四肢外傷 P747

A 疫学

・外傷のうち
■上肢の外傷:約23%
■下肢の外傷:約40%

・上肢外傷,下肢外傷ともに20〜60歳に多く

・男性が約2/3

・四肢外傷単独の場合,重症度は高くない

・全外傷死亡者数
■下肢の損傷の死亡数,頭部外傷(約47%)についで2位(約16%)
B 病態
1 骨折

①骨折の種類

・骨折:骨組織の連続性が失われた状態

・骨折の原因のほとんどは強大な外力が働いて発生する外傷性骨折
■開放骨折:骨折部が創を通じて外界と交通しているもの
■閉鎖骨折:そうでないもの
・日常的な外力によっても生じる特殊な骨折
■病的骨折:骨粗鬆症や骨腫瘍などによって力学的に弱くなった部分の骨に発生
■疲労骨折:スポーツなどにおいて,通常では骨折に至らない程度の外力が繰り返し作用した際に発生する骨折,

②骨折の合併症

・骨髄や周辺組織からの出血

・骨折部周辺を走行する血管や神経の損傷

・骨髄からは持続的な出血が起こる

閉鎖骨折

・出血量の推定
■下腿骨骨折では約500〜1,000mL
■大腿骨骨折では1,000〜2,000mL


出典:へるす出版 改訂第10版 救急救命士標準テキスト


必ず覚えるのじゃよ

・ある程度のタンポナーデ効果が期待される

開放骨折

・タンポナーデ効果が作用しないため,出血量はさらに増える
・創を通じての細菌感染によって骨膜炎や骨髄炎をきたす可能性が高い
・骨折端が骨の近傍を走行する血管を損傷すれば,出血量はさらに増加
2 脱臼

・脱臼:関節を構成する2つの関節面の相対的位置関係が破綻した状態

・亜脱臼:関節面の接触が部分的に保たれている状態

・脱臼(完全脱臼):完全に失われている場合

・脱臼では関節を支持する関節包や靱帯の損傷を伴うことが多い

膝の構造


・多くの場合,関節部の変形が明らかで,強い痛みを伴う

・周囲を走行する神経や血管が障害を受けることがあるため,早期の整復が望まれる

・脱臼骨折:時に関節を構成する骨の骨折を合併

3 筋肉・腱損傷

・筋肉・腱の挫傷:直達外力によるもの

・筋肉・腱の断裂
■介達外力
■下腿三頭筋(アキレス腱を含む),大腿屈筋群,大腿四頭筋などに多い
■筋肉・腱の完全断裂では,損傷筋の収縮による関節運動が不可能になる
4 捻挫

・外力によって関節が生理的な可動範囲を越えた動きを強制された際に発生する靱帯の損傷

・軽症の捻挫:靱帯の過伸展ないし不全断裂にとどまる
・重症例:靱帯の完全断裂や靱帯付着部の剝離骨折をきたす

・損傷された靱帯の周囲に激しい痛みと腫脹,時に血腫が出現

・適切な治療がなされない場合:靱帯の治癒が阻害され,関節の不安定性を残すことがある

5 血管・神経損傷

・血管・神経の損傷は,脱臼や骨折の合併症として発生するだけでなく,刺創などの穿通性外傷や,打撲挟圧などによる圧迫によっても発生

・血管と神経は並走していることが多いため,両者が同時に損傷されることが多い

・穿通性外傷で太い動脈が破綻すると大出血を起こす

・四肢外傷による死亡の多く:大腿動脈の破綻による出血が原因

・打撲や挟圧外傷:動脈の機械的閉塞,あるいは血管内膜の損傷に伴う血栓形成により末梢肢の急性阻血を起こす

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