ころころ
昔々、遠いエルフィン王国の一角に、美しい緑に囲ま れたゴルフ場がありました。広大な芝生ときらめく 池、そして色とりどりの花々が咲き誇るこの場所は、 人々が心を癒すために訪れる特別な場所でした。王国 の住人たちは、ストレスを忘れ、自然の中でリラック スするためにここに集まりました。
ある日、王国で「騒がしいおじさん」として悪名高い トマスがこのゴルフ場に現れました。彼は若いころ、 すばらしいゴルファーとして名を馳せていましたが、 最近は簡単なショットもうまくいかず、すぐにイライ ラしてしまいました。その日も、何度もボールを打ち 損ね、「くそっ!」と叫びながら周りの人々を驚かせ ていました。
その声は、静かなゴルフ場に響き渡り、静かに楽しん でいた動物たちも、トマスの怒声に驚き、森の奥に逃 げていきました。その中、リリィという少女が、心を 落ち着けようと静かにやってきました。リリィは魔法 使いの家系に生まれた、特別な存在でした。
彼女は心の中で、トマスを助けたいと願いました。
「おじさん、どうしてそんなに怒っているの?」 と優 しく声をかけました。トマスは振り向き、リリィの穏 やかな笑顔を見て、一瞬言葉を失いましたが、やがて 「どうせ僕なんてダメなんだ!」と叫びました。
そこに、小さな光の精霊、バルドが現れました。「リ リィ、このおじさんの心の中にある怒りを、優しさで 包んであげましょう」とバルドは言いました。彼女は バルドの言葉に力を得て、トマスにもう一度近づきま した。
「おじさん、心の中の怒りを雲に変えて、打ち飛ばし てみようよ!」 リリィの言葉は、まるで魔法のように トマスの心に響きました。少しだけ戸惑いながらも、 彼はリリィの目を見つめ、心の中で怒りを雲に例えま した。
トマスは、心の中の雲をイメージしながらボールを打 つと、その瞬間、彼の怒りは本当に雲に変わり、空高 く舞い上がっていきました。「やった!これだ!」と 彼は大声で笑い、今まで感じていた重苦しさが軽くな っていくのを感じました。
トマスはもう一度ボールを打ちました。すると、ボー ルは空高く飛び上がり、四方八方に楽しい音を響かせ ました。周りの人々はその様子に笑顔になり、トマス とリリィのもとに集まってきました。森の動物たちも 戻り、みんなで楽しいひと時を過ごしました。
こうして、エルフィン王国は再び笑顔に包まれ、トマ スは勇気を出して自分の怒りを手放し、リリィの優し さに心を開くことができたのです。彼は「優しいおじ さん」として知られるようになりました。
その後、ゴルフ場は「心のゴルフ場」と呼ばれ、訪れ
る人々はそこで心の平和を見つけることができる場所
となりました。