狂おしいほど美しいアンの言葉⑩・・・・・・それほど素晴らしいものではない実際の悲しみ
It’s all very well to read about sorrows and imagine yourself living through them heroically, but it’s not so nice when you really come to have them, is it?
(L. M. Montgomery. Anne of Green Gables. Standard Ebooks.)
悲しい物語を読んで、まるで自分が英雄のようにそのような悲しみを乗り越えていくところを想像するのはとても気分がよいものですが、実際にその悲しみを自分が経験するとなると、それほど素晴らしいものではないものですね。
〈アンの狂美ポイント〉
自分の置かれた境地が悲劇的でも他人事のように状況を理解する
〈この言葉の背景〉
「グリーンゲーブルズ」と呼ばれる家に養子として迎え入れられると思っていたアン。しかし、現実はそうではなかった。この家では男の子が求められていたが、何かの手違いがあって、アンが間違って来てしまったのだった。養子として迎え入れられないことを理解したアンは絶望の底に落ちる。その夜は何も食べられず、悲しみの中で眠りに落ちた。しかし、明けない夜はない。朝になって窓の外を見ると、その家をとりまく自然や風景の美しさに心を奪われる。しばらくすると、マリラ(後の養母)がやってきて朝食をダイニングで食べるように告げる。そして、食卓についたアンが発したのが上記の言葉だった。
〈周辺の原文〉
“I’m pretty hungry this morning,” she announced, as she slipped into the chair Marilla placed for her. “The world doesn’t seem such a howling wilderness as it did last night. I’m so glad it’s a sunshiny morning. But I like rainy mornings real well, too. All sorts of mornings are interesting, don’t you think? You don’t know what’s going to happen through the day, and there’s so much scope for imagination. But I’m glad it’s not rainy today because it’s easier to be cheerful and bear up under affliction on a sunshiny day. I feel that I have a good deal to bear up under. It’s all very well to read about sorrows and imagine yourself living through them heroically, but it’s not so nice when you really come to have them, is it?”
“For pity’s sake hold your tongue,” said Marilla.
(L. M. Montgomery. Anne of Green Gables. Standard Ebooks.)
「今朝はとてもお腹が空いています」と、アンはマリラが用意してくれた椅子に滑り込みながら告げた。
「どうやら世界は昨夜のように風が吹き荒れる荒野ではないようですね。晴れた朝はほんとうにうれしいものです。実は、私は雨の朝も大好きなんです。どんな朝でも興味深いものだと思いませんか。これから始まる一日に何が起こるかは知る由もありませんが、想像力の余地はたくさんありますからね。でも、今日は雨が降らなくてよかった。晴れた日のほうが、気分も明るくなり、苦しみにも耐えられるからです。私には耐えなければならないことがたくさんあるのだと思います。悲しい物語を読んで、まるで自分が英雄のようにそのような悲しみを乗り越えていくところを想像するのはとても気分がよいものですが、実際にその悲しみを自分が経験するとなると、それほど素晴らしいものではないものですね」
「お願いだから、黙ってちょうだい」とマリラは言った。
〈おことわり〉
原文の翻訳は編集部員によるものなので不正確かもしれません。
正しい訳は邦訳の出版物をご参照ください。