【運用部コメント】2021年、変わりつつある足元の景況感と変わらぬ分散投資の重要性
年が明けて2021年を迎えました。年頭ということで、このタイミングで改めて、当社が提供するファンドに投資いただく際の投資家の皆様へのお願いをお伝えするとともに、昨年、2020年の運用部コメントを振り返りつつ、足元の景況感につきまして考察していきます。
1. 当社が提供するファンドに投資いただく際の改めてのお願い
投資家の皆様に向けて、当社は今日まで一貫して「分散投資および手に汗を握らない投資」を推奨し、3つの投資原則(※1)を徹底していただくよう呼びかけています。その内容は、当社ファンドに限らず投資一般に当てはまるものです。
※1 3つの投資原則につきまして、詳しくは以下をご覧ください。
ここでは、改めてこの3つの投資原則をおさらいしておきますと、「①徹底した分散投資」、「②ご自身のリスク許容度に合ったリスク・テイクと投資金額の設定」、「③コア・ポートフォリオを構築した上で、余裕資金の中の余裕資金を投資」になります。
当社ファンドの分散投資を徹底いただくことはもちろん、様々な金融商品へバランスよく投資していただくことがさらなるリスク分散につながり、その結果として、より安定したリターンを得ていただくことが期待できます。当社では、それが投資家の皆様にとって当社とのより長いおつき合いにつながり、”Grow Together” へ導くものだと考えています。
2. 2020年の運用部コメントの振り返り
さて、投資家の皆様が投資を行う一助となれるよう、私たち運用部はこの公式note「CROWD CREDIT」で積極的に情報発信を行っています。こちらの運用部コメントでは、当社ホームページよりも広い視野で、引き続き世界経済や各国・地域の為替等の市場動向などを分析する切り口でお伝えできればと考えております。
昨年、2020年の運用部コメントを振り返りますと、コロナショック直後には経済の中心地である米国市場の被った影響を分析し(※2)、その一方ではとくに為替に焦点を当てて、リスクを判断する指標となり得る指標として原油価格(※3)やIMFの公表するGDP成長率見通し(※4)をご紹介し、それとともに足元の市況を解説いたしました。また、世界経済の先行きを左右する指標として銅価格(※5)、金価格(※6)、そして先進国のハイイールド債利回り(※7)につきましてご紹介いたしました。
※2 詳しくは以下をご覧ください。
※3 詳しくは以下をご覧ください。
※4 詳しくは以下をご覧ください。
※5 詳しくは以下をご覧ください。
※6 詳しくは以下をご覧ください。
※7 詳しくは以下をご覧ください。
年が明けて2021年となっても世界経済の先行きを見通しづらいことには変わりありませんが、とくにこういった状況下ではちょっとした材料で新興国通貨が大きく売り買いされてしまい乱高下しやすいリスクがあります(※8)。その一方で、新興国通貨であっても特定の主要通貨(米ドルなど)との交換レートを一定に保つ「ペッグ」制度が導入されていれば、為替動向が安定しやすいこともご紹介いたしました(※9)。
※8 詳しくは以下をご覧ください。
※9 詳しくは以下をご覧ください。
為替には投機的な取引によって短期的に上下する性格もありますが、長期的なトレンドとしては各国・地域の有する地力の強弱を反映しやすいもので、さらにその地力は一朝一夕に激変をしづらい旨をお伝えしました(※10)。また、ファンダメンタル分析としては、コロナショック以前にも「Credit-to-GDPギャップ」を取り上げました(※11)。
※10 詳しくは以下をご覧ください。
※11 詳しくは以下をご覧ください。
3. 景気先行指数が示す足下の景気動向
このように、一口にリスクといっても、為替のみに限定した場合でも分析の切り口が様々にあります。ぜひ投資判断の一助としてご参考いただければ幸いです。もちろん、これまでにご紹介したもの以外にも、多くの指標やその見方があります。
ここではその一つとして、景気の先行きを示す指標である” CLI(Composite Leading Indicator)”をご紹介いたします。このCLIは、OECD(経済協力開発機構)が公表する指標で、「景気先行指数」と訳されます。OECDによると約6~9ヵ月後に景気が拡大しているか、それとも景気が後退しているかを予測する指標です。国・地域ごとに適切と考え得る経済指標を複数選択して計算されるもので、たとえば、日本の場合では、鉱工業出荷・在庫指数、貿易統計、預貸率、月間労働時間、中小企業売上、TOPIX株価指数および各種金利スプレッドを組み合せています。
経済指標の備える性格のひとつに、更新頻度があります。これまでにご紹介した指標を例に取ると、原油・銅・金などのコモディティ価格は日々・刻々と変化するため、常にその瞬間の情報を織り込む一方で、それらの価格だけをもとに長期的な予測を立てるのには向きません。数年後のコモディティ価格を予測するには、別の視点から、将来の需給を考える必要があります。一方で、IMFがGDP成長率見通しを更新する頻度は年4回なので、たとえばコロナショックの直後にそのGDP成長率への影響を確認することはできませんが、長期的にどの国の経済が成長しそうかを見通すのには向いています。このCLIには、複数の経済指標を組み合わせることで、更新頻度が短いものと長いものをうまく取り入れようという狙いが見て取れます。つまり、長期的な傾向を押さえつつ、足元で起こっていることも織り込もうというものです。
その狙いどおり、2020月3月時点(2020月4月発表値)のCLIにOECDが添えたコメントは「CLIがコロナショックの影響を十分に織り込めていない」という趣旨のものでした。それが直近の2020年11月時点(同年12月8日発表値)では、「各国がとる対コロナ施策の(各国経済に与える)影響をある程度は織り込めたものの、ワクチン開発の進展というポジティブなニュースは反映できていない」といったトーンに変わっています。
さて、OECD諸国36ヶ国の1981年1月から2020年11月までの平均CLIをプロットしたものが下図になります。
上のグラフをご覧いただくと、赤い丸で囲んだところが深く下がっているのがわかります。これらの背景にあった主な出来事を順に挙げると、第二次オイルショック、欧州通貨危機、リーマンショック、そして2020年のコロナショックです。
数字の意味するところは、100を大きく上回るほど「これから景気が拡大する」予兆が強く、逆に大きく下回るほど「これから景気が後退する」予兆が強い、ということです。決して「これから大きく景気が拡大する」とか「大きく景気が後退する」ということではなく、予兆の強さを示しているのに過ぎない点に注意が必要です。仮に現在、振り返って2015年が100で2016年が90だったとして(注:実際の値とは異なります)、「2016年は2015年よりも景気が悪かった」と考えるのではなく、「2016年は2015年よりも景気が悪くなる予兆が強かったのだ」と解釈するべき、ということになります。
これを踏まえて、先ほどのグラフを再度ご覧いただくと、足元では景気が後退する予兆が弱まっている、つまり、景気が底を打って回復へ向かい始める転換点が近づいているように見えます。今後、ワクチン開発の進展などを織り込むグラフがどのような動きを見せるでしょうか。ぜひ注目して確認してみてください。なお、2021年最初のCLI更新は1月14日、2月の更新は9日を予定しています。