(21)合成品デアザフラビンの真実【試薬としてのTND1128】
結論)試薬としてのデアザフラビン(TND1128)の純度の保証が95%~程度です。100%安全といえるサプリメント原料のデアザフラビンは合成できるのでしょうか?
このnoteのタイトルを「合成品」デアザフラビンとした理由はいくつかあるのですが、有機合成に詳しい私の友人(薬学部の教授)にいろいろ聞いてみました。
するとデアザフラビン(TND1128)についていくつかのことが分かってきました。(初めから彼に聞いておけば良かったと思います。)
特に秘密にすることもないので、友人からのメールの返信を転載します。
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抜粋)
5-deazaflavin derivative (10-ethyl-3-methylpyrimido[4,5-b]quinoline-2,4(3H,10H)-dione)
TND1128 (C14H13N3O2M.W: 255.28) は、少し昔に合成された化合物のようですね。
J.C.S. のため論文を落とせなかったので詳細内容は判りませんが、
ここが初出?かもしれません。
(※⇒ 次のメールでもっと年代の古い論文の紹介がありました。)
T. Nagamatsu, Y. Hashiguchi, F. Yoneda, A new, general, and convenient
synthesis of 5-deazaflavins (5-deazaisoalloxazines) and bis-(5-deazaflavin-
10-yl)alkanes, J. Chem. Soc, Perkin. Trans. 1 (1984) 561e565.
また、調べたところ CAS No.が 59997-14-7 で登録されており、
試薬でも供給されているようです。
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たびたび登場するNagamatsu先生が合成法を開発されたようなのですが、ここで気になったのが、
「いつ」デアザフラビン(TND1128)が合成されてサーチュイン活性、ミトコンドリア活性のスクリーニングにかけられたのか?
という点です。
かつ、製薬企業ならまだしも、大学で(コンピュータで)構造活性相関をシュミレーションできるところは本当に限られています。
ただ、私は単純にNagamatsu先生は科学者としてリスペクトしておりますので、こう考えてしまうのは私の有機合成の分野への無知かも知れません。
あとは、別のnoteにも書きましたが、同じ構造のものが試薬として「CAS No. キャスナンバー」がつけられて市販されているようです。
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抜粋)海外ですが、とりあえず以下の会社で販売しているみたいですね。
価格は、①の会社で$2744/g
一番下の会社③は小ロットでもか買えるのかもしれません。
①
http://www.rrscientific.com/product/info/270601
②
https://www.milestonepharmtech.com/mst/product_detail.html?catalog_number=MPT0944420
③
https://chemazone.com/info?ID=153.385.643
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ここからいくつかの考察を得ることができます。
・デアザフラビン(TND1128)と同一の化合物(CAS No.59997-14-7)は、海外では試薬として販売されている。(まだ確証はありません)
「試薬CAS No.59997-14-7の純度が95%、94%とあるように100%合成品として品質を担保するのは難しそうです。」
⇒ 試薬メーカーが100%純粋のデアザフラビン合成品を担保できないのにメーカーはそれが可能なのでしょうか?
・この試薬会社にに問い合わせれば、CAS No.59997-14-7の合成方法が分かるかも知れません。
・デアザフラビン(TND1128)がCAS No.59997-14-7同一と仮定した場合、すでに他の企業が製造しているためデアザフラビン(TND1128)そのものに特許性は無いと思います。デアザフラビンの特許はあくまでのATP産生に関する用途特許だと思います。
です。
新たに出てきた疑問としては、デアザフラビン(TND1128)は新規合成化合物かと思っていましたが、CAS No.59997-14-7の発売時期によっては、「デアザフラビン(TND1128)は新規ではない」可能性もあります。
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特に試薬としてのデアザフラビンと同一と思われる「CAS No.が 59997-14-7」という合成品の純度が95%程度の保証であることが非常に気になります。
すでにサプリメントとして販売されて、消費者が口に入れているデアザフラビンに化学合成した際の試薬、有機溶媒類の残存がないといいのですが。
デアザフラビン(TND1128)を使用している消費者、患者さんに何らかの害(副作用)がないことを祈るばかりです。
【追記】
以前紹介したNagamatsu先生の論文では
■ TND1128(10-ethyl-3-methylpyrimido[4,5-b]quinoline-2,4(3H,10H)-dione) (10-ethyl 3-methyl-5-deazaflavin)
とありまして、試薬CAS No. 59997-14-7は
■ 10-ethyl-3-methylpyrimido[4,5-b]quinoline-2,4(3H,10H)-dione
とあります。掲載されている化学構造式も同じです。
なので「ほぼ同一物質と考えて良い」と思います。
なぜ「ほぼ」なのかと言いますと化学物質は「異性体」というものが存在し、分子量、化学式が全く同じでも炭素(C)や酸素(O)などの結合の向きが異なる場合があります。(なのでこの違いを詳細に示す化学式の書き方もあります)
例えば、アミノ酸にはD体とL体という異性体が存在し、この2つは分子量、化学式も全く一緒です。ですが、人間はL体のみのアミノ酸を利用します。このような理由により、もっと詳細な情報を集めないと
TND1128 = 試薬CAS No. 59997-14-7
と断言はできませんが。限りなく同一物質を言えそうです。
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【メールで聞いてみた】
とある医薬品原料を開発しているメーカーに「デアザフラビンTND1128のようなものを安全に合成して、ヒトの口に入れても大丈夫となるまで、どのくらいかかりますか?」と問い合わせてみました。
すると
「標題の件、弊社では技術的には問題なく合成することは可能ですが、(中略)レギュレーションの観点から、この合成品を食品分野へ上市することに関しましても、前例の承認状況から推察致しますと、医薬品原料とほぼ同レベルの安全性試験に関する資料を求められますため、製品開発には長い年月と多大な経費を要すると思います。さらに、もし医薬品にするとなると、、、、(後略)」
という返答でした。私の考えていたこととさほど変わらない専門業者さんの意見でした。
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(22)合成品デアザフラビンの真実【ナイショ話】
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(1) 合成品デアザフラビンの真実