事業承継対策が苦手な税理士さんのサポート記録③ ~税理士が後継者の選定に関与するべきなの?~
はじめに
前回は、事業承継のコンサルティング経験があまりない田中税理士に、次のことを説明しました。
社長はなぜ事業承継対策の検討をしたくないのか
社長に事業承継対策のスタートを決断させる方法
事業承継対策が苦手な税理士さんのサポート記録➁ ~社長に事業承継の話を切り出す方法~
今回は、社長が事業承継対策の検討をスタートさせる気持ちになった段階で、次のstepである「後継者の選定」について、税理士としてどのように関わるかということをご説明いたします。
□■□■第3回のコンテンツ■□■□
後継者選定が事業承継において、最優先・最重要課題であることを社長に説明する
後継者候補について、税理士は第三者として客観的な意見を述べる
後継者選定が事業承継において、最優先・最重要課題であることを社長に説明する
<解説>
事業承継対策を検討する場合、まず最初に「自社株をどのように渡すのかとか、税金はどうするのか?」ということをイメージされる方が多いと思います。
もちろん、それも重要な検討項目ですが、事業承継対策において最重要かつ最優先課題は、後継者を選定することです。
それをご理解いただくためには、会社を起業した時のことをイメージしてください。
会社には、新しいサービスや技術、営業力、それを支える事務、人事・総務など、発展をしていくために重要な要素がたくさんあります。
しかし、その中でもっとも重要なことは、社長が誰であるのかということです。
どんなに優秀な技術者、営業マンがいても、それらの人々をまとめ、会社の舵取りをしたり、様々な経営判断をする人がいなくてはなりません。
それが、社長です。
それをご理解された上で、事業承継に当てはめてみましょう。
事業承継を後継者が新規に創業したと考えればいかがでしょうか。
そうすると、後継者が会社の舵取りをして、会社を発展させるという重要な役割を担います。
つまり、その重責を果たすことができる人を後継者として選定することが必要だということです。
【税理士の役割】
税理士さんは、後継者選定の重要性を社長にご理解いただくことが必要です。
多くの社長は、経営をしていることが楽しいので、「事業承継対策をしなくてはならない!」と言いながら、なかなか着手しないものです。
そこで、税理士さんは、会社を担う後継者を早期に決めて育てることの重要性を社長に説明し、背中を押しましょう。
社長が後継者候補と考えていても、実際に後継者としての修行を始めると、社長のお眼鏡にかなわないことや、また後継者候補が、自分は社長には向いていないと断念する場合もあり、後継者が本当の意味で社長になるのには時間がかかるものです。
そういう話は、親族では、なかなか言い出せないものなので、第三者である税理士さんから、説得していただくと効果があります。
後継者候補について、税理士は第三者として客観的な意見を述べる
<解説>
同族会社の場合、社長は、自分で興した会社、先代から引き継いだ会社を、どうしても子供に引き継ぎたいという気持ちになるのも当然といえます。
しかし、だからといって、社長の子供だからという理由だけで後継者にするという判断は、正しいとは言えません。
また、同族会社の場合、社長の子供が2人以上入社している場合、社長の長男が後継者になるというのが、一般的です。
もし、次男が社長になる場合には、社長としては相当に大きな決断がいるものです。
なぜなら、その場合、次男が長男よりも優秀であることを、世の中に発表することになるからです。
つまり、社長としては、自分の子供たちの経営能力を基準に後継者で決めていない場合があるということです。
【税理士の役割】
社長に後継者候補を教えていただき、その判断基準が、経営能力を基準としたものなのか、またそれ以外の理由で、例えば、長男だからという経営能力以外を理由としているのかを社長に確認することが大切です。
もしも、経営能力以外を基準としている場合、そのような後継者がこれから会社を担っていけるのかどうかを、社長にもう一度判断していただくことが重要です。
社長は、子供に会社を継いで欲しいという想いが強いものの、本当にその
判断は経営者として正しいのかどうかという気持ちで揺れ動いているもので、その相談を親族や経営陣にすることは難しく、第三者に相談したいと考えていることも多いものです。
そこで、信頼できる第三者として、税理士が相談に乗ることは、後継者の選定上、とても意義があることです。
また、後継者選定は、正解があるわけではないので、税理士は自分の意見を述べるだけでよく、「誰が後継者に相応しいのか?」と税理士が悩む必要はありません。
いかがでしたでしょうか。
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