(3)合成品デアザフラビンの真実【3つの論文】
結論)実験データは、マウスに皮下注射、腹腔内注射されたもので、サプリとしてミトコンドリア活性を説明するには根拠が非常に弱いです。
デアザフラビンの論文について
現在出回っているデアザフラビンのサプリメントの広告で「NMNよりもサーチュイン遺伝子を活性化させる力が数倍以上。さらにミトコンドリアを活性化させる力は数十倍以上であることが実験データから明らかになっています。」と見かけました。
その元となったと思われる論文が3本あります。本稿ではまず2本見てみたいと思います。
※これらの論文は査読付きの国際雑誌に掲載されているため、論文中の実験手法、結果、考察についてむやみに批判する意図はありません。
■■1本目がこちらです■■
Pharmacol Sci. 2023
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S1347861322000883?via%3Dihub
マウスにデアザフラビン(TND1128)とβ-NMNを投与して、その後マウス脳の切片を作成してミトコンドリアの自己酸化還元能(self-redox ability)を測定した。というものでTND1128はβ-NMNよりも活性が高いことが示されています。
ここで気になったのがTND1128とβ-NMNはマウスに皮下投与されている点です。これは他の研究者の先行論文を参考にしているので、皮下投与そのものは特に問題はないと思います。
が、、、、感じたことを以下2本目の論文のコメントにまとめて記載します。
■■2本目がこちらです■■
J Pharmacol Sci. 2024
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S1347861324000677?via%3Dihub
1本目の論文と似たような実験系となっています。
マウスにデアザフラビン(TND1128)を投与して、その後マウス脳切片におけるミトコンドリア膜電位の変化を測定した。その結果、デアザフラビン投与でマウスの脳切片の膜電位に変化を起こしてATPの産生を促進させた。
といった内容です。
デアザフラビン投与については、TND1128をマウスに腹腔内投与してから脳切片を摘出しております。
同時に、これらの論文で使用されているデアザフラビン(TND1128)を健康食品へ応用する際の注意点もいくつか見て取れました。
この研究で使用されたデアザフラビン(TND1128)の化学式とIUPAC名も記載されています。
TND1128(10-ethyl-3-methylpyrimido[4,5-b]quinoline-2,4(3H,10H)-dione) (10-ethyl 3-methyl-5-deazaflavin)
そして、このTND1128という化合物を開発(合成?)されたのが
invented by a co-author (T.N.)
→ 崇城大学薬学部のTomohisa Nagamatsu先生であるとの記載もありました。
さらに、TND1128の提供者は
The test compound of TND1128 used in this study was synthesized in Japan and is managed by Chemiteras Corporation (Yokohama, Kanagawa)
横浜のケミテラスという会社がどこかで合成して保管していたもののようです。
このケミテラス社は、本実験の資金提供者として挙げられていいます。(企業が資金提供してもその旨を明記していれば問題ありません)
つまり、TND1128は日本の学者(Tomohisa Nagamatsu)が開発したもので、ケミテラスが責任をもってどこかで合成し、マウスへは腹腔内投与で実験をしたことになります。
ちなみに1本目の論文は、マウスへのTND1128は皮下投与です。
もし、この情報をそのまま健康食品に応用するとなると、販売されているデアザフラビン(TND1128)も化学合成品ということになります。
かつマウスの実験は腹腔内投与、皮下投与と経口投与ではないので、生体内での代謝系、吸収、分布などを考慮すると
サプリメントとしてのデアザフラビンの健康効果とこれらの論文を結びつけるのは困難と思われます。
感想ですが、1つ目の論文ではTND1128がβ-NMNよりもこの実験の条件では高かったことを示しましたが、細胞のカルシウム流入などを調べるのにとどまったために、2つ目の論文の実験をしたのかも知れません。
なぜなら2つ目の論文はミトコンドリアからのATP産生の可能性にまで踏み込んだからです。
しかし、なぜ2つ目の論文ではβ-NMNとの比較をしなかったかという点が少々疑問です。もしかしたら、TND1128がβ-NMNの比較をした際に良い結果が出なかったのかも知れません。
がそこはあくまでも推測の域なので、実験をした先生方の心象を悪くしたら今から謝っておきます。
そして、これらのデアザフラビン(TND1128)の研究についてKeyになるのは崇城大学薬学部のTomohisa Nagamatsu先生のようです。
次回はTND1128研究の基礎となったと思われる3つ目の論文を見てみたいと思います。
【追記】
業者さんか宣伝している
NMNがNAD代謝されてから効果を発揮するのに対して、デアザフラビンTND1128はミトコンドリアエネルギー産生に直接働くといった科学的根拠はありません。
本論文の考察の項には、デアザフラビンは直接ミトコンドリアのエネルギー産生を担っているような表現がありますが、あくまでも皮下投与、腹腔内投与の実験なので、ダイレクトに脳細胞にデアザフラビンが効いているといった根拠にはならないと思います。
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(4) 合成品デアザフラビンの真実【論文のトリック?】
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(1) 合成品デアザフラビンの真実