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67.しずかに怒ること

日本製鉄によるUSスチール買収が大揉めに揉めて、ついに「訴えてやるっ!(ガチ)」という展開に。

23ジャーナリスト 片山薫 記者:
例えとして考えていただきたいのですが、日本を代表する製鉄メーカー(日本製鉄)とアメリカを代表する製鉄メーカー(USスチール)は、お互いに好きだから婚約に至りました。それも結構いいダイヤ(買収額)を提示し、お互い納得の上で結婚を決めました。
 婚約が決まり、そろそろ結婚式という時に割って入ってきたのがバイデン大統領です。
 例えとしては、USスチールの“親戚のおじさん”ぐらいで、「うちのUSスチールと結婚するなんて許さん。国家安全保障上の脅威になるんだ」と言いました。
 しかし、日本製鉄としては、2兆円のお金を用意して、「きちんと再生させます」と言っていたのに、なぜいきなりこんなことを言われるのか、国家安全保障上なんの脅威があるのかが納得いかないので、バイデン大統領を訴えたということです。

小説家 真山仁さん:
アメリカは世界で一番の資本主義国だと思ってると思います。それなのに、相思相愛であるにも関わらずなぜ政治が介入するのか
 これは衰退の始まりではないのかと思うくらいとんでもないことだと思います。

23ジャーナリスト 片山 記者:
片山さんの例えで言うと、USスチール側の親戚のおじさん(バイデン大統領)と向き合うべきは、石破総理(日本製鉄側の親戚のおじさん)だと思います。 親戚のおじさんではありますが、明らかに失礼な対応や論理が通らないことにはきちんと交渉しなくてはいけません。しかし現状では、政府関係者は「行政としてやれることは限られている」と話しています。

Yahoo!ニュース「日本製鉄『決して諦めることはない』USスチール買収めぐり米バイデン大統領を提訴 トランプ流“取引”か…SNS投稿にある変化が」(最終閲覧: 2025.1.9.)


会社同士も工場のあるまちの地元住民も、みんな賛成してるのに、
一部のアメリカ人のへんなプライドのせいで一年以上こじれてるのは気の毒でしかない。

国内外のメディアもそう思ってるらしく、
昨日の日鉄の会見はいろんな新聞やニュース番組でトップ扱いだった。

まあ、この騒動について詳しく述べるのはここでは避けるとして、筆者が注目したのは、
この会見(最初に貼った時事通信の動画)における日鉄の会長は、
(きっとものすごくイライラしているだろうに)非常に冷静に、終始淡々と、強い言葉を口にしていたところだ。
怒ってるのに、早口でまくし立てるでもなく、ゆっくり、聞こえやすいようにしゃべってるし。

往々にして、怒りというのはしずかに表現した方が、その意志の強さが伝わる。

そう思わされる出来事が、最近いくつかあった。

しずかに怒ったひと: 「クマ送る」発言

似たような年代のえらい人だと、最近では秋田県知事が怒っていた。

 秋田市内では11月末、スーパーにクマが侵入し、その後駆除された。県によると今月12日までに駆除に反対する電話が24件あり、ほとんどが県外からだったという。

時事ドットコム「苦情電話に『クマ送る』 秋田知事、駆除対応巡り」(最終閲覧: 2025.1.8.)

そりゃ、当事者でもない人たちに毎日文句つけられたら、言い返したくもなるわ。

18日、報道陣から発言の意図を問われた佐竹知事は、クレームの電話の中には過激な発言もあるとし、「トップが例え話でも毅然とした対応をすることで、職員がやりやすくなる」と説明しました。

そして、十分に説明することも必要だとしつつも、「うちのそばにクマがいたらどうなるのか、自分の身になってほしい。人間の生命が一番です」と話していました。

NHK秋田NEWS WEB「クマ対応への苦情に知事『クマ送る』 毅然な対応必要と説明」(最終閲覧: 2025.1.8.)

このように、発言に至った筋道は通っていて、納得できるものなのだが、
言葉のインパクトがあまりに強すぎて、なんだかものすごい勢いでキレたみたいな印象を持たれている。

見出しにしたときのインパクトがすごいもんね(一番上のサムネの外国人はなんだろう)


でも、動画で見てみると、「おまえ」なんて乱暴な言葉は使っていないし(ちゃんと「お宅」と言っている)、「こんなこと言うべきじゃないかもしれないけど」というエクスキューズが入った上で出た発言だった。

出典: https://m.youtube.com/watch?v=e9iBcbhg78M

なにも、「そんなに文句つけるならお前のとこにクマ送ってやるから、覚悟しとけ!」と怒鳴ったわけではない

インパクトのある部分だけ切り取る、メディアの悪いところ出てるなあ。

もともと、動物は好きみたいだしね、このひと。

このサムネで知事が抱いているのは、プーチン大統領から秋田犬のお返しに贈られた猫、ミール。ロシア語で「平和」くん。

ロシアからの平和は死にました。という皮肉。

感情をあらわにした人たち: 机バンバン

知事つながりでいうと、昨年大いに注目を集めた兵庫県知事選で、へんなところで激しい感情をあらわにしたひとが話題になった。

これの0:42-くらい。
要は、斎藤知事の対立候補を指示する理由として、

こう話す間に、机をバン!と叩いたのが「怖い」「パワハラみたい」と拡散してしまった。

正直、この県知事選は、県外在住の筆者からしても異常な加熱ぶりだったし、
色々と今までになかったことがたくさん起きたので、当事者はフラストレーションたまってただろうなあ、とは思う。

だからって、話の合間に机を強めに叩く理由にはならないけどね。

上の動画によると、市長のこの行動以降、800件もの苦情が届いたらしい。
いやいや、そこまですること?とは思ってしまうけど。

ただしく怒るには

ネットでなんでも拡散される世の中になって、苦情が当事者に届きやすくなったのは確かだ。

どんなに時代が変わっても、
いや、むしろ、切り抜き動画が瞬時に拡散されてしまうこの時代だからこそ、
怒鳴ったり暴れたりするより、よっぽど感情が伝わるということを、肝に銘じた方がいいのかもしれない。


※今日のヘッダー画像は、筆者がゴルフ用品店で見つけた、ファイティングポーズをとるクマのマスコットです。


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