災害医療体制 P232

・災害医療
■多数の傷病者が発生し,傷病者数に対して医療資源が圧倒的に不足した状態
■いかに少ない医療資源で最大多数の人々を救命するかが重要

救急医療と災害医療の相違

出典:へるす出版 救急救命士標準テキスト 改訂第10版
https://www.herusu-shuppan.co.jp/997-2/

A 災害の概念
1 災害の定義

・災害:自然現象や人為的原因によって,人間の社会生活や人命に受ける被害

・医療上の災害:傷病者数(医療需要)が治療対応能力(医療供給)を上回り,適切な対応が困難となる事例

・その地域内の通常の救急医療体制(医療機関、消防機関など)では対応できない多数の傷病者が発生した場合

・災害対策基本法:災害対策の根幹の法律

2 災害の分類

災害:主に発生原因により,①自然災害,②人為災害,③特殊災害に分ける


出典:へるす出版 救急救命士標準テキスト 改訂第10版
https://www.herusu-shuppan.co.jp/997-2/

過去問でも災害種別が問われてるわよ

①自然災害

・自然災害:自然現象に由来する,いわゆる“天災”であり,地震,津波,台風,竜巻,火山噴火,土砂崩れ,雪害,洪水や干ばつなど

・代表的な自然災害
■阪神・淡路大震災:犠牲者6434人
■東日本大震災:犠牲者1万8428人
■西日本豪雨:犠牲者263人

②人為災害

・人為災害:何らかの人為的要素が加わって発生する災害

・代表的な人為災害
■明石花火大会歩道橋事故:死者11人、負傷者247人
■JR福知山線列車脱線事故:死者107人、負傷者562人
■地下鉄サリン事件:死者12人、被害者6300人

③特殊災害

・特殊災害:放射線事故や有毒化学物質の漏洩,生物化学兵器によるテロリズムなどのCBRNE災害

④その他の分類

・発生原因以外での分類:短期型と長期型という被害・影響の継続性に基づく分類,局所型と広域型といった被災地域の面積に基づく分類,都市型と地方型といった被災地域の社会性,人口密度や道路網,建物の構造などに基づく分類などがある

・福島第一原子力発電所事
■複合型災害(自然災害,人為災害さらにCBRNE災害でもある※放射線被害の拡散に伴う、広域型かつ長期型、地方型の災害といえる)
3 マスギャザリングにおける災害

・マスギャザリング:限定された地域において,同一目的で集合した多人数の集団
■代表例 大規模な花火大会,コンサート,各種スポーツ競技会など

・疾病や傷病が発生する可能性が高まる

・疾病発生の危険因子 ■気象条件,■環境,■アルコール許可など

B 多数傷病者対応
1 CSCATTT

・CSCATTT:あらゆる災害に体系的に初期対応するための活動原則

・まずは CSCAの確立が優先

・災害医療のTTT”つまり“Triage,Treatment,Transportation”が強調されてきたが,これら実際の活動TTT医療支援項目)が円滑に実施されるには,CSCAの確立が必須

災害に体系的に対応するための活動原則(CSCATTT)

出典:へるす出版 救急救命士標準テキスト 改訂第10版
https://www.herusu-shuppan.co.jp/997-2/

2 最先着隊の活動

・CSCAの確立:災害モード(多数傷病者対応)

・CSCAが確立するまでは,実際の救護活動(TTT)を開始しない

・METHANE:現場から迅速に報告すべき情報内容を整理したもの

災害初動時に現場から報告すべき内容(Mメタン ETHANE)

出典:へるす出版 救急救命士標準テキスト 改訂第10版
https://www.herusu-shuppan.co.jp/997-2/

3 指揮命令と連絡調整

・指揮命令系統の確率が最重要

4 安全

・安全確保:すべての活動に優先

・3S
■self 自分(救助者・救護者)
■scene 現場
■survivor 生存者(傷病者、要救助者)
☆優先順位も上からの順

・3Sが担保されなければ、救護活動を行わないのが原則

・現場の安全確保:災害の種類や発災場所,時刻,天候などを考慮したうえで,区域管理(ゾーニング),警戒区域と危険区域の設定を行う

・区域管理(ゾーニング)
■警戒区域:実際の現場活動行う場所
■危険区域:災害現場直近の活動範囲
■救急隊や医療チームを含め救助者は,自分の安全を守るためにも個人防護具(PPE)を着用
■自分のPPEが現場の危険性(ハザード)に見合うものと判断されるまでは危険区域には入らない
■可能な限り早期に、汚染検査(スクリーニング)実施

災害現場におけるゾーニングと傷病者の動線

出典:へるす出版 救急救命士標準テキスト 改訂第10版
https://www.herusu-shuppan.co.jp/997-2/

5 情報伝達

・災害対応に失敗するもっとも大きな要因が情報伝達の不備

・災害現場で活動する機関(消防,警察,医療機関,行政など)は,機関内における情報伝達手段を確保しておくのは当然として,他機関との情報伝達手段の確保,構築も必要である

ここから先は

5,230字

¥ 400

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?