
ADHDの私が警察官時代にめちゃくちゃ苦労した事。
人それぞれ個性や特徴はありますが、その中で私はADHD(注意欠如・多動症)を患っています。
確かに幼少期から、
・宿題を忘れる
・授業中じっとしていられない
・すぐ感情的になる
等の症状はありました。
ですが極端に日常生活を送る上で困った事は無かったですし、まさか自分に発達障害があるなんて思ってもいなかったです。
しかも警察官になるのって世間一般的に見ればある程度ハードルの高い事ですし、採用試験で合格出来たという事は少なくとも能力的にも平均以上はあると自覚していました。
ところが実際警察官として働くにつれて、
「俺って他の人と違うのかも」
と思う出来事が連発するんです。
そんな私が警察官時代に苦労した事をお話し、私と同じ症状があって現在警察官を志している方の参考になればと思います。
ADHDによる弊害〜警察学校編〜

警察官採用試験に合格すると、皆さん知っての通り警察学校に入校します。
そこでは、
大卒=6ヶ月
高卒=10ヶ月
の入校生活を強いられます。
私は高卒ストレートですので、10ヶ月間生活してきました。
そしてこの警察学校生活で、私は自身がADHDである事を知るきっかけが多発するんです。
寮室点検で毎回引っかかる
警察学校は全寮制で、一人一人に個室が与えられます。
とは言っても、実家の自部屋のように好き勝手出来る訳では無く、
・机は整理整頓されているか
・シーツにシワが寄っていないか
・布団は角を揃えて畳まれているか
・持ち運び禁止物品は無いか
等、かなり厳しく制限がされています。
そしてこれらの項目がきちんと出来ているか抜き打ちで教官による寮室点検が行われるんです。
この点検で私は、
・ドアの鍵が閉め忘れている
・机の引き出しを戻し忘れている
・電気を消し忘れている
といった不注意が原因で起こるミスを頻繁に犯してしまい、毎回この点検で引っかかってしまうのです。
常人には理解できないかもしれないですが、これを私は無意識にやってしまうんです。
授業で必要な教材を寮室に忘れる
警察学校では実務で必要な法律知識を養う為の座学があります。
(刑法・刑事訴訟法・民法等)
当然授業ですので、教材を準備しなければなりません。
ですが私は不注意によって必要な教材を寮室に忘れてしまう事が頻繁にあったんです。
そりゃ人間ですので一回や二回のミスは仕方ないです。
でも一回や二回じゃ済まないほどですので、完全に異常です。
教官にバレずになんとかやり過ごせた事もありましたが、見つかってしまいペナルティーを受ける事も多々ありました。
こういう不適正な行為を重ねる事によって、適正のない人間と判断されてしまうので私は毎日ビクビクしていました。
点検礼式で貸与品を忘れる
点検礼式と言うのは、所属長(警察学校の場合は学校長、署の場合は署長※例外もある)の掛け声によって、
・警察手帳
・警笛
・警棒
・手錠
・拳銃
を取り出して一人一人の装備確認を行うアホみたいな儀式です。
ドラマの教場見た事ある人なら分かると思います。
そして警察学校で行う点検礼式で、私は何らかの貸与品をつけ忘れる事が2、3回ありました。
今でも印象に残っているのは警察手帳を忘れてしまった時の事です。
本来学校長が、
「手帳!!」
と叫ぶと、私たちは胸ポケットにある警察手帳を右手で取り出し、開いた状態で顔写真が前を向くようにして手の平の上に乗っけなければなりません。
しかし私は胸ポケットから手帳を取り出そうとした時、
「ヤバ!ないじゃん!!」
と思い、どうにかこの場を凌ぐ必要がありました。
そこでは、本当は無いのにある体で手帳の動作をあたかも何の問題もないかのように自信満々で行いました。
所属長が順番に手帳を確認していく中、ついに何も乗っていない私の手の平と堂々たる私の表情を見た際、本当は威厳ある姿を見せなければならないのに相当ツボに入ったのか、声を押し殺して涙を流しながら笑っていました。
ADHDによる弊害〜実務編〜

ここまでは、警察学校生活における弊害について紹介しました。
本当にこのような事が気を付けていても頻繁に起こっていたんです。
なので卒業できるかどうかもギリギリのラインでした。
もし勉強の方の成績も下位だったら間違いなく警察学校時点でクビでした。
それでも、
「俺は卒業出来たんだから人より劣っている訳が無い」
と信じて疑っていませんでした。
結果、卒業後の実務においても弊害が多発することになるんです。
