大手企業相手の営業手法「エンタープライズセールス」を解説します
※本記事は各業界の営業の方々が日替わりで記事を投稿していく、「営業アドベントカレンダー」という企画の投稿です(3日目を私が担当)
昨日はスタートアップ営業のジェイさんの投稿で、本日はスタートアップとは正反対のエンタープライズ営業についての記事(笑)
様々な営業に関する記事が投稿されるのは、まさにこの企画の醍醐味ですね。
自己紹介
改めまして、佐藤@エンタープライズセールス(@satoryo23)と申します
日本ヒューレット・パッカードに新卒で入社し、7年間製造業向けの法人営業をしておりました。その後、セールスフォース・ドットコムに同じく法人営業として転職し、現在在職8年目になります
私のアカウント名にも”エンタープライズセールス”とある通り、前職時代はトヨタ・パナソニックの担当営業をしており、現在も関西圏の売上数千億円〜数兆円のエンタープライズ企業を担当する部署に所属しております
10数年間エンタープライズ企業相手に営業活動をしてきたこの経験が皆様のお役に立つかなと思い、初めてNoteを書かせて頂くことになりました
エンタープライズセールスとは何か?
大企業相手にどのように営業活動を進めていくのがよいのか?
最近巷で流行っているThe Model型セールスと比較をすることで、分かりやすく解説できればと思います
1. エンタープライズセールスとは
1-1. エンタープライズセールスの定義
さて、エンタープライズセールスってどういう意味でしょうか?
一般的には、
と、言われているかなと思います
もちろん答えとしては間違えではないのですが、私としてはエンタープライズセールスは1つの営業手法と捉えており、以下のように考えています
まぁ、一言で言うと「深耕型」の営業手法ということです
私も現在担当している顧客は5社程度です。このように担当社数が多いわけではないので、「この企業がダメだったら次!」という訳にはいきません。
日々の営業活動では1社からのLTVをいかに最大化するかという意識を持っております
1-2. エンタープライズセールスの特徴とは?
実際の営業手法を解説する前に、エンタープライズ企業、いわゆる大企業を相手にした営業活動の特徴をあげてみます
一言で言うと、「リード数が少なく、商談期間が長い」
つまり”提案チャンスが極端に少ない”のがエンタープライズセールスの特徴です
この少ないチャンスをものにするためには、
・1通のメール
・1回の訪問
・1つの提案書
販売活動全てにおけるクオリティを超絶高めないといけません
ここがエンタープライズセールスの醍醐味でもあり、難しさでもあると感じています
3. The Modelとの対比で見る、エンタープライズセールス
3-1. The Modelはエンタープライズ企業にも有効?
今巷で流行っている営業手法The Modelがありますが、果たしてエンタープライズ企業にも有効なのでしょうか?
The Modelを提唱している会社に所属していながらこう言うのも肩身が狭い気がしますが、答えは「No」です
※The Modelを知らない方は本や記事・Blogが山ほど転がっているので検索してみてください
今の会社で7年間The Modelを実践・体感してきました。SMBレンジにはこの分業/協業モデルは有効だと感じましたが、エンタープライズ企業には不向きというのが私の結論です
理由は以下の図の通りで、目的が全く正反対の手法だからと言えます
では2つの営業手法を解説していきます
3-2. The Model型セールスは“絞り込む”営業手法
The Model型セールスは「1つの案件を効率的に刈り取る」ことを目的としています。そのために大きく網を張っておき、見込みある顧客・商談を徐々に選別していくやり方をとっていきます
①認知拡大
まず起点は名刺情報の獲得です。ここではHP、広告やイベント等のマーケティング施策を実施し認知をできるだけ「多く」獲得していきます
②見込客選定
その獲得した名刺情報を元に、インサイドセールスが電話したり、メルマガを打って相手の反応を見ながら自社製品を買う見込みがある客を「選別」していきます
③商談対応
さらにその選別した見込み客から提案機会、つまり商談を生み出せるかどうかを判断していきます。ここは「営業」が単独で提案活動を行なっていきます
④契約
最後はご契約頂き、定着支援部隊やサポートチームに引き継ぎます。ここでこの顧客への販売活動は「終了」となります
<まとめ>
このように、認知獲得→見込み客→商談→契約と、営業活動が進むに連れて顧客数が「絞り込まれていく」のがTHE MODEL型セールスの特徴です
3-3. エンタープライズセールスは“拡大していく”手法
一方でエンタープライズセールスは特定の会社からLTVを最大化させることを目的として営業手法で、1つの会社内の人脈やタッチポイント、契約を「拡大させていく」ことを目的としています。
①特定
The Model型はいかに「多く」の認知を獲得することからスタートしていましたが、エンタープライズセールスは逆に「提案する企業を特定する」ことから始めます。
大企業はインバウンドマーケティングでなかなか引っかからないため、手紙やDMなどのアウトバンド型アプローチを取らざるを得ません。ここでは100社、200社に一括で同じ情報を届けても響くことはないため、まずどこの企業を今期狙うかを絞り込むことから始まります
手紙を大企業に送り、ダメだったら同じ手紙をまた別の大企業へ、、、
