別冊・医学のあゆみ p17-20を読んで
筆者は提供できる医療は医療圏で差があることを提起し、どこでも適切な医療が提供できること・限られた資源を有効利用することにつなげる目的で
現状の医療圏ごとに提供している医療を特定健診・特定保健指導情報等データベース(National Database:NDB)を用いて算出している。
NDBは2014年の時点で全レセプトの90%以上を格納した大規模・全国的なデータである。
具体的には、心筋梗塞で入院した患者に対するPCI実施割合、脳梗塞で入院した患者に対するrt-PA療法実施割合・早期リハビリテーション実施割合を二次医療圏ごとに算出し、医療圏間の差の推移を検討している。
結果は、心筋梗塞で入院した患者に対するPCI実施割合は多くの医療圏が平均値に近い値であるが、一部の医療圏にて低い値を示した。
また脳梗塞で入院した患者に対する早期リハビリテーション実施割合は、PCI実施割合に比較し地域差が大きい結果となった。
ここで、NDBを用いた検討は疾患特性によって使い方の工夫が必要となると
考えた。
使用にあたり、レセプト傷病名と臨床診断名の違い、確定診断と介入開始時期の違いが問題となると考える。
急性期疾患で確定診断に必要な採血項目・検査がおおむね決まっている、疾患の中に検査項目による複雑な分類分けがない疾患はレセプト傷病名+短期間に行われた検査項目から、臨床診断名をおよそ正確に推定できる。
また、診断の後〇時間以内に〇処置がゴールドスタンダードであると画一・フロチャート的に急性期処置が決まっている疾患であれば、その疾患に対する医療圏ごとの提供格差は測りやすいと考える。
一方、確定診断には短期間での結果判定が難しい検査を要する疾患や、診断的治療として確定診断がつく前に治療介入を行う場合もある疾患は、医療機関・医師ごとに検査の順序が異なる・確定診断の前に治療開始される場合がある。
また、結果的に診断は異なっても、レセプト病名・確定診断病名等複数の疾患にて共通する治療法を行っていた場合やレセプト病名の除外のために必要な検査を行った場合、レセプト病名が確定診断名に修正されていない可能性もある。
慢性期疾患、診断にカットオフ値が明確な検査項目のない疾患、診断基準に則り診断に検査項目・値の組み合わせパターンが複数ある疾患、1st治療、ゴールドスタンダードな治療が確立されていない疾患の指標をNDBから検討する際は、工夫が必要であると思った。
上記に述べたような疾患のNDBからの検討はすでに工夫されて行われているのかもしれない。慢性期疾患が比較的多い自分が専門とする領域でのNDBの活用方法について、知りたいと思った。