戦後日本外交の、歴史的できごとの裏で 沖縄と日本を考える #547 を聞いて

 確かに沖縄は日本の都道府県で唯一県が丸ごとサンフランシスコ講和条約以降も米軍施政下で独立を回復の時取り残された、という状態である。

 しかし講和条約発効後1年程度で復帰した奄美群島、沖縄県の4年前に復帰した小笠原諸島もあり、小笠原では戦後父島の島民が故郷に帰れない期間も長く続いていた。硫黄島に至ってはいまだに帰れない。
 南樺太、千島列島の住民に至っては未だに彼らのふるさとは日本が施政権を行使できていない。
 これらの事実は住民の絶対数が少ないからと言って無視してよい事ではない。

 とはいえこれらの地域と比べ沖縄はマシかひどいかという議論するつもりもない。

 沖縄の現地の人々がどう思っているか、どうしたいかという思いを広めるのは重要であるが沖縄が一番、唯一の被害者だ、というわけではないという事実は当事者発信の情報でなく、間に立ってメディアが発信する場合は特に気を付けて行わないといけないのではないだろうか。

 藤田直央編集委員は本土では米軍基地なんて目に入らないというが、物質として目に入るから本土並みでなく、横田空域のように目に入らないものはカウントしないというのは一般庶民の感想として述べるのであればいいのだろうが、日本有数の新聞社の編集委員がその程度の認識でよいのだろうか。朝日新聞の本社築地近辺にはないから気づかないのかな?

 後半の外国の軍隊の基地があるのはいいのか、という彼の問いだが、国連安保理常任理事国のイギリスに米軍の基地があり、フランスもドイツ・フランス合同部隊のドイツ兵士が駐屯しているという現代の安全保障体制をこの方は何も理解していないのかな、と疑ってしまう。

 もしくは藤田さんの持論は外国軍の基地が嫌だから日本は単独で兵器、軍を丸抱えする軍事費大国として、西、北に加え東側の防衛も強化する永世中立国となるしかないという事か?
 しかしベルギー、ルクセンブルクは永世中立国であったが第一次世界大戦でドイツに侵攻され占領された事から、中立宣言したところでそれを守るか否かは相手次第なので侵略されない事を保証するものではないのだが。

 実体のある基地は首都圏に限っても横須賀市の横須賀基地、座間市のキャンプ座間、綾瀬市、大和市の厚木基地、福生市の横田基地のような自治体がある。
 さらに赤坂プレスセンターのように都会のど真ん中にヘリポートがある自治体もあり、沖縄の一般庶民が思っているほど東京近郊は米軍基地と無縁の生活ではない。

 基地問題で「沖縄には米軍基地の7割が」、というフレーズが報道される事が多い。しかし基地がない石垣島、宮古島や西表島等離島の住民が基地問題をどう思っているのかを報道するニュース、記事はほとんど目にしたことがない。

 問題を県単位を切り口で取り上げるのか、市町村単位にするのかどのような基準で記者は取材して記事にしているのかが気になる。

 新型コロナの感染対策が米軍基地経由で入国する軍人等に関してザルだった、というのは地位協定に日本の法を順守する事を云々という文言がありて米大使館、在日米軍司令部は東京にある。
 外務省、防衛省は頻繁にミーティングを行い日本の対策がどういう法的根拠で行われているか最新情報を詳しくアップデート、在米日本大使館の外交官、防衛駐在官は米側の対応の最新情報の取得等きちんと行っていたのか、怠っていたのかを検証しないのだろうか。
 特に懸念するのであれば官僚、大臣レベルでなく首相が大統領に対して話す事を何ら躊躇する事はないのにそのような動きは官邸側にあったのかも含めて。

 沖縄返還交渉時、地元の住民の反対がこれ以上強くなったら極東の根拠地を使えなくなる事を懸念したのもある、というのは交渉の下手な現代の官僚、政治家が交渉というものはどうすればよいかケーススタディとして学ぶべきであろう。


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