あたたかい くろに つつまれたい
まっくらでなにもみえない。
がやがやしてる、声が外で聞こえているようだけど、わたしのまわりの空気はしんみり。
さむい、暖房から離れた窓際にいるはずなのに、密閉された空気があったかい。
あしが地面についているようで、なんかふわふわ浮いてるようなきがする。
あたたかい。
まっくろ。
生きてるなあって思う。
なぜかとても懐かしい気持ちになる。そんな昼下がり。
私は幼稚園児から小学校低学年のとき、誰にも気づかれずに黒いカーテンの中でぼ〜っとする習性があった。
音楽室や理科室にある、真っ黒で中身が真っ赤のあのカーテンにくるまっているだけの誰にも邪魔されない、と〜っても甘美な時間。
その影響だろうか?
黒という色に包み込まれるような優しさをおぼえる。
「黒は暖かい色です」と仮に言ったとして、理由を尋ねられたら
「なりたての炭は真っ黒だけど熱がまだ残っていて、ほのかにあったかいから」と答えるし
「全ての光と熱を優しく包んでくれる色だから」とも説明できる。
私は、黒という色が好きだ。
なにより、他のどんな色よりも安心できる。
ブラックホール。は言い過ぎだけど何か壮大なものを感じる。
塗装された金属やプラスチックを想起させる無機質さと
なりたてのあたたかい炭とか、おにぎりを優しく包んでミネラルを供給してくれる海苔みたいな有機的さを兼ね揃えた色。
私は
黒づくめで古風な姿で恐れられながら
自分が使える魔法を人間界に還元していって、
「魔女さま」と呼ばれてつつましくありながらも、豊かに生きてみたい。
あるいは
チェスの黒の女王みたいに
毅然としていて気高く、クールな佇まいでいながらも
世界の隅から隅まで、圧倒的な行動力をもってとびまわりたい。
そして、人間の息吹の気配がなく暗い、
つめたいようで、とてもあたたかい場所で誰にも気がつかれずに。
静かに。
消えていきたい。