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No.2 そこは選ばれ、奪われた
【個人アトリエ区画 itoとボスの会話】
ほんとにボスの面接はぬいぐるみとなんだな。ふわふわだ。
ちがう、本題だな。悪い、学芸員さん。
なぁ、ボス。ここに、共同アトリエの一角で、学校を開きたいんだ。
金も要らない、画材や資材と、あと場所だけが、ほしい。指導力はすべての生徒を俺が責任もってみるよ。もうひとり、手助けになる副担任、女性スタッフとのツテがある。まだ、教師歴は浅いが俺以上に優秀だし、信念も申し分ない。
ただ、全ての責任は何がおこっても私になるよう、名義を自分にしてほしい。子どもがおこしたことも、スタッフが起こしたことも。差し出せるのは私の命だ。臓器でもなんでも持っていけ。売ってくれ。
こどもを食い物にしようって?疑われても仕方ないよな。
このニュース、知ってるか。新聞には載らなかったがネットニュースとしては出てきたが、烏樟新聞のやつらは載せもしなかったよ。平等の精神が聞いてあきれる。
芸術街道のすこしはずれにさ、柳本交流会館があるだろう。
昔、あそこで許可もらって休日学校ってのをやってたことがあるんだ。市役所を何年も取り次いで、月に数日開放していた。
今の子ども経済状況を知ってるか。この不況だ。夢がみれない子どもが多いんだ。悟り世代やガチャで決まるから頑張っても意味がないなんていうけれど、私は、教師として、いや、大人として見過ごせないんだ。今は習い事だってできない子供がいる。進学だって諦めなきゃいけない子がいる。
…なんでわざわざ、地下の区画を使ってやるのかって?
あそこには子ども以外に老若男女様々出入りしていてね、「こどもの声がうるさい」って追い出されたのさ。決められた場所使っていても、声が少しでも聞こえたら、優雅にゲートボールや俳句が出来ないんだとよ。爆竹なんかならしてないし、建物内で収まる声だ。でも、騒音なんだとさ。
テレビで昭和の生活特集で自分たちが子供のころ公道で絵を書いたり、ヒモ縄跳びしたり、野球ボールをよそへいれて怒られる映像は懐かしむのに、まともに近くの公園であそんでいる子どもの声は「うるさい」「邪魔だ」というんだ。俺には理解できない。限度があるのはわかるか、過敏がすぎるとおもうんだ。
…だけど、使うのをあきらめたさ。いや、あきらめざる得なかったよ。残念がる子どもたちもたくさんいた。やっと、有志のボランティアの目途もついたところだった。そのくせ、蓋をあけてみたら、使ってるやつはいないし、散歩しているやつすらいない。その場所は交流場所から廃墟になった。
骨折り損さ。
俺の独りよがりかもしれない。でも、失敗も挑戦もできるのが子どもたちの特権だろ。それを大人が、しかもまっとうな判断ができるだろう人間が奪うだなんて、俺は許せない。だから、ボス、どうか検討してほしい。