中毒総論 P788
A 中毒とは
・中毒:生体内に吸収された化学物質,またはその代謝産物によって正常な生体機能が障害されること
・中毒起因物質(中毒物質):中毒の原因となる化学物質
・中毒症状:中毒物質によって生じる生体機能の異常
・中毒に含めないもの
■病原性微生物の感染やその産生した毒素によるもの
■ヒスタミン中毒
・急性中毒
■化学物質が生体内に吸収されてから比較的短期間で中毒症状を生じる場合
■急性中毒の傷病者が救急搬送される機会は多い
慢性中毒:化学物質が比較的長期間にわたって生体内に蓄積して中毒症状を生じる場合
B 中毒物質
1 中毒物質とは
・公益財団法人日本中毒情報センターにおいて2018年に電話で受信した,問い合わせの多い中毒物質
■もっとも問い合わせが多い:家庭用品
■次いで:医療用医薬品および一般用医薬品を含む医薬品
問い合わせの多い中毒物質
出典:へるす出版 救急救命士標準テキスト 改訂第10版
https://www.herusu-shuppan.co.jp/997-2/
・公益財団法人日本中毒情報センターにおいて2018年に電話で受信した,問い合わせの多い家庭用品
■最多:たばこ
■次いで:洗剤,化粧品,文具・美術工芸用品の順に多い
家庭用品で問い合わせがあった中毒物質
出典:へるす出版 救急救命士標準テキスト 改訂第10版
https://www.herusu-shuppan.co.jp/997-2/
・公益財団法人日本中毒情報センターにおいて2018年に電話で受信した,問い合わせの多い家庭用品以外
■最多:医療用医薬品および一般用医薬品ではともに中枢神経系用薬
■工業用品:炭化水素類(ガソリン,灯油)などが多い
■自然毒:シュウ酸含有植物(ポトス,クワズイモなどの観葉植物)などの植物毒が多い
■農業用品:殺虫剤が多い
家庭用品以外で問い合わせの多い中毒物質
出典:へるす出版 救急救命士標準テキスト 改訂第10版
https://www.herusu-shuppan.co.jp/997-2/
2 小児(5歳以下)の中毒物質
・もっとも多い:タバコ
■次いで:乾燥剤・鮮度保持剤
■次いで:芳香剤・消臭剤・脱臭剤
・灯油などの石油製品やボタン電池・コイン型リチウム電池:重篤な中毒症状が発生し得ることに注意が必要
5歳以下の小児における家庭用品の中毒物質
出典:へるす出版 救急救命士標準テキスト 改訂第10版
https://www.herusu-shuppan.co.jp/997-2/
3 高齢者(65歳以上)の中毒物質
・もっとも多い:乾燥剤・鮮度保持剤
■次いで:芳香剤・消臭剤・脱臭剤
■次いで:入れ歯用洗剤
・入れ歯用洗剤や紙おむつなど,高齢者特有の中毒物質が存在することも特徴
・高齢者の中毒は発見が遅れやすく,医療機関への入院が必要となる場合が多いことに注意が必要
65歳以上の高齢者における家庭用品の中物物質
出典:へるす出版 救急救命士標準テキスト 改訂第10版
https://www.herusu-shuppan.co.jp/997-2/
4 中毒死の原因となる中毒物質
・医薬品による中毒死
■もっとも多い:向精神薬
・医薬品以外の中毒死
■もっとも多い:一酸化炭素
中毒死の原因として多い中毒物質
出典:へるす出版 救急救命士標準テキスト 改訂第10版
https://www.herusu-shuppan.co.jp/997-2/
5 毒物(毒薬)と劇物(劇薬)
・劇物(劇薬)
■少量で50%致死量(LD50)に達する中毒物質
■93品目の化学物質を劇物(毒物及び劇物取締法)
・毒物(毒薬)
■さらに少量(微量)でLD50に達する中毒物質
■27品目の化学物質を毒物(毒物及び劇物取締法)
・特定毒物
■9品目(毒物及び劇物取締法)
■とくに毒性の強い中毒物質
・習慣性医薬品:習慣性・依存性が高く乱用されやすい医薬品
・労働安全衛生法:中毒物質として64,000以上の化学物質が公表されている
・医薬品医療機器等法:医薬品に関する毒薬,劇薬,習慣性医薬品を定めている
・現代においては,医療関係者がすべての中毒と中毒物質を知っておくのは不可能
■現実的な戦略:救急現場においてしばしば遭遇する急性中毒の特徴と中毒物質に関する知識を得ておくことである
C 病態生理
1 吸収
・中毒物質の量が多い場合
■吸収は速く
■中毒症状も強い
・中毒物質の状態:気体(ガス)>液体>固体,の順に吸収が速く,中毒症状は強くなる
・中毒物質の吸収経路別:経静脈>吸入>経口>経皮,の順で中毒物質の吸収が速く,中毒症状は強い
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