見出し画像

68.豪華列車の旅

北の大雪だの、ロサンゼルスの山火事だの、今日もニュースサイトを開くと暗い話題ばかりだが、
その中にきらりと光るこんな見出しを見つけた。

(CNN) かつて豪華客車に裕福な乗客を乗せて欧州各地を駆け巡っていたことで名高い「オリエント急行」のブランドが再び脚光を浴びている。今回はイタリアで鉄道の線路から飛び降り、高級ホテル業界に進出した。

「オリエント急行ラ・ミネルバ」は2025年春、ローマ中心部で開業予定。伝説的なオリエント急行ブランドの現代版としてオープンする最初のホテルとなる。これとは別にホテル1軒と、オリエント急行ブランドの船2隻も後に続く予定だ。

当初1620年に建設され、19世紀にホテルに改装されたラ・ミネルバは今回、ローマの豊かな歴史に光を当てる目的で修復される。オリエント急行本来の時代を超えた魅力を生かしつつ、「アールデコ様式」と「現代のエレガンス」を融合させるとうたっている。

オリエント急行ラ・ミネルバは豪華客室93部屋(36のスイートルームや屋上のバー兼レストラン1軒、トルコ式浴場を含む)を備え、洗練された観光客と地元ローマ市民の両方を顧客として想定する。料金は一泊1000ユーロ(約16万2700円)から

CNN.co.jp「ローマに今年開業、豪華絢爛な『オリエント急行ホテル』を紹介」(最終閲覧: 2025.1.9.)

要は、アガサ・クリスティの小説でも有名なオリエント急行のブランドが、ローマに新たに高級ホテルを開業するらしい。
宿泊費もまた、目の飛び出すような値段である。


なあんだ、列車の話じゃないのね、と思われたかもしれないが、

名高い列車の旅を体験するチャンスがなく寂しい、あるいは再体験したいという人のために、列車のオリエント急行も近く鉄道に戻ってくる

26年半ばには、1920~30年代の往年のオリエント急行に乗車する機会が得られる見通し。食堂車やバーの車両は、柔らかい照明や大理石の柱を中心に親密感やエレガンスを醸し出すべく、慎重に再設計されている。

おぉ!!!
これは気になっちゃうって。

絶大な人気を誇るミステリ小説は数あれど、特に『オリエント急行殺人事件』がたびたび映画化されていることからも、
筆者を含む多くの人が、今は亡きオリエント急行ないし豪華列車にロマンを感じていることがうかがえる。

豪華列車といえば、去年の夏ごろ、こんなのを見つけたことを思い出した。

 旅行代金は1人当たり75万円からで、計6回運行し1回当たり最大30人を募集。31日からホームページか郵送での申し込みを受け付け、抽選の上で販売する。

時事ドットコム「JR東海と東急、静岡で観光列車 富士山と美食、3泊4日で堪能」(最終閲覧: 2025.1.9.)

料金といい抽選でのチケット販売といい、乗るハードルが高すぎるが、

富士山を臨む景色だのうなぎだの、静岡ならではの素敵なものをたっぷり堪能して、文化財のホテルに泊まる。
たべものも古い建物も好きな筆者にとっては、夢のような旅だ。

なぜ、豪華列車の旅ってこんなに魅力的なのか。

移動がゴージャス、という贅沢

毎日の通勤・通学にしろ、旅行にしろ、えてして移動はめんどくさいもの、時間をかけたらもったいないもの、混雑などの苦痛を伴うもの、とされる。

かくいう筆者も毎日電車で通勤しているので、そこで嫌なことを年末にブログにしたばかり。


たとえば筆者が暇さえあれば行きたいと考えてしまう海外旅行も、そもそも「海外」が遠いこともあり、数時間を飛行機移動にかけることになる。
筆者のような庶民は、距離や現地での物価が高くつけばつくほど、一番安いエコノミー・クラスを選びがちなので、
ほんとうに移動は苦痛でしかない。

もしかしてこれも、海外離れの原因なのかな?と思ったり。

いくら相対的に安いとはいえ、エコノミーの座席の窮屈さは非人道的だろ、と怒っている人が海外にはいた。

 足元にスペースがない。クッションが薄い。幅が狭すぎる――。乗客は長年、飛行機の座席について不満をぶちまけてきた。今では政治家がその声に耳を傾けている。先月には航空機の避難に関する基準の改定を求める法案が連邦議会に提出された。成立すれば、連邦当局は座席のサイズと間隔を調査することが義務付けられる。

