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クジラの時報

この町では毎日正午にクジラの鳴き声がする
ほんのかすかに伝わる程度
風向きによってはかき消えてしまう仄かなものだが
その声をめあてにして
職人らは仕事の手をやすめ
子どもらは家にむかう
野良犬どもでさえめいめい気安い場所に寝転がるのは
その人々のうごきにつられるか
とうのクジラといえば
上空はるか
おおきな体を浮遊させ
気層の変化に感じでもしたか
たまにわずかに口を開いたりする
(地上に鈍色の突風)
あまりに巨きなものだから
ついあいつは間近にいるものだと考えてしまうが
やっぱり幽き声が
その絶対的な遠さを伝えている


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