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(10)合成品デアザフラビンの真実【ミトコンドリア活性】
結論)デアザフラビンTND1128がNMNと比較して30倍、40倍のミトコンドリア活性があるとの科学的根拠は見つけられません。
商品と共にミトコンドリア活性が上がると説明すると薬機法違反になります。
このようないい加減な宣伝をされてはメーカーも困っていると思います。
デアザフラビンTND1128の販売サイトに以下のような文言が踊っています。
「NMNよりもサーチュイン遺伝子を活性化させる力が数倍以上。さらにミトコンドリアを活性化させる力は数十倍以上であることが実験データから明らかになっています。」
そもそも、ミトコンドリア活性とは何でしょうか?
ミトコンドリアは細胞小器官でATPというエネルギー産生をしている。
ということくらいはご存じかと思います。
ミトコンドリアと老化、病気は深く関係しています。
なので確かに「ミトコンドリアの機能に関係した疾患の治療」は研究されています。
「じゃあ、ミトコンドリアを元気にして病気をやっつけよう!!」
当然、そんな単純な話はありません。
生体にはホメオスタシス(恒常性)というのがあって、ミトコンドリア、サーチュイン、オートファジー、免疫系といった働きは、上がりすぎたら下げるように働きますし、下がりすぎたら上がるようにバランスを保つようになっています。
ですから、いつもミトコンドリアが元気だったら、それはそれで体にとって困ることも起きる可能性があります。
ですが、サプリメントの世界ではそのような話が単純化されてSNSで情報が飛び交っているようです。
私も時々細胞を使ってミトコンドリア活性を調べたりすることがあります。
ミトコンドリア活性研究といえど使用する細胞、動物の種類、どのような試薬を用いて、ミトコンドリアのどの機能を調べるか、など実験の条件は無限大にあります。
以下のURLにあるミトコンドリア研究の試薬はその一例です。
デアザフラビンTND1128の論文では、
マウスにデアザフラビンを皮下注射して脳内細胞中のカルシウム濃度よりミトコンドリア活性を考察したデータと、マウスにデアザフラビンを腹腔内注射してATP産生よりミトコンドリアを考察したデータとがあるのみです。
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さらにデアザフラビンとNMNとの比較ですが、これもデアザフラビンに適した実験系、NMNに適した実験系があると思いますので、
別の実験条件ではNMNの方がデアザフラビンよりも何倍もミトコンドリア活性が高いといったデータが出る可能性も充分に考えられます。
このような実験をする上での事情の中で、
「ミトコンドリアを活性化させる力は数十倍以上であることが実験データから明らかになっています。」
と言って製品を販売するのはかなり無理があります。
あと販売者がまことしやかに宣伝している
NMNがNAD代謝されてから効果を発揮するのに対して、デアザフラビンTND1128はミトコンドリアエネルギー産生に直接働くといった科学的根拠も私の調査では見つけることができません。
そもそもデアザフラビン類(F420)は、メタン産生菌の中で「補酵素」として発見されています。なので、「デアザフラビン(TND1128)も補酵素のような働きがあるのでは?」というのであれば「ミトコンドリアにダイレクトに効いてないよね」とツッコミたくなります。
補酵素は酵素反応の際の「脇役的な存在」なので、もしデアザフラビン(TND1128)がミトコンドリア内でF420のように働いていると仮定しても「ミトコンドリアにダイレクトに効いてる」とは言い難いです。
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そもそも薬機法などの縛りで、このようなデータを出すことすらも難しいかも知れませんが、もしどうしても出すとしたら
「マウスレベルの皮下注射の実験で、細胞内カルシュウム濃度の調節からミトコンドリア活性が認められました。そして、この実験系においてはNMNよりもデアザフラビンの方が活性が高く観察された。」
というような表現でないと、消費者に多くの誤解を与えてしまします。
デアザフラビンTND1128のサーチュイン活性については、データを見つけることができないので何とも言えませんが、ミトコンドリア活性と同様にサプリメントの宣伝文句に使う場合はかなりの注意が必要です。
もし、私がデアザフラビンTND1128論文の著者でしたら「まだ十分なことが分からない段階なので、サプリメントを販売する目的にこの論文を利用しないでくれ」と言うと思います。
原料メーカーとしても、販売者に対して宣伝広告のあり方について注意喚起を行う義務があると思います。
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【追伸】 電話してみた!
デアザフラビンTND1128の商品を販売している会社さんのお客様相談室に実際に聞いてみました。すると
「NMNよりもミトコンドリア活性が40倍です」
「ビタミンBに似ている天然品です」
という返答がかえってきました。
どうして、販売者の間でこのような情報が出回ってしまっているのでしょうか?
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もう一件 電話してみた!
行政の薬務課に「製品と一緒にミトコンドリア活性が上がる」と標ぼうしていいか電話で聞いてみました。
回答は
「活性が上がる」というのは人体に何からの機能性(効果)をもたらすと判断できるので、このような表示は薬機法違反になるかと思います。
とのことでした。
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