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「『推しの子』みたいな漫画をつくってよ」無茶ぶりされた編集者が出した答え


「小山さん、『推しの子』みたいな漫画をつくってよ」

ある日、社長から呼び出された私は、こう言われました。とっさに、「わかりました」と答えてしまったものの、果たしてどうしたものか。漫画は好きだけれど、編集経験はまったくない。何から手をつければよいのかさっぱりわからない。

考えあぐねた私は、ある人に相談することにしました。
それが、『漫画ビジネス』の著者である、菊池健さんです。

菊池さんはもともと、前職で私と一緒に働いていたのですが、のちに一般社団法人MANGA総合研究所という漫画専門のシンクタンクを設立するなど、私の知る限り最も漫画について幅広い知識を持っている方でした。

私がいまの状況を一通り話し終えると、菊池さんは少し考えてからこんな話をしてくれました。
「『裾野広ければ頂き高し』という、ちばてつやさんの言葉があって。漫画家がたくさんいて、あらゆる種類の作品が生み出される環境が発展するほど、面白い作品ができて業界が発展するという意味なんだけど……」

私は初めて聞くキーワードに、編集者としてのアンテナがピンと立ちつつ、そのまま菊池さんの話を聞き続けます。

「つまり、『推しの子』のようなヒット漫画は、つくろうとしてもすぐできるわけじゃないということ。たくさんの漫画家がその出版社で描きたいと思ってもらえるような土壌を10年、20年かけて整えていく覚悟があるかどうかが重要だと思う」

覚悟か……。私にそこまでの覚悟があるのだろうか、とあらためて自分に問い直しました。

そして、久しぶりにお会いしたこともあり、お互いの近況などを話しているうちに、菊池さんが「本を書いてみたい」という気持ちがあることがわかったので、その日話してもらったことを中心に本を書いてもらうことになりました。

こうして生まれた新刊『漫画ビジネス』は、あらゆる人に楽しんでいただける本になったのではないかと思っていますが、とくに私のように漫画づくりの経験はないけれど、仕事として漫画をつくりたいと思っている人に読んでいただきたい一冊です。

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