンとの出会いについてや、昨年までのことは以前の記事に書いているので、もし万が一興味がある方は読んでみてください。

生誕ライブというのはお祝い、お祭りみたいなものであるからして、それだけで特別なライブであるが、近年ウノチャンは自分のチャレンジの場として生誕ライブに向き合ってきた。

昨年は地元・滋賀県でライブを開催し、宇野祐生佳名義でほぼ3年ぶりとなるソロでのステージ出演をした。

今年は、昨年より5分延長した20分のソロステージ、そしてゲストアクトのティンカーベル初野氏とのコラボレーションなどが示唆されていた。
それに加えて、ウノチャンがデザインしたオリジナルタオルや、メンバーのちあきちゃん撮影・構成によるフォトブックなどが事前に発表されており、外野から見ても大変な仕事量だった。

当日入場すると、ステージには白い幕が張られていた。
ソロステージで使うのだろう。
前回のうの誕2023でも映像を流すVJ的な演出をしたかったそうだが、ステージの構造上できず、フロアの壁に映像を投影することになってしまった。
そのリベンジというわけだ。

ウノチャンのソロ曲は公式では「パウ郎」「BAD END OF THE WORLD」の2曲である。20分のステージで、その2曲のほかに何をするのか、そもそも歌うのか、踊るのか、得も言われぬ期待感と緊張感を抱えたまま、ステージの開幕を待った。

オープニングSE。
白い幕に映し出された鋭角な線のみで構成された「宇野祐生佳」のロゴが徐々に完成していき、それが完全に形を成すと、ウノチャンが登場した。

ステージに現れたウノチャンは、真っ白だった。
このソロステージのためにあつらえられた、純白という表現でしかありえない、ロリータ風の、それでいて随所にアイドルらしさを感じさせる衣装、そして真っ白な傘を差しステージの中央へ歩いてくる姿は、現世と黄泉の国の狭間を散歩しているかのようで、この世のものとは思えない美しさと幽玄さを放っていた。

ウノチャンが中央に立つと、「パウ郎」が始まった。
同時に、MVで使用されていた映像(ウノチャンが撮影・編集したものだ)がウノチャン越しに白い幕に映し出される。

そのとき僕は、2020年12月、約4年前に横浜のクリフサイドで観た宇野祐生佳のステージを思い出した。
あの日も、ウノチャンは前触れもなく登場し、映し出される映像の中で「パウ郎」を歌っていた。
目の前にいるウノチャンは本当に存在しているのか、まぼろしなのではないか、と思っているうちにステージが終わっていたのである。

あの日は儚げな姿が印象に残ったが、今日は違った。
儚げではあるが、確かにそこに存在している。
真っ白だが、透明ではない。
ウノチャンは意図的に表情を封じていたが、その瞳と声には力強い息吹を感じた。

直立して滔々と歌うウノチャン、まるで儀式の最中にいるような感覚になり、我々観客はじっと凝視せざるを得ない。
あっという間に2曲目「BAD END OF THE WAROLD」までを歌い終える。
フロアから熱を持って迎えられた昨年とは違い、フロアには畏敬の念のようなものが渦巻いていた。

その圧倒的な演出に、「3曲目には何が来るのだろう」と思う間さえなかった。
そして始まったイントロ、それは聞き覚えのある、いや、あまりにも耳馴染んだ曲だった。

代代代の「くちうつしうつくしい」。

ウノチャンが制作したMVを素材とした映像が映し出され、ウノチャンは先ほどまでと変わらず、表情や動きはあえて作らずに歌っている。
この曲はウノチャン在籍時の代代代の最後のシングルのリードトラックである。
そして、代代代卒業までにウノチャンがステージでこの曲を歌うことはなかった。

そんな経緯の曲をここで披露する理由を、ライブ後の特典会でウノチャンは語ってくれた。

「あの頃のことは、いろいろ心残りはあるんやけど、「くちうつし~」はあたし歌ったことなかってん。それでソロで何歌おうかな~と考えてたときに、歌いたい!と思って。それでおぐぴ(ex.代代代のプロデューサー小倉ヲージ氏)に相談したらノリノリで「いいよ」って言ってくれて、あたしのコーラスとか新しく録り直したの。びっくりした?心残りがひとつ消えた!」

これを聞いて、人生の色々な巡り会わせを感じた。
ウノチャンは2019年当時、完全燃焼とはいかない形で代代代を卒業し、くぴぽはくぴぽで所属していた事務所を2021年初頭に離れてから、代代代や小倉ヲージ氏とは少し距離のある状況で数年が経っていた。

その後、ウノチャンは2021年にくぴぽに加入しアイドルに復帰、小倉ヲージ氏は代代代の解散後、昨年(2023年)の後半からNARASAKI氏と共同プロデュースするアイドルを起ち上げるためにまきちゃんに協力を仰いでおり、そうして起ち上げられたアイドル「集団」は現在くぴぽと同じ事務所に所属している。
こうして図らずも両者はまた接近、というより、小倉氏とウノチャンは数年越しにまた同僚に戻るという不思議なことが起こったのである。

こうした運命的な出来事も、何より全員が“続けてきた”からこそ起きたのだと思う。

アイドルを諦めずにくぴぽに加入し、3年間続けてきたウノチャン、コロナ禍や相次ぐメンバーの離脱に見舞われながらもくぴぽを諦めず続けてきたまきちゃん、代代代の解散後、偉大な先達のNARASAKI氏と組み新たな道を歩みだした小倉氏、3人の内誰か一人でもやめていたり、歩みを止めたりしていたら、今日この場でウノチャンが「くちうつしうつくしい」を歌うことはなかったのだ。

