最近 2022/06/02
ムーンライダーズのマイ・ブームが止まらない。結局『moonriders』〜『A.O.R.』までで抜けているところを全部注文してしまった。ほんとはサブスクにないあたりから注文すればいいのだろうが、聴いてガツンときてしまったので仕方ない。サブスクは試聴機。
実はというほどのこともないが、大昔に『A.O.R.』と『TWIN BEST』を手にしたことがあって(今でも手元にあるか不明なくらい昔の話)、嫌いじゃないけどそこまでは……みたいになっていた頃がある。なので「9月の海はクラゲの海」とか「スカーレットの誓い」こそ好きだけどオリジナル・アルバムはほとんどまともに聴いたことがない、みたいな感じだった。その後はどちらかというと、はちみつぱい時代や鈴木慶一とムーンライダー"ス"なんかを聴いては今ひとつピンとこないなと思っていたのだった。その後もリアルタイムの新譜である『MOON OVER the ROSEBUD』などを聴いたりしつつ、結局あがた森魚の1stが一番かっこええな……と思いながらたまたま安く入手した『イスタンブール・マンボ』を聴いたらあまりにも良く、『カメラ=万年筆』でノック・アウトされたという流れ。
この遠回りが悪いことだったのかといえば、『イスタンブール・マンボ』なんかはカクバリズム的(逆だが)なサウンドが馴染んだ今聴いてこそという気もするし、『カメラ=万年筆』のがむしゃらな勢いをそういうものとしてハマることができたのはこの歳だからこそ、という気もする(この辺りの感覚はこの前に聴いていたSyrup16gとも近い)。わりと僕はこういうときのめぐり合わせを信じる方というか、相手と自分が噛み合う瞬間というものはあるものだ。たとえ録音物だったとしても。
とはいえ、ムーンライダーズというバンドのわけわからなさは聴けば聴くほどに増すような思いもある。たぶんやはり『The BandとXTCをかけ合わせたようなバンド』というコピイが最も近いのだが、そんな化け物がオーヴァーグラウンドでうごめき続け、2022年にもくるりに負けないような新譜が出たという事実にくらくらする。正直意味わからん。
NRQ『こもん』を聴く。中尾勘二(ex-コンポステラ)絡みのアコースティック・アンサンブルということしか知らなかったのだが、今回はまさかの杉山明弘(from DOIMOI)がゲスト参加してメタル・ギターをぶちかましていると聴いて慌てて注文した。
件のゲスト参加曲「SEIBU TRAIN」はとんでもないことになっていて、いや、納得というか一番かっこいい形はこうだろうけど、実際にやるやつがあるか……という、なかなか衝撃的なものだった。このインパクトを差し引いても、なんだかんだソウル・フラワー・ユニオンが一番うまく引き継いだと思っていた篠田昌已的なレガシーにはこういうモダンな解法があったということを教えられた思いで心の底から感動した。
yumboなどもそうだが、日本なりのオルタナ・カントリーとでも言うのか、アコースティック・トラッド・アンサンブルのユニークさに目を向けてみるとなかなか面白いものがある。どのブックオフに行っても置いてある『あまちゃん』のサントラには大友良英関係だけではなくチャンチキトルネエドも関わっているし、一方で篠田昌已や大熊ワタルは英レコメン・シーンまでタッチするような人脈もある。アヴァン・トラッドが世界をつなぐというのだからどこか痛快な話だ。
yumboのギター、皆木大知氏のプレイが好きなので彼がやっているinochiというバンドも聴いてみた。
「職業飛行士」がそれはもう名曲。人脈もありyumboには確かに近いが、もっとプリミティブな感情の発露が見える、ように思う。それこそラウンジ・リザーズ的というか、脱臼したプログレみたいなギターのフレーズもたっぷり堪能でき満足。
演奏の充実度ではテニスコーツのMinna Kikeruにあるこちらの音源もアツい。
また世の中の流行りについて行けなくなるのだろうが、それでいいのだ。
投げ銭してくれると小躍りしてコンビニにコーヒーを飲みに行きます。