(中略)FAA(筆者注: 連邦航空局)が昨年、座席サイズによって安全に問題が生じる可能性についてパブリックコメントを募集すると、 3カ月で2万6000件以上の意見が寄せられた。
 ある人は「飛行機の座席のサイズはひどい」とコメントした。「1940年代から1950年代の人向けに作られている。身長が6フィート(約183センチ)を超える人や体重が200ポンド(約90キロ)を超える人は全く座席に収まらない。今、飛行機に乗るのは苦痛そのものだ」
 「身長5フィート(約152センチ)の私でさえ座席は狭すぎると感じる」 と書いた人もいる。「標準体型の人を気の毒に思う」

(中略)マサチューセッツ州マーサズビンヤード島在住のダヤナ・ダンチェバさん(39)は緊急時に飛行機から安全に脱出できるとは思えないと話す。座席の列の間のスペースが狭く、座席の下からかばんがはみ出しているからだ。
 「何かにつまずいたら転ぶが、おそらく転ぶスペースもない」とダンチェバさんは言う。「そうしたら誰かに踏まれるだろう」

(中略)マンハッタン在住のリディ・コッターさん(25)は航空会社は多少の利益を犠牲にすることになっても座席をより快適にすることにもっと力を注ぐべきだと話す。
 「(航空会社が)利益を上げなければならないのは理解している」とコッターさんは言う。しかし同時に「人情はどこにある?」とも感じるのだという。

WSJ.com「エコノミークラスは拷問?狭すぎる座席に不満続々」(最終閲覧: 2025.1.9.)

確かに外国人は日本人より体の大きい人が多そうだし、大変そう。
安全性にも絡めて改善を求めるとは、アメリカ人、やるなあ。

これだけ頭と経験でわかっていても、筆者がビジネス以上のクラスの座席を取る気がわかないのは、
エコノミーとビジネスの金額の差が倍どころじゃない、3-4倍レベルだからである。
そしたら行き帰りくらい我慢して、旅先で豪遊したいと思っちゃうって。

豪華列車がほかの旅行と違うのは、本来一番節約するポイントとされがちな移動が、ラグジュアリーになるところだと思う。

すごい。ちょっとしたお屋敷みたいだ(画像は上記リンクより)

↑  旅行それ自体、もともと楽しいものなのに、加えてこんな空間で移動できるなんて、魅力的でないはずがない。

このロイヤル・エクスプレスはもちろん国内移動、それも決まった区間での運行だ。

しかし、オリエント急行の通っていたイスタンブールからカレーは国境をいくつも跨ぐから、
もし今回の復活がこのあたりの区間を通るなら、
海外旅行の移動空間がラグジュアリーになるという新体験ができる。

景色が楽しめる

オリエント急行は、復活しても結局豪華列車なので(というか豪華さはぜったい失わないでほしい)、
またきっと、乗るのにとんでもない代金が提示されることは目に見えている。
それなら、ビジネス・クラスに課金して飛行機に乗る方がずっと早いじゃん、と考える方もいるかもしれない。

でも、飛行機でいくら課金しても解決しないが、列車移動を選ぶだけで解決する問題がひとつある。

景色だ。

飛行機が浮き上がっていくにつれてちいさくなっていく町々を見るのも一興だけど、

筆者がロンドン旅行の際、ヒースロー空港に着陸直前の飛行機から撮った写真。ジオラマみたいでこれはこれで面白いけどね


正直言って、風景に関しては列車の圧勝だと思うのは筆者だけだろうか。

先述のロイヤル・エクスプレスは、富士山ビューを一つの目玉にしていた。

いや、たしかにこれはすごいわ。浮世絵じゃん

ちなみに筆者が飛行機から撮った富士山は、こんな感じ。

富士山を見下ろすっていう、せっかく珍しい画角なのに、
飛行機の窓って謎に曇らせてあるので(なぜ?)、ボタンを押して明度を上げても、いつもクリアな写真が撮れない。

電車に寝泊まりするというレアさ

鉄道オタクというのは、数あるオタク界隈の中でももっともメジャーなものの一つだろう。
そう感じる理由のひとつに、ある路線が廃止になると大きなニュースになること、がある。

ことに、最後の客車寝台特急「カシオペア」の廃止は、テレビで毎日のように見た気がする。

これによって、電車で寝るっていうのはさらにレアな経験になってしまった。

死ぬまでに、一回くらいは

ここまで書いてきたとおり、列車の旅はお金こそかかるものの、それ以外はメリットしかない。

体力使わなさそうだし、お金をがんばって貯めて、死ぬまでに乗れたらいいなあ。

いいなと思ったら応援しよう!