
2025年春節を台湾で過ごした
(表紙の写真は鹿港天后宮)
春節と聞くと、「中国人のインバウンドが日本に来て爆買いする時期」と思ってしまう。日本人の脳裏にはこのようにインプットされてしまっているが、本来春節(日本人は「旧正月」という言葉をよく使う)とは、中華圏の人たちにとって、故郷に戻り、ご先祖と土地の神様を祀り、家族と団欒する時である。
私は、妻が台湾人のため、毎年の春節は台湾で過ごしている。我が家には日本の正月と台湾の正月、つまり正月が年に2回もある。日本の正月休み気分が解消されて社会復帰したとたん、再び正月モード(という名のダラダラ・・)が始まる。考えてみるとこれほどぜいたくなものはない(笑)。
春節のことを日本人は「旧暦の正月」と呼ぶが、旧暦のことを台湾では農暦と呼ぶ。その正月(「初一」)は、2025年度は1月29日。春節にどんなことをしているのかメモ風にまとめてみた。
「除夕」
初一の前日、すなわち大晦日を「除夕」という。除夕は忙しい。
まずは午前中に春聯を貼る。これは午前中でなければならない。

続いて家の仏壇に、ご先祖と神様に対する食事を備える。
これがまた豪華だ。
仏壇は、窓の外を向くように置かれる。玄関を入ったらすぐに仏壇が来客者を向いていることもある。家の中で一番良い場所を堂々と占めるのが台湾の仏壇だ。

食事を供えた後、家族はしばらく何もしないでゆっくりする(もちろん各家によって違いがあります)。なぜなら、ご先祖様が食事している時間だから。
そしてお年玉。台湾では赤い袋にいれるので「紅包(ほんぱお)」と呼ぶ。
日本では、大人が子供からもらうが、台湾では子供が成長すると、親に紅包を渡す。その額は日本の感覚だと驚くほど高い(これも個人差があります)。

「初一」
いわゆる元旦。この日は家族で初詣・・のはずだが、みんな家でのんびりしていたので、私たち夫婦は台北市のど真ん中にある行天宮に行ったが・・。
人が多すぎて大変だった。参拝客に対して様々な政治の訴えなどがあるのも日本と同じ。地元の人は、お詣りの後に裏の池の鯉を見るのが習慣みたい。というか、台湾のお寺(寺廟)の裏には、なぜ池があるのだろう。

「初二」
この日は「回娘家」。つまり結婚した女性が実家に帰る日。基本的には旦那と子供も一緒に連れて帰る。厳密にこの習慣が守られているかはさておき、基本的に「嫁」は夫の家に入るので、かつての女性は実家に帰る機会が少なかったのだろう。
今も「回娘家」の習慣はあるのか。独身女性の中には、この日に実家に帰るのを避ける人もいるとか。「まだ独身か?いつ結婚するのだ?相手はいるのか?」攻撃を避けるためだという。
「舞龍舞獅」
台湾というか中華圏の春節の楽しみは獅子舞だ。台北でも初一、初二頃に、各地で獅子舞が見れる。台北市内だと大きな百貨店の玄関などで、初売りの際に獅子舞が舞っている。

獅子舞といえば、数年前に中国で「雄獅少年」(日本の題名は「ライオン少年」)というアニメ映画があった。これは面白かった。広東の田舎町で過ごす少年チュンが獅子舞を通じて成長する話だが、彼の父が広東の街の建設現場で出稼ぎし、大けがをする。チュンは、家族を支えるため、大好きな獅子舞を諦めて都会の建設現場に出稼ぎに行く。超高層ビルが立ち並ぶ大都会を背景に、中国の伝統である獅子舞を踊るシーン・・・なんだか、現代中国の驚異的な経済発展が生み出した社会矛盾などを痛烈に描いているのではないか‥ついつい評論家っぽくなった。
(日本語版「ライオン少年」のプロモ映像)https://www.youtube.com/watch?v=49Ztut47AF0&t=17s
紙銭を燃やす
台湾を歩くと、よく家の軒先などに、カンが置かれている。外国人観光客がたまに「ごみ箱」と間違ってしまうので注意が必要だが、これはご先祖様や神様に対して紙銭を燃やす大切なもの。紙銭は日本では冥銭と呼ぶらしい。

爆竹
大きな音で魔物を追い払うためらしい。というか音が大きすぎる。しかも突然、昼夜を問わず、場所を選ばず爆竹が鳴り叫ぶ。夜中になったら雷が近所に落ちたか!と思うし、街中だと「テロか!」と体がフリーズする。「台湾人は驚かない、そのうち慣れる」とかいうが、集中して本を読んでいる時、後ろから声を掛けられたらビクッとするだろうが!それと同じ。
正月明け
初節が明けて初出勤。今年は2月3日だった。
この日は会社やビル毎に、玄関前で祭壇を組み、社員や従業員総出で土地の神様にお参りをする。銀行や証券会社といったカタい会社だと、スーツを着た従業員が玄関前に並び、一斉に手を合わせている。

来年に向けて
春節は、来年度の春節の計画を立てる時でもある。家族で食事に行くレストランの予約と、私たちのような海外からの帰省者は飛行機チケット購入に走る。けっして早くはない。