改定版固体物理学演習 キッテルの理解を深めるために 問1.7 解答
個人的に解説が不親切だと感じたので解答を書いてみた。
※間違っている部分があるかもしれません。
問1.7
基底状態における水素原子の電子濃度は、
$$
n(r)=\frac{1}{\pi a_0^3}\mathrm{exp}\left(-\frac{2r}{a_0}\right)
$$
で与えられる。ここで、$${a_0}$$はボーア半径である。これを用いて、水素原子の原子形状因子を計算せよ。
方針
原子形状因子の式
$$
f_j=\int dV n_j(\bm r) \mathrm{exp}(-i \bm G \cdot \bm r)
$$
に与えられた電子濃度の式を代入して計算する。
積分は3次元極座標で行う。
解答
まず、原子形状因子の式を、与えられた電子濃度の式が代入できる形まで整理する。
逆格子ベクトル$${\bm G}$$の方向をz軸方向とした極座標を考える。
この時、逆格子ベクトル$${\bm G}$$と位置ベクトル$${\bm r}$$がなす角を$${\theta}$$とすると、
$$
f_j=\int_{0}^{\infty} dr \int_{0}^{2 \pi} d \phi \int_{0}^{\pi} d \theta n_j(r) \mathrm{exp}(-iGrcos \theta) r^2 sin\theta
$$
ここで、極座標変換したことにより3次元でのヤコビアンの値$${r^2sin\theta}$$がついていることに注意する。
計算を進める。
$$
f_j=2\pi \int_{0}^{\infty} dr \int_{0}^{\pi} d \theta n_j(r) \mathrm{exp}(-iGrcos \theta) r^2 sin\theta \\
=2 \pi \int_{0}^{\infty} dr n_j(r) r^2 \int_{0}^{\pi} \mathrm{exp}(-iGrcos \theta) sin\theta d \theta
$$
微分接触型であることに注意して、
$$
\int_{0}^{\pi} \mathrm{exp}(-iGrcos \theta) sin\theta d \theta \\
=[-\frac{1}{iGr} \mathrm{exp}(-iGrcos \theta) ]_0^\pi \\
=-\frac{1}{iGr}(e^{-iGr}-e^{iGr}) \\
= \frac{2sinGr}{Gr}
$$
となるので、
$$
f_j=2 \pi \int_{0}^{\infty} dr n_j(r) r^2 \frac{2sinGr}{Gr} \\
=4\pi \int_{0}^{\infty} dr n_j(r) r^2 \frac{sinGr}{Gr}
$$
これで、電子濃度を代入できる形まで整理することができた。
ここから電子濃度を代入して計算を行う。
与えられた電子濃度を代入すると、
$$
f_j=4\pi \int_{0}^{\infty} dr \frac{1}{\pi a_0^3}\mathrm{exp}\left(-\frac{2r}{a_0}\right) r^2 \frac{sinGr}{Gr} \\
=\frac{4}{Ga_0^3} \int_{0}^{\infty}dr rsinGr \mathrm{exp}\left(-\frac{2r}{a_0}\right)
$$
上記の積分を複素数まで拡張して考えると、
$$
\frac{4}{Ga_0^3} \int_{0}^{\infty}dr r\mathrm{exp}(iGr) \mathrm{exp}\left(-\frac{2r}{a_0}\right) \\
=\frac{4}{Ga_0^3} \int_{0}^{\infty}dr r\mathrm{exp}\left\{-\left(\frac{2}{a_0}-iG\right)r\right\}
$$
$${\left(\frac{2}{a_0}-iG\right)r=t}$$と変数変換すると、
$$
\frac{4}{Ga_0^3} \frac{1}{(2/a_0-iG)^2} \int_{0}^{\infty}{te^{-t}}dt \\
=\frac{4}{Ga_0^3} \frac{\Gamma(2)}{(2/a_0-iG)^2} \\
=\frac{4}{Ga_0^3} \frac{1}{(2/a_0-iG)^2}
$$
ここで、$${\Gamma(2)}$$はガンマ関数。
これの虚部が求めたい原子形状因子の値である。
$$
f_j = Im\left( \frac{4}{Ga_0^3}\frac{1}{(2/a_0-iG)^2}\right) \\
=\frac{16}{(4+G^2a_0^2)^2}
$$
(終)