そう思うと、目の前で起きたことは奇跡とも呼べることだったのだと、改めて思う。

ウノチャンのソロが終わり、ゲストのティンカーベル初野氏のライブ。
楽曲の良さと楽しさと可笑しさが初野氏のパフォーマンスやMCによって数十倍にもなる。
シュールな映像やMVが流され続けるVJセットも非常に面白かった。

そして途中でウノチャンが登場。
てっきり既存曲でコラボするのだと思っていたら、なんとウノチャンをフィーチャリングした新曲の披露だったので驚いた。
しかもウノチャンが作詞をしたという。初の作詞曲だ。

ポップで可愛らしいビートとメロディに、ウノチャンの歌詞が乗る。
まだリリースされていないので歌詞は聴こえてくるものとVJの映像で観ただけで細かいところはまだ分かっていないが、ウノチャンらしい言葉とポップでキッチュな言葉がブレンドされて凄まじく可愛い曲に仕上がっていた。
以前から温めていたが使う場所がなかったアイデアを基に制作したという初野氏だが、それをウノチャンとの共作としてここを披露の場に選んでくれて本当に良かったと思うし、感謝しかない。

そして、メインであるくぴぽのワンマンライブ。
ウノチャンの生誕ライブではあるが、メンバー6人がステージに立てば、誰が主役というものではなくなる。
全員が主役だ。

ウノチャンのセリフから始まる「ぎゅーーーーーして♡」でスタートし、前半戦は可愛く、“陽”の要素が大きいセットリストでひたすらに沸くフロア。
くぴぽのライブはまず楽しい!が一番にくるのが最高なのだ。

MCを挟んでの第二部とも言えるパートは、「あたしが星座になる前に」〜「PEOPLE!!」〜「しゃぼん玉ホリデー」と、アイドルとオタクの関係性や人生を感じさせる曲が続き、ウノチャンの歩んできたアイドルとしての道のりを感じさせた。

再びMCをはさみ、「眠いよ青春」へ。
昨年この曲のウノチャンの落ちサビでサイリウムの点灯をしたことを思い出す。
あの日あの時あの場所でウノチャンが「眠いよ青春」を歌い、それを見届けられたことは僕のオタク人生一生の思い出だ。

その落ちサビは今はあやぴぃが歌っている。
あやぴぃにとっても「眠いよ青春」がそういう存在の曲になったら良いなと思っている。
もうなっているかもしれない。

その後は本編ラストに向けてテンションの高い曲を連発し、「PAINT PAIN 平成」でフロアへ。
「PAINT PAIN 平成」のウノチャンのソロパートでサイリウムの点灯が行われた。
フロアライブの定番曲なので、そのパートではオタクもメンバーも膝をつきケチャをするのがお馴染みであり、その中心にウノチャンが立ち歌う、それだけでも神々しい光景なのだが、揺れるピンクの光の海の中で歌うその姿はさらに美しく気高かった。

先ほども書いたが、この場所でこの光景を見られるということは、様々な道の折り重なった結果なのだと強く感じた。

僕がウノチャンに出会ったのはたまたま知り合った関西のオタクが代代代を熱心に推していたからだし、くぴぽに出会ったのも同じく関西のオタクがツイートしていたからだ。
その2つの出会いは時期も違うし全く別の出来事だった。

そしてウノチャンが代代代を卒業したあともソロ活動、くぴぽへの加入と表舞台に立ち続けてくれたことで、僕の歩んできた道とウノチャンの歩んできた道が重なった。

そしてそれは僕らだけでなくて、まきちゃんや、くぴぽに関係するたくさんの人たち(スタッフさんやイベンターさんやオタクも含む)が自分なりの道を歩んで辿り着いたこの場所で、今目の前のピンクの海の光景が生まれているんだと、本当にそう思った。

運命という言葉は嫌いじゃない。
使ってしまえば安っぽくなるのは分かってる。
ただ、偶然や奇跡でこの瞬間ができているわけじゃない。
僕もウノチャンも自分の意思で歩んできたのだ。
だからやっぱり、運命なのかもしれない、と思った。

ライブは続くアンコールと最後のMCで初野氏やオタクからのプレゼント贈呈など和やかに進み、終わった。

特典会では、ウノチャンはやりきった満足そうな表情をしていた。
昨年は地元滋賀県でのライブだったこともあってライブ終わりはとてもリラックスした表情だったが、今年はまた違う充足感や穏やかさをたたえていた。

ライブが終わって、西永福駅前や帰りの電車でオタクたちと少し話しながら、そのまま解散した。

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アイドルっていうのは、不思議なものだ。

いい曲を歌って、いいパフォーマンスをして、ステージで輝く。
それはひとつの大事な面ではあるけど、もっと複雑で、多面的だ。
アイドルを構成する要素をひとつひとつ説明しようとしても、うまくまとまらない。
アイドルによっても、オタクによっても、あまりに多く様々だ。

なんだかそれって人生じゃないか。

君の人生が、僕の人生にたくさんの彩りとやさしさをくれています。

君がアイドルでよかった。

来年もまた一緒に同じ場所で笑いましょう。
誰にも説明できない僕たちの物語を作りながら。

つづく。



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