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yumboというバンドについて

はじめに

僕が最近ハマっているyumboというバンドについて、わかる範囲で解説を試みて、少しでも興味を持ってもらうきっかけになればと思ったので、こうして記事を書いてみた。
以下、人物に関して敬称略。

yumboとは

楽曲全体を手掛ける澁谷浩次を中心として仙台を中心に活動するバンド。極初期は即興演奏のスタイルを取ったものの、初代ボーカリストの加入とともに歌を活かした作曲へとシフト。即興演奏をルーツとする独自のタイム・ライン上にフレンチ・ホルンやユーフォニアムといった金管楽器が柔らかく響き、仙台という都市に根ざした風景を斜めに切り取ったような独特なポップ・ソングはベル・アンド・セバスチャンなどグラスゴーのインディ・ロックのようでもあり、またアウトするギター・フレーズやジャジーなピアノなど、時にラウンジ・リザーズのようなノー・ウェーブ通過後のフェイク・ジャズを想起させたり、一方でそのフォーキーでありながらも複雑さを持つアンサンブルはウィルコなどが引き合いに出されたりもする。

テニスコーツやマヘル・シャラル・ハシュ・バズといったバンドらと親交が深く、またドイツの名門レーベルMorr Musicからアンソロジーがリリースされるなど、海外の評価も高い。

ディスコグラフィ

yumboの録音は膨大な量の音源がCD-Rや配信でリリースされているが、オリジナル・アルバムとしては以下の4枚ということになる。(レーベルはリリース時のもの。現在はすべて7e.p.より)

小さな穴 (le petit trou) (2003 Majikick)

ファースト・アルバム。即興演奏とフリージャズからの影響を感じさせる、yumboというバンドの最もコアな部分が出ているアルバムであり、部屋鳴りを活かした録音もあってライブで顕になるガレージ・ロック的な攻撃性が見られるように思う。

明滅と反響(Flicker/Echo) (2006 Majikick, Igloo)

セカンド。4つの章に分かれた全16曲の大作。ライブの定番でもあるキラー・チューン「反響 (echo)」を収録。今作に限らず、澁谷は『レコードの一曲目はわくわくするような、買ってよかったと思わせるようなものでなければならない』という発言をしており、この曲はまさにそうと言えるだろう。全体のサウンドとしてはよりポップ・ソングとしての強度が増し、『うたもの』と言われるような作品としての聴きやすさがあるアルバムではないかと思う。

これが現実だ(That's Reality) (2011 7e.p.)

サード。ボーカルが交代し、またバンドとしては初の本格的なマルチ・トラック・レコーディングを導入するなど、もう一つのファースト、あるいは第二期の始まり的な捉え方もできる作品。大量のゲストの起用などもあり、比較的ラフだった前2作と比べるとあくまでより作品然とした、完成度が高いアルバムと言える。

鬼火 (2016 7e.p.)

フォース・アルバム。2022年現在の最新作にして最高傑作といえるだろう。2枚組オリジナル・アルバムとしてはスマッシング・パンプキンズの『メロンコリーそして終わりのない悲しみ』にも匹敵する名盤。3.11と紐づけて語られることも多いが(事実、仙台のバンドとして影響は小さくなかったと思うが)、どちらかというと仙台という都市に根を張り歌い続ける中での『変わらないものはない』という無常観がたまたま震災という大きな出来事に重なったようにも聴こえる。工藤冬里(マヘル・シャラル・ハシュ・バズ 他)やMC Sirafu(片想い、ザ・なつやすみバンド 他)といった豪華なゲストの中、現行ギタリストである皆木大知の心地よくフリーキーなフレーズが耳に強く残る。2枚組というボリュームでありながら聴き疲れをさせず、またただ曲が多いというだけではないトータリティを感じさせるアルバム。

(あくまで個人的な)おすすめとしてまず聴いてほしいのはセカンド『明滅と反響』かフォース『鬼火』かなと思う。サードの『これが現実だ』はより強くうたものを希求する人におすすめ。『鬼火』が『メロンコリー』なら『これが現実だ』は『ペット・サウンズ』的か。そのくらい言っていいクオリティではある。一方でファースト『小さな穴』は少しコアなので、他の作品が気に入ったら、ということでも良いかもしれない。もちろん、気になるならまとめて買っても損しないし全部聴いたらいいとは思う。

また、この4枚に関してはyumboの公式Bandcampからライブ・テイクをオリジナル・アルバムと同じ曲順に並べた編集盤というものが出ており、そちらも買うと2倍楽しめるのでファンになってしまったという人にはおすすめ。

その他の主要な音源、アイテム

編集盤、ライブ音源などで代表的なもの。

間違いの実(The Fruit of Errata) (2021 Morr Music)

独Morr Musicからのワールド・リリースとなった編集盤。オリジナル・アルバム4枚プラス・アルファから選曲されており、ベスト・アルバムと言っても概ね差し支えはないだろう。CDとアナログ盤がリリースされているが、アナログの方が3曲多いのでできればそちらを。実際に購入していないので確信が持てないが、おそらくは配信もアナログ準拠。

live at guggenheim house 09082018(2020 Igloo)

『結成20周年記念公演「実在する世の中」塩屋篇』として旧グッゲンハイム邸で行われた公演をフルで収録したライブ音源。前述のアルバム再現盤など、yumboのダウンロード音源はどうしてもマニアックなものが多いが、今作に関しては時期、選曲、演奏と揃ったもう一つのベスト盤として薦められるものだと思う。「蛇からの手紙」など新曲も収録。

いくつもの宴 (multiple banquets 1998─2021) (2021 Igloo)

DVD2枚組、6時間というサイズで収録された映像で観るyumbo。ここまで来るとファン・アイテムというよりももう研究資料のようなレベルではあるが、いい映像がたくさん入っており手元に置いておいて損はしないと思う。最初期の即興演奏から3.11直後に避難場所のカフェに集っての演奏、上記の結成20周年公演に最新の録音の模様などあらゆる角度からyumboが楽しめる2枚。

最後に

この記事はあくまで『最近ハマって聴いている』くらいの人間が書いたものなので、結成から来年で25年というバンドを紹介するには足りない部分も多いと思う。とはいえ、その長いキャリアの中で残してきた名曲の数々を考えればあまりに知られていないし、一方で音源の多さからどう聴いていいかわからないという人もいるのではないだろうか。そういうおせっかいのもとに書かれた記事である。一人でも多くの人に、一曲でも多く聴いてもらえ、何か耳に残るものがあればそれに勝る幸せはない。

投げ銭してくれると小躍りしてコンビニにコーヒーを飲みに行きます。