(7)合成品デアザフラビンの真実【特許技術は本当?】
結論)吸収率を高めるナノ化浸透特許技術(特許第6842091)とデアザフラビンの商品との関係性が良くわかりません。※
では次に
・吸収率を高めるナノ化浸透特許技術(特許第6842091)
を考察したいと思います。
デアザフラビンの宣伝では、
「この特許技術を利用してデアザフラビンをナノコートして吸収力を高めた。」
「(特許技術で)ナノ化デアザフラビンをナノコート(油層)することで、小腸の受容体の結合率が上がり、吸収率が大幅にアップしました。(約4倍、原料メーカー分析比)浸透技術に関する特許を取得しています。」
とあります。
薬の世界でいうドラッグデリバリー(DDS)システムのようなものかと思います。
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この特許技術は正式には
「水溶性分子複合体含有油剤の製造方法、及び分散液の製造方法」
という発明です。(ナノ化、ナノコートという単語は出てきません)
水溶性物質を多価アルコール(ヒマシ油?、ポリエチレングリコールなど)のようなもので分散させることが狙いのようですが、ここのところは難解で何度読んでも何が言いたいのか私には良く理解できませんでした。
とりあえず化粧品、医薬品、食品などに使用できるそうですが、実施例は外用剤(化粧品)です。
そりゃそうでしょ!とツッコミたくなるのはヒマシ油やオリーブ油に乳化剤と共に溶解して、それを飲めと言われてもベタベタでとてもではないですが飲むのには苦労しそうです。
ですが、健康食品にするためのな何らかの技術があるのでしょう。
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そもそも論なのですが、デアザフラビンTND1128のATP産生に関する特許明細には、
「以上から明らかなように、検体1(TND1128)は疎水性が高く、極めて安定な化合物であることが、β−NMNを凌ぐさらに大きな利点である。」
とあり、デアザフラビンTND1128が「疎水性=脂溶性」であることが示されています。これが本当だとすれば、水溶性の成分を脂溶性の溶媒で分散させる技術なので、この特許製法(特許第6842091)はデアザフラビンTND1128には適用できないことになります。
・・・正直なところ私も良く分からなくなってしまいました。
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さらにビタミンBは水溶性なので体内の蓄積性が低く尿から排泄されやすいのですが、ビタミンAやEのような脂溶性物質は体内への蓄積性を考慮して一日の摂取上限が定められています。
ということは、脂溶性であるデアザフラビンTND1128も連続摂取による体内への蓄積性が懸念され、一日の摂取量もコントロールする必要があるかと思います。
いずれにして、脂溶性であるデアザフラビンTND1128にはこの製剤化の特許技術(特許第6842091)は理論上は応用できないことになってしまいます。
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ちなみに、ナノコートをしているというデアザフラビン「商品」配合成分を見ると
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5-デアザフラビン(国内製造)、5-アミノレブリン酸含有アミノ酸粉末、オリーブ油、赤ワインエキス末(レスベラトロール)、亜鉛含有酵母、コエンザイムQ10(還元型)加工食品/結晶セルロース、HPMC、クエン酸第一鉄ナトリウム、ステアリン酸カルシウム、二酸化ケイ素、着色料(二酸化チタン)、グリセリン脂肪酸エステル、ビタミンC、ニコチン酸アミド、ビタミンE、パントテン酸カルシウム、ビタミンB1、ビタミンB6、ビタミンA、ビタミンB2、葉酸、グリセリン、ビタミンD、ビタミンB12、(一部に大豆を含む)
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とあり、この中で「オリーブ油、グリセリン脂肪酸エステル」がそのナノコート化に利用されている感じがしますが、これが特許製法であるかどうかは私には確証がありません。
他の成分はいわゆる賦形剤で、滑沢や増粘、造粒に用いられるものです。
一方で別の商品の配合成分を見ると
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デアザフラビン(国内製造)、デキストリン、オリーブ油/結晶セルロース、HPMC、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、クエン酸カリウム、硫酸マグネシウム、微粒二酸化ケイ素、グリセリン脂肪酸エステル、水素、グリセリン
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とありましたので、やはりデアザフラビンをオリーブ油、グリセリン等に分散させた特許技術のように読み取れます。
ですが、そもそも「デアザフラビン(脂溶性)+オリーブ油(脂溶性)」なのでやはり特許技術(特許第6842091)は理論上は応用できないことになります。
