株価対策のリスク①
株価対策は、事業承継対策に必須ではありません。
事業承継対策では、後継者の選定や育成・株主構成や取締役構成・社内体制の整備など、検討すべきことはたくさんあります。
ただ、経営者のみなさまが、事業承継対策を検討される場合に、まず株価対策への取り組みを最優先事項とイメージされることが多いと思います。
そのようにイメージされるのは事業承継対策のセミナー、書籍、税理士・銀行などからの経営者の皆様への提案などに「事業承継対策には、株価対策が必要」とされていることが多いことも、その一因でしょう。
確かに、株価が高い会社の場合、贈与税・相続税や自社株の買取資金など後継者の資金負担は大きいため、それに対する準備を検討する必要はあります。
しかし、まず大切なことは、それらの必要資金を準備することです。
必ずしも、不動産を取得したり、持株会社を作るなどの行為で、資金の額を意図的に減らすという株価対策を行わなければならないということではありません。
株価対策をすることの意味
ここで、株価対策をすることの全体像を俯瞰してみましょう。株価対策を実施する会社・社長・後継者だけでなく、税務当局も含めてイメージしてください
株価対策を行うこと=後継者の負担を減らすこと=節税ということです。
したがって、税金を減らすだけの目的で株価対策を行った場合、税務当局のお咎めがあるというリスクがあることは、ご理解いただけるのではないでしょうか。
株価対策を行うということは、税務リスクにチャレンジする場合もあるということなのです。
株価対策についての税務当局の考え方
同族会社の場合には、経営方法について社外の株主から意見をされることがなく、節税が行いやすい環境にあると考えられており、節税を防ぐために次のように法律に定められています。
【同族会社の行為又は計算の否認(法人税法 132条 を再編)】
同族会社の行為又は計算で、これを容認した場合には法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められるものがあるときは、その行為又は計算にかかわらず、税務署長の認めるところにより、その法人に係る法人税の課税標準若しくは欠損金額又は法人税の額を計算することができる
わかりやすくご説明しますと、同族会社の場合、法人税の負担を不当に減少させる結果となるような対策を行った場合には、税務署長が正しいと考える方法で、法人税の計算を再度行うとした規程です。
つまり、例えば不動産を取得して株価が下がる対策を行ったとしても、それを税務当局は認めないケースもあるということです。
「法人税を不当に減少させる」という部分、この不当の基準が難しいところです。
例えば、製造業の会社が生産力を向上させるために土地を取得して工場を建設したとします。
これは、営利を追求する会社経営において通常行われることであり、仮に工場取得の結果、株価が下がったとしても、税務当局から前述のような指摘があるとは考えにくいものです。
しかし、投資目的だけの不動産を取得して、大幅に株価が下落した場合には、前述の「同族会社の行為又は計算の否認」に該当する可能性もあります。
もちろん、投資も会社の事業だという主張もあるとは思いますので、この判断はケースバイケースです。
いずれにしても、株価対策目的のみの行為なのか、企業が利益をあげるための行為の結果株価が下がったのかということが重要なポイントになります。
安易に株価対策を行った場合の経営への影響
株価対策が否認された場合、税務当局の指示に従って納税を行うことが必要となることはもちろんですが、それ以外にも会社にとってはデメリットがあります。
「節税」額が大きい場合には、メディアで報じられることがあるでしょう。
特に、地方都市の場合には、地元の皆様にそのような事実を報道されるとお取引先との関係、新入社員の採用などに影響があるでしょう。
また、社内でも後継者・社員からの不信感が生まれる可能性もあります。
失った信用を回復するのには時間がかかります。今後のデメリットは大きいのではないでしょうか。
どのような準備をするのが正しいのでしょうか
株価は企業の業績や世の中の景気(日経平均株価)などに影響を受けるものですので、ずっと右肩上がりというわけではなく、下がる局面も訪れます。
株価が下がったタイミングをうまく利用することで、後継者が負担する税金や自社株の買取資金などが減るケースもあります。
将来の事業計画や世の中の景気など、さまざまな要素を検討し、株価が下がるタイミングを予想することが正しい株価対策と弊社は考えています。
詳細につきましては、【これならわかる株価算定】でご説明させていただいております。
また、株価対策も含めて事業承継対策についてのご相談は弊社websiteの、お問い合わせページよりご連絡頂ければ幸いです。