メモ版をパトカーの上に置いたまま発進
交番の警察官ってメモ帳とメモ版を常に持ち歩いています。
例えば、
・職質で把握した対象者の人定事項
・現場での聴取事項
・物損・人身事故
等、様々な現場で活用する必要があるからです。
という事は、これらのメモ帳やメモ版には個人情報が沢山書かれている訳です。
万が一にも漏洩するなんて事はあってはなりません。
しかしある時、万が一が起きてしまうことになります。
この日の当直勤務は管内で現場が立て続けに発生し、昼飯を取る時間さえ無い程忙しかったです。
ですので、メモだけ沢山取って書類は全く作成出来ずにいました。
そしてやっと事案対応が終了して交番に戻り、溜まっている書類作成を行おうと思いメモ版を探した結果、
「あれ?ないぞ。」
と、紛失していた事に気付いたんです。
その瞬間私の顔面は真っ青です。
パトカー内、交番内を死に物狂いで探しても一向に見つかりません。
そこで一旦冷静になり記憶を辿ってみると、自分でパトカーの上に置いたまま回収していない事に気付きました。
速攻上司に報告し、めちゃくちゃ叱責されながらもその場所へ再び行ってみると、運良く道端に落ちたままでした。
もしこれが悪人の手に渡って何らかの犯罪に利用されてしまったら間違いなく懲戒処分でした。
取調べのスケジュールを忘れる
当時、私はスーパでの万引き事件の捜査を担当していました。
万引きGメンによって被疑者が確保された事案でしたので、犯行の全貌を目撃しているGメンから取調べをする予定を立てていました。
忙しい中我々に時間を割いてくれる訳ですので、予定時刻に遅刻する事すらあってはなりませんし、今までそんな失態は犯した事ありませんでした。
しかしこの日に限ってめちゃくちゃ忙しく、出勤して早々現場続きでした。
そして現場対応をしている最中、
「約束の時間になりましたが、まだ見えませんか?」
と、Gメンから電話がありました。
この時完全に私の頭から取調べの予定は抜けており、パニックになってしまいました。
現場から当該スーパーまでかなり距離がありますし、すぐに行けない状況でしたので、私は正直に忘れていた事を伝え本気で謝罪しました。
ですがGメンは完全にブチギレて一切取調べに応じてくれなくなりました。
結果、前代未聞のGメンからの調書無しで装置する事になってしまいました。
相談事案で人の家に警棒を置いて忘れる
この日、私は上司と共に、
「近隣住民から嫌がらせに遭っている」
との相談事案を対応していました。
現場は相談者の自宅ですので、私達は屋内で事情聴取をすることになりました。
これ警察あるあるですが、警棒を付けたまま座るとめちゃくちゃ邪魔なんです。
なので本当はダメですが私は自身の警棒を抜き床に置いて話を聞いていました。
この時は、
「聴取が終わったら忘れないようにしよう」
という意識が間違いなくありました。
そして聴取が終わり、私達は現場から離脱しました。
結果、私の腰に警棒が無い事を交番に着いてから気付き、また相談者の家に行って警棒を回収するという意味のわからないクソ時間の無駄な労力を働かなければなりませんでした。
流石にヤバいと思い心療内科に受診
今紹介した事の他にも、注意不足によるミスが連発していました。
でも検挙件数や仕事に対する意欲が評価されて業務成績自体は悪くなかったので、何とかミスの部分は上司以外に知れ渡る事は無かったです。
しかしここまで来ると自分自身に対して疑心暗鬼になっていましたし、今後の警察人生で取り返しのつかないミスをする事は明白でした。
そこで私は勇気を振り絞って心療内科で診断する事にしたのです。
精神病院=精神錯乱者をブチ込む場所という認識

警察官にとって精神病院とは、
「暴れた精神錯乱者をブチ込む場所」
という印象があります。
例えば、
◯統合失調症の息子が暴れて手が付けられない
という通報があったとします。
この事案において最も重要な措置は、
・通報者と暴れている息子を隔離する事。
・息子の病気を治す事
です。
となると必然的に頼る場所は精神病院になるという事です。
だから私にとって精神病院とは潜在的に、
「精神に欠陥がある重症者が入る場所」
という認識があったんです。
なので私は受診する事自体にかなり精神的ダメージを受けていました。
ですがそんな事言っていられません。
今後も警察官を続けたいなら自分の症状を知ってその対策をしなければならないからです。
