連載【6】 5歳と1歳の育児中の専業主婦が刺繍教室を始めることになった閃きとは?
その日は夫も仕事が休みで家にいたので、すぐに階段を駆け上がって勢いよく言った。「ねー、私、刺繍の先生になる!」
夫はポカンとした顔で「何それ?どうしたの?」みたいな返事をした。それは当然の反応だと思う。そもそも私は手芸関連の仕事をしたこともなかったし、夫と知り合った頃は楽器メーカーに勤めていたから「エレクトーンの先生になる!」の方が自然だったであろう。だけどその時の私は夫の反応など全く関係なく、すでに先の自分を見てワクワクしていたのだ。
突然降ってきたようなこの閃きがなんだったのか? 「天から降ってきた」とか「天使の囁き」だとか適当なことを言っていたが、本当は自分の潜在意識がそうさせたのではないかと考えている。
小学5年生の時のホームルームで、将来の自分について紙に書き、それを窓側の席から順に発表することがあった。男子はプロ野球の選手や医者、会社員なんかが多かったし、女子はお花屋さんやケーキ屋さん、旅行家なんていう子もいた。50年以上経った今でもあの教室の風景を鮮明に覚えているのは不思議である。私は廊下側だったから順番が来たのは最後の方だった。自分の番が来た時立ち上がって、少しドキドキしながらこう言った。「私はなにかの先生になります!」
明日に続く…