とやっている営業の方がいたら、まず特定することから始めましょう
②拡張
The Model型では有望な見込み客を絞り込んでいましたが、エンタープライズセールスでは「むしろ広げて」いきます。
【1-2】で記載した通り、大企業は合議制で意思決定に多くの人が関わります。狙っていた大企業のキーマンから資料請求が来たとして、その一人のキーマンだけの力では稟議は通すことはできません。
なので、役員や上司、現場部署、情報システム部、調達部、経理部など、あらゆる部署の人に会い、会社の優先順位や課題を様々な角度から確かめる必要があります
見込客から「すぐに商談作りたい!」という気持ちをグッと堪え、そこから人脈を「拡張」させていくことがこのフェーズでは重要になります
③関係構築
さぁ、ここでやっと提案機会、商談を作ることができました。
The Model型では「営業」が単独で対応するのですが、エンタープライズセールスはここでもやり方が違います。
大企業の購買担当者は数千人や数万人が使うものを選定するわけなので、慎重にならざるを得ません。よってあらゆる情報を集めようとし、その真偽を確かめようとします。ですので、営業一人が言うことを信じない傾向があります。
そこで重要なのは「タッチポイントを広げていく」ことです。SNSやイベント、メルマガ、HP、顧客訪問、、、等々、あらゆるチャネルを使って同じメッセージを配信していきます
営業がキレイな費用対効果の資料を作り「効果あります!」と言うより、セミナーに来て頂いて別のユーザー企業の役員から「うちも使っているけど、これめちゃくちゃいいよ」と、一言言ってもらう方が100倍効果あったりします
営業一人でなんとかしろ!と言われていたら、組織を見直すことをお勧めします
④展開
エンタープライズセールスは契約が始まりです
1部署で使って頂いたら、隣の部署でも使って頂くように「契約を広げて」いきます
そのために重要なのがファン作りです。導入して効果が出れば導入担当者は社内で褒められ昇進をするかもしれません。そうなれば別部署に紹介をドンドン行なってくれ、勝手に社内営業をしてくれるようになります。
自社商品/サービスのファンになってもらうためにも、導入後の定着支援や活用支援は営業活動の一貫として捉えるくらいの強い意識を持つ必要があります
<まとめ>
このように、企業特定→拡張→関係構築→展開と、営業活動が進むに連れて関わる顧客数が「拡大されていく」のがエンタープライズセールスの特徴です
4. まとめ
いかがでしたでしょうか?
私もこの違いを理解していない時期があり、
・多くの企業を担当しようとしたり
・すぐに商談を作ろうとしたり
・営業一人でやろうとしたり
・売りっぱなしになったりと
失敗続きで全く成果が上がらない時期がありました
この違いを理解できてから成果が上がるようになったので、少しでも皆様の営業活動のお役に立てば嬉しく思います
今回は概要でしたので、次回以降はエンタープライズセールスの各プロセスを深掘りした記事を書きたいと思っています
最後に
社員数が多い大企業の変革は社会の変革に直結するものだと思っております。ただ一方で大企業病という名前がある通り、古い文化や大きい図体が変革を妨げているのも事実です
社内の力だけでは変革は難しく、変革には外部からの良い刺激が必要不可欠です
その良い刺激が私はエンタープライズ営業だと思っております。今回書かせて頂いた内容は営業手法でもありますが、私は大企業が変革を行うためのステップだと思っています。
もがき苦しんでいる大企業の方達が優秀な営業と出会い、1歩でも企業変革に踏み出せるようになればと願っており、その手助けを微力ながらさせて頂きたいと思っています。
初Noteで書き慣れないところもありましたが、ここまで読んで頂き有り難うございました!!
(2024年11月2日追記)
本の出版
長らく次回の記事を放置していて申し訳ございませんでした。
書こう書こうと思っていたら、いつの間にか本記事からもう5年も経ってしまいました。。。
ただ、この期間何もしていなかったわけではなく、ここで書いた理論の実行と検証をずっと繰り返しておりました。その結果、このチームとして輝かしい成績を5年連続で出し続けることができ、この理論が1つの成果として実を結んだと実感できました。
理論と現実は違う。
「佐藤さんの言っている概念は分かるけど、明日から何をしていいか分からない」
中にはそんなメンバーもいて、結果を出せずにチームを去っていくメンバーもいました。
その度に自分の教え方やこの理論を見直し、何十回とチームメンバーに対してトレーニングを行いエンタープライズセールスのプロセスやマインドを体系化・仕組化し続けて参り、自分として一つの型が完成をしたと思うことができました。
また、このNoteで書いたTheModelとの対比をした三角形の図を至る所で見かけるようになり、私の担当のお客様からもエンタープライズセールスに対してのお問合せをよくいただくことも増えました。
自分の経験で世の中に貢献できることがであればしたいなと思い、今までの私のエンタープライズセールスの経験を本にまとめることを決意いたしました。
構想から約1年、24年11月20日に翔泳社から出版をすることになりました。
この記事の続編をお知りになりたい方は是非本を手に取って頂ければと思います。
出版記念イベント
出版同日に出版記念イベントも開かれることになりました。
ご興味ある方は是非ご参加ください!!
https://event.shoeisha.jp/slzday/20241120