結果、私は勇気を振り絞って精神病院に行くことになりました。
ADHDと診断
もうある程度予想は付いていましたが、私はADHDの特徴が見られるという結果になりました。
「俺は他の人より根本的に劣っているのか…。」
という落胆に似た感情がある一方、
「だから俺はこんなにもミスが多いんだ。」
「対策する良いきっかけになった。」
とポジティブに捉える自分もいました。
結果から申し上げると、診断した事で私の人生は上向く事になります。
対策を片っ端から行った結果。
自分がADHDだと知れたという事は、どうやって対策すれば症状が出なくなるのか分かるという事です。
だから私は、担当医やネット情報から同じ悩みを持つ人達がどうやって対策をしているのか徹底的に調べ上げ、その全てをやりました。
例えば、
・物を必ず同じ場所に置く
・ポケットに物を入れない
・チェックリストを活用する
・忘れそうな事は必ずメモを取る
等です。
最初は習慣化されていないので辛いと感じる事もありました。
でも習慣って一ヶ月もあれば定着していきますので、それが当たり前になっていきました。
その結果、従来やってしまっていたミスは殆ど無くなり、業務に支障をきたす事は一切なくなりました。
この習慣は警察を辞めた今でも役立っています。
厳しい事を言うが、ADHDは警察に向いていない

私は診断によって自分の症状を自覚し、変なプライドを捨てて対策を講じることが出来ました。
ですが普通の人間なら私が今まで犯してきたミスなんて注意せずともやらない訳です。
しかも警察の仕事って工場勤務みたいに毎日同じ事の繰り返しではありません。
臨機応変に対応することが求められます。
ADHDの特徴として、この柔軟な対応というのがめちゃくちゃ難しいんです。
先ほど紹介した通り、忙しくなればなるほど不注意によるミスが増えます。
尚且つ連日報じられる警察官の不祥事を見れば分かる通り、一人のミスが組織全体のイメージダウンに繋がってしまいます。
結果、ADHDを患っている人は警察官に向かないというのが私の中の結論です。
その代わり熱中する事に対しては人一倍没頭出来る
直接的な原因ではありませんが、少なくとも私が警察を辞めたのもADHDが要因の一部になっていると思います。
だって毎日神経使ってやりたくも無い仕事をしなければいけないのでストレスが溜まりますから。
しかし、そんな私でも輝ける場所はあります。
それは、
◯好きな事を仕事にしている時
です。
これADHDの特徴なんですけど、夢中になれる事に対しては人一倍没頭出来るんです。
例えば、今まさに執筆しているこのnote。
私は警察の仕事自体は好きですし、自分の発信している情報によって誰かの役に立てる事にやりがいを感じています。
加えて文章を書く事も警察官時代から好きでしたし得意でした。
これをやっている時は時間感覚すらも忘れて苦痛を感じる事なく継続することが出来ます。
本業である農業も同じです。
普通、泥臭くて肉体労働農業なんて誰もやりたいとは思いませんよね?
でも私にとっては物凄く楽しいと思えることです。
だから継続することが出来ます。
ADHDという特性によって警察には向いていなかったかも知れないですけど、自分が本当に好きなことを見つけた時は誰よりも輝けるんです。
この記事を読んでいるADHD仲間の皆さんへ
私はこの特性によって人生めちゃくちゃ辛かったです。
ですが、
「自分は社会不適合者だ。」
とか、
「自分なんて誰の役にも立てない雑魚。」
なんて思う必要はありません。
厳しい言い方をしますが、それは症状に対する対策をしていないからです。
私は出来る限りの対策を講じることによって、この特性をポジティブに捉え、むしろ活用出来ています。
一方、ミスが連発する私たちはパワハラに遭う可能性が極めて高いです。
結果、自己肯定感が低くなってしまうのも無理ありません。
でもそんな方々に言いたいのが、
◯自分を必要としていない会社なんかに固執する必要なんて全く無い
という事。
生活がどうとか将来がどうとか一切関係無いです。
自分自身でも一定の努力は必要ですが、それでも人格否定してくる上司や同僚なんかと時間を共にするなんて無駄な寿命を捧げているようなものです。
そんな事している位だったら、本当に自分がやりたい事を見つける事のほうがよっぽど重要事項でやるべき事です。
ADHD仲間の皆さん、世間は厳しいですが、一緒に頑張っていきましょう👍