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キャラクター設定としての1ハウス
✴︎ 生まれた瞬間からある「自分」
ホロスコープは自分が地球上に生まれた瞬間の空の様子を写真のように切り取ったものです。その瞬間に生まれた「自分」を表すポイントが東の地平線であるアセンダントで、そこから始まる1ハウスは自分と共に東の地平線から世に昇ってくるエネルギーを表しています。
言ってみれば、自分もまた星のような存在で、日の出に太陽が昇ってくるように、生まれた瞬間、自分という星が地球上に顔を出し昇ってきたところを想像してみてもいいかもしれません。
✴︎ ホロスコープが描く小説の主人公とは
生まれた瞬間から自分が身に纏っているエネルギー、それがアセンダント、1ハウスです。そのエネルギーは社会の何物にも抑圧されていません。そこから自分という物語が始まるのですが、その物語が小説だとすると、主人公=自分のキャラクターが生まれた瞬間に設定され、1ハウスに表されていることになります。そのキャラクターを元にストーリーが展開していくのです。
小説の作者はその物語の核となる主人公のキャラクターを思い描きます。不屈の精神のキャラクターを描きたかったら、何か困難な状況を起こさないことには描けません。快楽主義のキャラクターを描きたかったら、そうなりうるような環境が必要でしょう。
つまり、1ハウスというのは生まれた瞬間から備わっているキャラクター、個性であると同時に、人生で起こる数々の出来事によって、その性質がより強固になっていくものなのです。逆に言えば、生まれた時からそのキャラクターのエネルギーを身に纏っているため、その性質を象徴するような事象を引き寄せます。
主人公は1ハウスのレンズを通して世界を見ることになります。それはすなわち、主人公が元々持っている基本的な価値観や美学にもつながります。
例えば、ドナルド・トランプはアセンダントが獅子座の最終度数にあります(天体は入っていません)。本人の生まれ持った華やキャラクター、何かと王者に祭り上げられるような人生のみならず、発言、振る舞い、価値観にも獅子座のキーワードがふんだんに垣間見えます。獅子座のルーラーの太陽は社会的頂点や権威を示す10ハウスにあります。1ハウスの生まれ持ったキャラクターは、人生の中でまさにこんなふうに体現されていきます。
✴︎ 1ハウスの天体は自分の鏡
なので、1ハウスの意味するところはとても大きいです。人生で起こりがちな出来事が示されていると言っても過言ではないのですから。
これは、1ハウスに天体が入っている場合はより顕著に思われます。1ハウスの天体のようなキャラクターにさせるため、その天体が象徴するような出来事が人生の中で執拗に起こってくるからです。逆に言えば、1ハウスの天体のエネルギーを生まれながらに纏っているため、その天体を象徴するような事象を引き寄せるのです。
それは幼少期から始まり、一生涯続くのかもしれません。そのため、1ハウスの天体というのは常に自分について回っているような感覚があり、全てのハウスに影響するとも言えます。
もちろん、1ハウスに天体のない人も多いので、その場合はアセンダントのサインが同じことを示します。ですが、そのサインが象徴する事象を引き寄せるという点においては、1ハウスの天体がもたらすほどヴィヴィッドな出来事ではないかもしれません。天体の影響はサインより色濃くなります。
1ハウスに入っている天体が土星以遠の天体(天王星、海王星、冥王星。トランスサタニアンといいます)の場合、人にない魅力を持ったキャラクターなのですが、起こってくる事象を取り扱うのが非常に難しくなります。これらの天体が象徴することは個人レベルを超えたことで、自分でコントロールできないからです。そして、土星もまた、試練をもたらすともされる天体なので、努力や責任を要するような困難さがあることには違いありません。でも、土星はセルフコントロールできます。
これらの天体が1ハウスにある場合、その天体のことをしっかり把握して、それは自分自身が持っている性質でもあるので、ポジティヴな面を生かし、ネガティヴな面に引っ張られないためには何に気をつけたらいいか、十分に理解しておくことが助けになります。
✴︎ 1ハウスの天体の例として
特に1ハウスに一つの天体が単独で入っている場合は、生まれながらにしてその天体そのもののような自分が現れます。その天体の特徴だけがワイルドに働き、より顕著な影響になるので、その天体のことをしっかり把握することが大切です。
1ハウス土星では、大谷翔平さんが検証されている出生時間だとこの配置になりますが、高校時代のノートなどを見ると、社会的成功への志やセルフコントロールの塊のようなところが実に1ハウス土星らしい感じがします。
一方、吉星とかベネフィックと呼ばれる(個人的には、あまりそういった考え方はしていませんが)木星、金星のような天体が1ハウスに入っている場合もあります。
特に木星は運の良さや拡大を表す天体なので、確かに1ハウスに木星が入っている人を見ると、何かしらトントン拍子で若いうちから有名になっているような人が多いように見受けられます。しかし、この場合も気を付けることがあります。運の良さや得すること、恵まれた出来事にあぐらをかき、それを乱用したり、努力しないまま過ごしてしまうことです。
1ハウス金星では、渡部建さんのホロスコープが、公表されている出生時間だと1ハウスに金星が入っています。人当たりの感じの良い印象や、起こってきた事象(芸人の中で見た目でチヤホヤされる、快楽主義やグルメになりうる環境、女性陣♀に囲まれた謝罪会見、まさかの縁起物として結婚式に担ぎ出される、美人妻など)を思うと、確かに金星が象徴する出来事、キーワードではあるので、やはり1ハウス金星らしいなと思います。
他に1ハウスに金星が入っている例として、「最愛王」と呼ばれ放蕩家だったフランス国王ルイ15世とその最後の公妾デュバリー夫人が共にこの配置を持っています。まさに、よくも悪くもアイデンティティ(1ハウス)として金星の恩恵を受け、濫用もしてしまった特徴が表れているのではないでしょうか。
✴︎ 自分というパワーの絶大さと、見逃されがちな「天体」
1ハウス=生まれながらの自分であり、そのパワーは計り知れないほど大きいです。前述したように、そのキャラクターに沿った人生が展開していくからです。
占星術を学んできて、これだけはできるだけ若いうちから知っておきたかったと思うことがあります。一つ目は、月にタイトなハードアスペクトがある天体、二つ目は、土星が入っているハウス/カスプが山羊座のハウス、そして最も知っておきたかったのが1ハウスの天体についてです。
アセンダント/1ハウスは外見的な特徴も表します。ですが、「外見」とか「第一印象」など表面的なことにあまりにもフォーカスされすぎていて、また、アセンダントのサインのみがフォーカスされすぎていて、ここで述べたことの影響の大きさに気づかないまま、自分に何が起こっているか全くわからないまま、自分が何者かわからないまま、のっぴきならない状況に陥っていることがあります。
1ハウスに入っている天体の影響がわかっていれば、自分の身を振り返って自分を知り、何に気をつけたらいいか、最低でも心に留めておくことができたのに、と思うのです。