日本人ムスリマの年末年始の過ごし方
~習慣と文化とその間(Living as Muslimah in Japan 6)
ムスリムの人たちは、日本の年末年始をどう過ごすの?というご質問も、
この時期になると良くいただきます。
「ムスリム」とひとくくりにすると、大きな枠になってしまうため、
「国や地域や習慣や、人によって違います」としか言えないのですが、
基本的にそれぞれの母国では、新しい年=お正月を祝うということはないのではないのでしょうか。
なぜならムスリムにとっての「新年」は、
イスラム暦のラマダーンが明けた、翌月のシャッワール1日、
つまり「イード」がそれにあたるからです。
(それはそれは、盛大に行われることは、こちらにも記した通りです)
多民族国家の場合は、宗教も様々なので、
新年を祝うところもあるでしょう。
けれど、ムスリムの一般家庭では、特別なお祝いはないと思われます。
イスラム教徒が多数を占めるパキスタンに2年前に行った際、
新年のカウントダウンと主要都市での花火の打ち上げがあり、
それをテレビで各社が放送しておりましたが、
なんとそんなのはその年が初めてとのこと。
商業主義だ、こんなの不自然だ・・・という声を、
打ち上げ花火を見ているその場で聞きました。
(ただそれだけで、新年だから何か特別なイベントがあるわけでも、
食事があるわけでもありません。いたって普通の日々でした)
このように国によっては「商業的イベント」として、
行われることもあるのかもしれません。
さて、前置きが長くなりましたが、本題。
日本人ムスリマである私は、
お正月をどのように過ごすのかということについて、お話します。
もともと普通の(?)日本人でしたので、
年末になればお餅つきを行い、紅白を見て、初詣に行く。
お節やお雑煮を食し、お年玉をもらい、親戚一同に会して祝う。
そんな子ども時代~結婚までを過ごしております。
だから、新年は祝って当たり前であり、
それをなくすのは、なんともさみしいし、切ないことです。
ですから、日本の文化的行事として、
これらをしっかりと、今の家庭でも残したい、
子どもに経験してもらいたいと思っているのです。
【お餅つき】
年末のお餅つきは必須!実家に帰ってみんなでつきます。
お餅はのしたり、鏡餅にしたり。
つきたてのお餅に、あんこや大根おろしをまぜて食べるのも、
毎年の楽しみです(^^)
※おもちは、ハラール。杵や薄にアルコールがつく心配もないですし。
つきたてのお餅の好き嫌いはあるかもしれませんが、あんこやきなこなどの甘いものが好まれますね。
イベントとしてやったら面白いと思いますよ。
【初詣】
除夜の鐘を聞いたら、初詣・・・はしません。
これは、宗教的意味合いが出てくるので、アウト。
初詣はせず、我が家は、「初行き」をします。
たいてい、子どものころから行っている地元の神社。
鳥居はくぐらず、参拝の長い人の列をよけて、
狭い境内をうろうろします。
おみくじを引いたり、絵馬を書いたりもいません。
お守りも買いませんし、もちろん破魔矢も買いません。
ただ、その場にいて、見て、新年の雰囲気を味わうのみ。
時々寒い境内でたき火を焚いて、自治会の方が甘酒をふるまっています。
その時は成分を聞いて、
アルコールが全く入っていないものと分かった時だけ、いただきます。
これだけでも、結構「参加」した気分になるので、楽しいです。
【お雑煮&おせち料理】
お雑煮を食べて、おせちもいただきます。
あ、お屠蘇は飲みません!
実家の家族も私たちの食生活については熟知しているので、
食事で困ることはありません。
きちんと「食べられる」お雑煮、おせちです。
集まってきた親戚と会食の時に、
今では会食のメニューにパキスタンのカレーやビリヤニなども出して、
親戚に喜んでもらってます(^-^)
【お年玉】
昔はもらうほうだったお年玉も、今はあげる方なので、
きっちり人数分用意して、親戚の子どもたちにも渡してますよ~。
もらうのも大歓迎です(笑)
※子どもたちは、イードの日には「イーディ」というお年玉をもらうので、
なんと年に2回、お年玉チャンスがあるのです。
(その代わりうちには絶対、サンタは来ません。)
ついでに書くと、紅白も好きな歌手が出るとこだけ一応見ますし(笑)、
気が向けば福袋も買い行きます。箱根駅伝の応援にも行ったりします
(コースが近いのです。これも私的にお正月の風物詩)。
「ムスリムだから祝えない、祝わない」ということではなく、
日本人ならではの文化や習慣を大切にして、
ムスリムとして大切なことは守っていく。
そういう過ごし方をしています。
きっと、日本にいらっしゃるムスリムの方も、
日本風のお正月や年末年始の雰囲気を、
楽しんでいらっしゃったのではないでしょうか。
これから新年会などを開催される企業などもあるかと思いますが、
お酒の場にムスリムは誘えない・・と最初から決めてかからず、
まずはお誘いの声かけ、お願いいたしますね☆
声がかからないと、結構さみしいものですよ~(涙)
(どうするかは、本人が判断しますので!)
※ どこまでが文化で、何に宗教的要素があるかって、
そういう見極めが日本文化って実は結構、大変だったりします。
そのあたりのことも、イベントごとに書いていきますね。
※ この記事は、2017年1月17日執筆したものを、修正して掲載しています。
~From Crossbridge~
現場・職場に外国人(ムスリム)を受け入れを考えている皆さまへの
対応研修を承っております。知らない、分からないをなくせば、
受け入れも、受け入れ後のコミュニケーションも、円滑になるでしょう。
すでに在職されているムスリムの方々へのフォローやサポートも可能です。ぜひご相談ください。
お問い合わせはこちらより
~About Crossbridge~
Crossbridgeについて
ムスリム対応についてのご相談・プロデュース
対応や文化・習慣についてのセミナーや研修
and more...
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?