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アニロックスロールのセル容積の測定

アニロックスロールのセルが保持できる単位面積あたりのインキ量すなわちセル容積を測定する方法にはいくつかあります。アニロックスロールの発展に伴い、その測定方法も発展してきました。ここではその代表的な測定方法を紹介します。

(アニロックスロールの代表的な彫刻方法については下記の記事(セクション4)を参照して下さい。)



1. 数式による計算

かつて単純な機械彫刻が主流だったころは顕微鏡を用いて測定したセルの各寸法から計算によって容積を算出していました。彫刻方法が改良され、セルの形状が複雑になってきた現在では、この方法を用いて正確に容積を計算することが難しくなってきています。

2. 液体体積法

液体体積法は、量が分かっている一定のインキ(一般的には25μl)をアニロックスロールの表面に滴下し、ドクターブレードで可能なところまで押し広げた後にそれを紙に押し当てて転写し、転写されたインキの面積からアニロックスロールのセル容積を計算するものです。インキはセル表面の粗さやセルの構造が許す限り押し広げられるという原理に基づいています。

この方法自体は正確なものでしたが、一連の手順つまり、インキを垂らし、ドクターブレードで押し広げ、紙に転写して面積を求めるという手順において測定者間で個人差が生まれ、測定結果に差が出やすいという課題がありました。その後、転写専用のフィルムやインキを押し広げるためのハンドローラーなどが開発され、個人差を抑制するよう改良がなされています。

3. 垂直走査干渉計測法(Vertical Scanning Interferometry)

最も正確なのは干渉走査装置を使用した測定方法です。この装置では、セルの表面やセルの内壁に反射した光から距離が測定されます。カメラの視野にあるセルを3次元方向に毎秒5,000回もの速さで走査し、そしてコンピューターへ送られたデータからプログラムによってそれぞれのセルの容積と平均値が算出されます。その正確さは、アメリカの旧国立標準局(現国立標準技術研究所)のテストで誤差が0.03%以内であると認められる程でした。

ただし、こうした装置は一部の先進的なアニロックスロールメーカーに導入されているものの、多くの印刷会社にとっては非常に高価で導入が困難なものでした。従って多くの場合、これらの印刷会社ではアニロックスロールが入荷される際にメーカーから提供される測定値と、社内で行われる液体体積法のような別の測定方法で得た測定値との対応表を作成しています。その後、ロールの使用とともに定期的な測定を行って初期の測定値からの変化を観察することで、ロールの摩耗具合を判断しています。

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この他にも、これらを改良した様々な測定方法や機器の開発が行われています。例えば、弊社で取り扱っている「AniCAM」は光学顕微鏡を走査させて得た2次元画像から容積を求める装置です。これはまた別の記事にて説明したいと思います。

参考資料:

・FLEXOGRAPHY: Principles & Practices 5th Edition, Foundation of Flexographic Technical Association, Inc., 1999, p75-76

・The history of Anilox volume measurement, Troika Systems Ltd., 2017 

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本記事は、執筆者が知りうる限りの情報に基づき、可能な限り正確を期して執筆しておりますが、内容を完全に保証するものではございません。実際の生産に適用される場合は、各サプライヤーへご相談下さい。また、本記事の内容は予告なく変更・訂正される場合がございます。

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