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農薬は本当に危険なのか(前編)

農薬が危険だという風潮

家の近くにオーガニック食品だけを売るスーパーがある。値段は少し高いようだが、繁盛している様子だ。

昨今、健康意識の高まりを受けて無農薬野菜や有機野菜が人気である。
「農薬はキケン」というイメージは根強いようだ。

実際、過去には農薬によって人々の健康が損なわれる例があった。
例えば、かつて農薬として使用されていたパラコートがそうだ。

パラコートは現在は生産中止、農薬としても使われていない


どうしてパラコートが人体に悪影響だったかというと、その作用のメカニズムに原因があった。

パラコートは雑草の細胞内でNADPHという物質によって還元されパラコートフリーラジカルになる。このラジカルが活性酸素を生じて植物細胞を破壊するので除草効果を示す。
しかし動物細胞にもNADPHは存在する。
したがって、人間の細胞でもこれと同じことが起こるため、人体にも有毒なのだ。

コトバンク「農薬中毒」から

つまり、安全に雑草だけを枯らすためには、動物にはなくて雑草にはあるような特徴をピンポイントで狙い撃つことが必要だ。

このようにある生物に対してのみ毒性を示す性質を選択毒性という。
選択毒性を持った農薬については、次回詳しく書くことにする。

農薬とは

そもそも農薬とは何なのか。
農薬取締法には次のように定義されている。

「農薬」とは、農作物(樹木及び農林産物を含む。以下「農作物等」という。)を害する菌、線虫、だに、昆虫、ねずみ、草その他の動植物又はウイルス(以下「病害虫」と総称する。)の防除に用いられる殺菌剤、殺虫剤、除草剤その他の薬剤(その薬剤を原料又は材料として使用した資材で当該防除に用いられるもののうち政令で定めるものを含む。)及び農作物等の生理機能の増進又は抑制に用いられる成長促進剤、発芽抑制剤その他の薬剤(肥料の品質の確保等に関する法律(昭和二十五年法律第百二十七号)第二条第一項に規定する肥料を除く。)をいう。

農林水産省HPから

また同法に基づき農薬の登録が行われ、登録された農薬だけが使用できることになっている。

つまり、私たちが病気のときに服用する薬と同様、行政によって効力や安全性が担保されてやっと使えるものなのだ。

下の農薬登録までの流れを見ると、薬効、人体への安全性、環境への影響を考慮した仕組みが作られていることがわかるだろう。

農林水産省「農薬が使用できるようになるまで」


農薬がなくても育てられる?

農薬なんて使わなくても育てられるんじゃないか?という意見がある。
昔の人は化学薬品なんか使わずに、糞尿や油粕を肥料として使って工夫しながら農業をしていたと言うじゃないか、と。

本当にそうか。

こんなデータがある。
農薬を使わなかった場合の収穫量の減少率は、イネでは28%、大豆は30%、小麦は36%だった。リンゴに至っては97%だという
(社団法人 日本植物防疫協会「農薬を使用しないで栽培した場合の病害虫等の被害に関する調査報告」平成5年7月)
ほとんどすべての作物で、農薬を使わなかった場合の収穫量は著しく減少する。

収穫量だけではない。
農薬を使用しない場合、病害虫や雑草の影響でその品質は著しく低下することが考えられる。

農地面積の減少、人口増加による需要量増加など、いろいろな要因は考えられるが、過去のように化学肥料や農薬を使わずに農業をやっていては立ち行かなくなってしまうのだ。

まとめ 

・安全性と薬効が認められた農薬だけが農薬登録を受けて使用される
・農薬を使わないと収穫量、品質ともに低下してしまう


次回は、なぜ農薬が虫や雑草には毒性を示してヒトには示さないのか。そのからくりを説明したいと思う。
ぼくが農薬は危険ではないと考える根拠でもあるし、1番伝えたいことでもあるので次回もがんばって書いていきたいと、思いまーす。

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