もし、グリセリン脂肪酸エステルがこの特許製法で用いられていた場合、「乳化剤として働き、水溶性分子を脂溶性溶媒に分散させる技術」と一致します。ですが、乳化剤はあくまでも水溶性物質と脂溶性物質を乳化させるものであって脂溶性であるデアザフラビンがこの技術に応用できるのか疑問です。
なぜなら、この特許は水溶性物質を脂溶性溶媒に分散させる技術だからです。
「(特許より抜粋)また、本発明に係る水溶性分子複合体含有油剤の製造方法では、前記水溶性分子が塩化リゾチーム、水溶性サイトカイン、ビタミン類、ヒト幹細胞培養上清液から選ばれる少なくとも何れか1つであることにも特徴を有する。
また、本発明に係る水溶性分子複合体含有油剤の製造方法では、前記多価アルコールがポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールから選ばれる少なくとも何れか1つであることにも特徴を有する。」
とありますが、やはり水溶性分子として塩化リゾチーム、サイトカインなど生理活性を有する(比較的不安定な)物質の加工方法のため、これに脂溶性で安定性の高いデアザフラビンを適用できるかどうか疑問です。
あと、
「小腸の受容体の結合率が上がり、吸収率が大幅にアップしました。」
という実施例はこの特許には記載されていません。特に「小腸の受容体の結合率が上がる」といった理論で吸収を促進する現象はあまり聞いたこともありません。
ナノコート技術で製造された粉末に対して、何かの特別なトランスポーターがあるのでしょうか?
もし、このことを示すエビデンスがあるとすると、note(23) で一つの論文を示していますが、そこにはデアザフラビンの蛋白結合の研究結果が示されています。もしかすると、ここから着想を得てこのような理屈が成り立つかも知れませんが、いずれにしても論文ベースでの根拠が欲しいところです。
4倍も吸収率がアップする技術力は相当なものです。製薬メーカーの喉から手が出るほど欲しい技術かと思います。(吸収率がアップするデータは企業データとして保有しているそうなので、そこはそのまま信じることにしましょう)
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健康食品の宣伝に特許を利用したい気持ちも分かりますが、特許明細の内容と実際の製品があまりにも乖離していると誇大広告になってしまう恐れがあります。
また、特許はあくまでも作文なので、査読付き論文のような科学的根拠の信頼性はほとんど無いと考えるのが妥当です。
最後にもう一つ気がついたのはこの特許には「ナノ化」に関する技術の記載はありません。なので「ナノコート」というのは、レインコートのように何か包むものの名称かと思います。
結局、この特許明細書から分かることは
デアザフラビンの宣伝にある
・デアザフラビンをナノコート(もしくはナノ化)
・小腸の受容体の結合率を上げて吸収力を増す
ということと特許技術(特許第6842091)とは一切関係がないだろうということでした。
※ナノコート(油層)、吸収力をアップという事実はメーカー公表があるので、実際にあると思います。
しかし、デアザフラビンとこの特許技術の接点が見いだされないということです。
どちらにしても
脂溶性であるデアザフラビンTND1128では、この製剤化の特許技術は応用できない場合は、この製剤化技術特許を宣伝して販売すると消費者に色々な誤解を招く恐れが生じると思います。
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【追記】
※特許明細中に
「そして、このような水溶性分子複合体含有油剤によれば、【油性の】医薬品や化粧料、食品において、安定した水溶性分子複合体により水溶性分子を所望の標的部位に到達させたり、水溶性分子に由来する機能性を付与することができる。」
とあります。
これをそのまま読めば、油性のデアザフラビンの加工技術に応用できる可能性もあります。しかし、一方で「水溶性分子を所望の標的部位に到達させる。」ともありますので、この特許を脂溶性物質であるデアザフラビンに適応できるかどうかはっきりしません。
さらに、この特許の本質的な部分かと思いますが
「従って、水溶性分子複合体内の水溶性分子は、水分除去に伴う機能低下が抑制されることで脱水前の機能を保持することができ、水溶性分子に期待される機能、例えば、薬理活性や生理活性、食品としての機能を十分に発揮させることができる。」
とあるように、「水溶性の生理活性物質の効果を保持して油層する。」ことが大きなポイントかと思います。その点においても脂溶性で安定であるデアザフラビンにこの技術が適応できるとは考えにくいです。
この解釈については、私の方が間違っている可能性がありますので、もし私が間違っていることが分かりましたら、お詫びと共に修正するつもりです。
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(8)合成品デアザフラビンの真実【ケミテラス社】
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(1) 合成品デアザフラビンの真実