8th Wall 商用利用時のメモ
この記事は WebXR ( WebVR/WebAR ) Advent Calendar 2022 の12日目です。
はじめに…そもそも8th Wallとは?
8th Wallとは高度なWebARを実現するプラットフォームです。
私もここ数年お世話になっており、幾つかのプロジェクトでは商用利用しました。
独断と偏見で恐縮ですが、
長所
iOS/Androidの標準ブラウザで高度な6DoF WebARコンテンツを提供可能
Three.js、A-Frame、Babylon.js等に対応した豊富なサンプルプロジェクト
Web上で高度な開発が出来、プラットフォームとしての完成度が高い
短所
とにかく価格が高い
商用利用の規約で曖昧な部分がある
WebARなのでアプリに比べてどうしても体験が劣る部分がある
といった感じです。
今年はNianticに買収されて廉価になることが期待されていました。
確かに個人開発向けに廉価なプランが追加されましたが、むしろ商用利用についてはハードルが上がってしまい、注意点も増えました。
今回は、実際に商用利用する際の注意点をメモとして残したいと思います。
商用利用プランの価格体系
月額費用とCommercialライセンス
Starterプラン(12ドル)やPlusプラン(59ドル)は個人や小規模の開発者に提供されていますが、今回は商業利用にフォーカスしているのでProプランで説明します。
まず、Proプランを用いてプロジェクトを商業利用で公開するためには
Proプラン(月々の課金)129ドル~
Commercialライセンス(1カ月単位の課金)3000ドル~
の二つの費用が発生する事に注意してください。
Proプランは開発・検証・アカウント維持のために必要になるベースの契約で、2022/12現在で月々129ドル、年間契約で99ドルになります。
しかし、このProプランだけでは、プロジェクトをDemoライセンスやNon-Commercialライセンスなど、いわゆる非商用目的でしか公開できません。
開発したプロジェクトを商用利用するのであれば、Proプランとは別にCommercialライセンスの費用が1カ月3000ドル発生します。(ちなみに3カ月の利用で10%、6カ月の利用で15%のディスカウントが効きます。)
このCommercialライセンスは商用利用するプロジェクトの公開期間中は必須であり、課金は1カ月単位(早期に終了してもその分の割引は無し)で発生します。
ちなみに、14日間のProプランのフリートライアル中にCommercialライセンスを適用しようとする場合、フリートライアルを終了してProプランの課金開始が必要になります。
なお、企業向けのEnterpriseプランもあり、こちらはセールスに連絡すると価格表が提示されます。Proプランに比べるとかなり高額ですが、プロジェクト毎の費用が発生しないため、常に多くの8th Wallプロジェクトを抱える企業にはメリットがあるかもしれないプランです。
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Commercialライセンスの注意点
規約がかなり曖昧
規約を読んでみると、色々注意点がある事に気が付くと思います。
https://www.8thwall.com/terms
特に、サブライセンス不可、譲渡不可の部分などは、「ベンダーが顧客から8th Wallでのコンテンツ開発を委託され、8th Wallの契約をベンダーが行った場合はどうなるんだ?」といった疑問点が湧くと思います。
この辺りは組織によってケースバイケースの色合いが濃いので、8th Wallへの確認をお勧めします。
(私も8th Wallの担当者と直接Webミーティングでやりとりし、自分のケースであれば問題ないと了承をもらいました。)
Commercialライセンスの有効期間
カード支払時の翌月同日同時刻まで
前述しましたが、Commercialライセンスは1カ月毎の支払いです。
この期間は重要で、より具体的にはクレジットカードで課金した瞬間から翌月の同日同時刻までがComemrcialライセンスの1カ月間の期間になります。
例えば2月15日17:00開始なら、3月15日16:59まで有効と考えてください。
8thwallの施策を行う場合、実施期間を1カ月ギリギリで設定すると、この実施期間直前で有効化する必要があるなど面倒くさいことになるので、若干余裕を持って短めに設定するなど工夫が必要です。
なお、Commericalライセンスが有効になると、デフォルトは「1カ月単位の自動延長」になりますが、「今回の支払い期間で終了」という設定の選択肢もあるので、用途によって使い分けて下さい。
間違って自動延長3000ドルは怖い…!
Comemercialライセンス終了後のプロジェクト
再度活性化はCommericalライセンスのみ
Commericalライセンスが終了したプロジェクトは、非活性化されてワークスペースに残ります。ここで重要なのは、再度活性化したい場合にはCommericalライセンスしか設定できない点です。例えばDemoライセンスやNon-Commercialライセンスなどで再度プロジェクトを有効にしようと思っても出来ません。
プロジェクトのクローンは可能
ただし、非活性化されたプロジェクトをクローンすれば、URLはオリジナルとは別の物が発行されますが、同じ内容のプロジェクトをDemoライセンスやNon-Commercialライセンスなどで動作させることは出来ます。
8th Wallを安く使うには
Palan社のプランが安いが注意点も
8th Wallのパートナーとなり、自社のCMSに組み込む事で8th Wallの機能を廉価に提供してくれている会社があります。特に日本ではPalan社のプレミアムプラン Sプランが10000アクセスが上限で1カ月38500円と非常に安価です。
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しかし、以下のような注意点もあります。
コンテンツの設定はPalanのCMS上で行う必要がある
PalanのCMSは使いやすさに振ったシンプルな構成(当初JSの編集機能は無いと書いていましたが、先日JSやCSSの編集機能が増えて進化していました!仕様・制限等はPalan社に確認してください。)
8th WallのAPI Keyが発行されるわけではないので、PlayCanvasなどでは使えない
最後に
大きな魅力と不安を兼ね備えたプラットフォームである8th Wallですが、今後も上手に使っていきたいと思います。
アップデートする情報があれば、随時更新していきたいと思います。