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(2)合成品デアザフラビンの真実【長い歴史?】

結論)デアザフラビン(TND1128)の研究の歴史は非常に浅いです。


ては、デアザフラビン(フラビン骨格および類縁体)の研究の歴史について考察したいと思います。

科学者がその真偽を問う時に利用するのが学術論文の検索です。
学術論文といってもさまざまありますが、基本的には査読、インパクトファクターのある論文はPubMedに掲載されますので、ここから世界の論文情報を得ることができます。

早速 Deazaflavin というキーワードで検索すると288報の論文がヒットしました。

一番古いものは1979年のEur J Biochemに掲載された論文です。

ついで1981年のNicholls Pらの論文ではデアザフラビン(※)が試験管内で酸化還元に寄与することが示されています。

1985年頃から京都大のグループも研究を開始しています。

※論文では5-dazaflavinとあります。後述しますが、デアザフラビンはフラビン骨格を有する化合物の総称なので、さまざまな類似物質が存在します。

1991年にはメタン生産菌の電子キャリアとしてデアザフラビン(F390)が紹介されています。

この研究はしばらく続き、さまざまな菌類からデアザフラビンが発見されています。

その後、デアザフラビンは基礎レベルでの酸化還元に寄与する物質として研究されています。

特にデアザフラビンは光に反応する物質としての用途が基礎的に研究されるようになりました。類縁体のビタミンBは黄色ですが、これは黄色領域の光波長を吸収することによります。構造的には共役二重結合があると光に対する反応性が高まるので、デアザフラビンが光に反応することは納得できます。

これに関連した論文で、デアザフラビンが放射線に反応して放射線の細胞障害活性を誘発するとあります。

https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0960894X01002864?via%3Dihub

研究の潮目が変わってきたのが、2007年にフラビンの類縁体が抗腫瘍活性(PKC阻害活性)があるということで構造活性相関から網羅的なスクリーニングが行われております。

https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0968089606008091?via%3Dihub

興味深いことにこの論文はシリーズ化されて次々にデアザフラビンの類縁体のスクリーニングを実施し、構造活性相関の観点から抗腫瘍活性を細胞レベルで検証しています。

ここからTomohisa Nagamatsuという日本の先生のお名前が頻繁に出てきます。

そして2021年、2023年、2024年に日本の研究者らによってデアザフラビン(TND1128)に関する基礎実験の論文が3報出ました。

おそらく販売されているデアザフラビンの説明論拠はこれらの論文からかと思います。
こちらもTomohisa Nagamatsu先生が関わっておられます。

このように1979年からのデアザフラビンに関する論文を紐解いていくと確かに色々な生理活性がありそうな面白い化合物です。

ですが、健康食品としてのデアザフラビンとしてとらえた時にいくつかの懸念点が生じました。

・デアザフラビンは、メタン産生菌や結核菌をはじめとするさまざまな菌類に存在しているようですが、これによって「食経験があるから安全」という担保としては非常に難しいと思われます。

・デアザフラビンは、ビタミンBに類似する骨格を有しますが、多くの類縁体、誘導体があり、それぞれの構造によって薬理学的な構造活性相関がかなり異なるようなので、「ビタミンBに似ているから安全」とはならないと思います。

・またデアザフラビンは光(もしくは電子、放射線?)に反応することから、放射線治療の際には気を付ける必要があるかも知れません。また光過敏症といった副作用の発現もあるかも知れません。

・デアザフラビンおよびその類縁体は、細胞実験で腫瘍細胞にプロテインキナーゼC(PKC)阻害により直接的な抗腫瘍作用を示すことから、正常細胞に対しても何らかの影響が出る可能性が否定できません。

これらの多くの研究論文から受けた印象ですが、

デアザフラビン(TND1128)はヒト介入試験の実施やサプリメントとして販売するには科学的根拠が乏しく、製造、品質管理、安全面においてかなり徹底した検証が必要であると感じました。


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(3) 合成品デアザフラビンの真実【3つの論文】

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(1) 合成品デアザフラビンの真実


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