見出し画像

英雄を待ち望むなー煉獄さんによせて

※本当は煉獄様と呼びたいくらいお慕い申し上げているのだが、キモすぎるので煉獄さんと書かせていただきます。

大衆はヒーローの登場を待ってる
不満のある現状を変える何かを与えてくれる、ドン詰まりに見えるつまらない日々を変えてくれる何か、この際誰かじゃなくてもいい、2次元の何かだっていいのだ

できればそのヒーローは肌が白くてイケメンで、
(そう、中国人やインド人ではダメなのだ。宇宙的ヒットを飛ばした某アニメを鑑みるならば、ヒロインはインド系でもいいかもしれんが)
賢くって自信に満ち溢れていて、
何言ってるか理解できなくてもオレたちのタメになりそうなことを演説してくれるんだ。
そしてここぞってときにはオレたちのために全世界を敵に回しても(もしくはクラスメイトや親や古くからの友人を裏切って全ての財産をドブに捨ててでも)勇猛果敢にイカズチを振るって世界を変えてくれる人なんだ、なんて思っていないか?

アメリカではあまりにドン詰まりな人が多くて、イケメンでもスマートでもなく語り口もえげつない、資本主義の荒浪を乗り越えてきたように見えるトランプという人を選んだことがあったが、アイツでもいいからオレのヒーローになってくれって感じたんだろうか?

それとももっと卑近に『あの人だけはオレたちに真実を教えてくれた』なんて思って、自分だけは特別なんだと優越感をもって支持しているのか?そりゃあちょっと自尊心が磨耗しすぎちゃいないか?一体どうなってるの

だってそれってまるで、小学生女児がよくやる『ヒミツだからね、(アナタ)ちゃんにだけ言うよ、他の人に言っちゃダメだからね』なんて戯言と同じ構図だ。その子がクラスの人気者で見栄えも良ければイチコロだ。そしてそのヒミツは往々にして翌朝には皆が知っている。
ヒミツとやらを聞いた瞬間に抱いた『アタイ、この子のトクベツゥ???!』なんて子どもの淡い期待と純真は儚く消える。

しかもそんなに大事な情報なら、一般人中の超一般なオマエが知るってことあるの?

お手軽にコンビニエントに、イケアなんかで買ったソファに寝転がってポテチの粉がついた指で触ってるスマホの中の、自意識の過剰な部分だけを過剰に煮詰めたようなYouTubeやX(Twitter)を通して。
(その指を舐めて、ポテチの粉ウマいわってやるんだろ?うん、私はやる)
まず、ソコ考えてみよ?って思っちゃうのだが、スマートフォンは今や神よりも偉大になっちゃったスティーブ・ジョブズが生み出した21世紀の四次元ポケットなのだからあらゆる願望を叶えてくれるんだろう。
(アメリカは数十年過ぎればあらゆる政治的文書が公開されるらしい。政府が国民に対してさまざまな事を隠匿してきたことは事実なので陰謀論はアメリカ国民にとってはアイデンティティのようなものかもしれない)


同じくレッサーエビルしかいない香港の議会選挙に投票に行かない香港人たちの振る舞いと違って、なーーーんかアメリカのあの強烈に浮かれた人たちは熱狂の中にいる。それは首相すら自分の手で選べないことが不変の事実である日本国民とは違って(アメリカの選挙はとりあえずある党に投票すれば、この人が大統領に就任するということが明白だ)政治に対してエネルギーを感じるので、そのエネルギー部分にのみ関していえば若干うらやましくもある。

そのうらやましさを例えるなら、『好き』が見つからなくてとぼとぼ歩いてる私が『夢中にサッカーボールを追いかける少年』を横目に見て、抱かずにはいられない憧憬とそして自分はああはなれないという諦念だ。

『熱中できる』ってカッコいいよね。もしかしたら私の求めるヒーローのかけらって陰謀論を撒き散らしてるアイツら?!(違う)

本当に本当に前置きが長くなってしまったが、改めて実はここからが本題だ。

タイトルにある煉獄さんは言うまでもなく日本アニメ映画の歴史を塗り替えた『鬼滅の刃ー無限列車編』のヒーローだ。

煉獄さんは鬼殺隊の中でもバツグンに強くて
天賦の才があるにも関わらず非常に努力家だ。
聡明で面倒見もよく決断が早くて反省もできるイケメンだ。
鬼が甘美な夢を見せる攻撃の中でも現実を見つめていた。(この辺はたくさんの賢人による考察を参照してほしい)

『老いることも死ぬことも人間という儚い生き物の美しさだ』と語り(友人を時空の果てで生かし続ける私をアゴから木っ端微塵に砕いてくれ)、死の間際、愛する家族への伝言を託し、鬼である炭治郎の家族・禰󠄀豆子のことを鬼殺隊の一員だと認めた(初手ではなんの情も見せず快活な笑顔で斬ろうとしていた)。そして炭治郎にこれからの進むべき方向を説き、『君たちを信じる』と告げる。

圧巻!なんとあっぱれな最期!
やはりヒーローはこうでなくては

対決した鬼、猗窩座にも言われたように煉獄さんは生まれたときから『選ばれし強き者』だ。

母にかつて『強く生まれるということは弱き人を助けるためであり、それは責務であり使命だ』と言われ『はい!!』と返事している。

彼の死の間際、最後の最後、
彼が最も敬愛した幼い頃死に別れた母が目の前に現れ、煉獄さんは問う。

『オレはちゃんとやれただろうか』
『やるべきこと果たすべきことを全うできましたか?』

煉獄さんのいう『全うするべき責務』は
母との約束なのだ。

『立派にできましたよ』と母は顔を綻ばせる。
それを見て、こどものような笑みを浮かべ
煉獄さんは果てるのだ。

炭治郎が英雄と信じて疑わなかった煉獄さんも
『選ばれし強き者』『熱い男』『頼れる兄貴』フィルター(属性)を外してみれば
皆と変わらない、大切な誰かとの約束を
ただただ必死に守ろうとする無垢な少年だった。

あれ?こんな人、身近にもいるよね?
あなただって、母親や父親、又は養育者、
学校の先生と何か約束して
(その約束は煉獄さんのように重い責務や使命でなくていい、必ずしも命をかけなくてもいい)
『時間を守れ』
『人に迷惑をかけるな』
『人にやさしく』
そんなことを言われて
その言葉に応えたいと思ったことが
少なからずあるはずだ
その約束はいつしか習慣となり性格となり
日常となる
もう覚えていないかもしれないが

ヒーローだって一皮剥けばただの人だ
そのことを身をもって教えてくれた
だから煉獄さんの生き様は普遍性をもって
全世界に受け入れられたのかな

どうだろう、自分の中に英雄はいた?
ヒーローになれそう?
それともまだ他の英雄をさがす?

ヒーロー像はあなた自身でも、
身近な人でもいいだろう

煉獄さんは甘い夢は見なかったし、
苦しい現実を生きろというけど
そうじゃない英雄がいたっていい

とっても瑣末なことでのヒーローでもいいし
でっかいことを起こせるヒーローでもいい
あなたもヒーローになれるし
すでに誰かのヒーローかもしれない

英雄の出現を待ち望むのはやめよう

いいなと思ったら応援しよう!